同じようにユーモアあふれる作風とはいえ、昨日の『スナッチ』とは打って変わって「ちょっとヘン」なトボけた作風が魅力のこの作品。ベルゲン急行の運転士さんが主人公なので、旅好きのかたや、電車ファンにもオススメです。
『ホルテンさんのはじめての冒険』です!
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ノルウェー鉄道の運転士をまもなく定年退職する67歳のホルテンさんは、40年間、小さなアパートで規則正しくひとり暮らしの生真面目な人。退職の日を控え、仲間たちが開いてくれた送別会に少し遅れたのがきっかけで、ホルテンさんのきっちりした行動パターンがほんの少しずれてしまい、そのズレが重なって、翌朝人生初の大遅刻! このショックで行動パターンを完全に失ってしまったホルテンさんは…。
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ほんのちょっとしたことで、なんとなく調子が崩れてしまうことって、ありますよね!
ホルテンさんの場合、調子を崩してしまったのは、“なんとなく”どころではないんです。40年間、こつこつと築きあげてきた、と~っても規則正しく美しい、彼なりの生活パターンが、一気に総崩れ!
その瞬間、つまり、生真面目なホルテンさんのなかで「…(プチッ)」と何かの糸が切れる瞬間。それがもう、手に取るようにわかるのが可笑しくて!
主演のボード・オーヴェは、生真面目でクリーンでダンディ、大げさな芝居はしないのですが、なんとな~く、笑いの空気をまとった俳優さん。間(ま)が、笑いを誘うんです。
ホルテンさんが出会う人々、出会う事件のひとつひとつは、ちょっぴりヘンテコなだけでそんなに大きな出来事ではないのに、ホルテンさんの小さなリアクションがなんともユーモラスで、おもわず笑ってしまうのです。
そして、そんな出来事と出会いながら、ホルテンさんが今までの人生を振りかえり、一歩踏み出す姿に、思わず声援を送りたくなるのです。
人は老いてもなお、諦める必要なんてない。最期の瞬間まで、好奇心いっぱいに生きていい。ずっと勇気がなくて出来なかったことに挑戦するのは、何歳からだっていい。
そんな静かなメッセージは、夢と野心がいっぱいの若い人たちにはわかり難いかもしれないけれど、オトナ世代にはじんわりと温かく響くはず。
それから、あたたかみのある北欧インテリアでも知られるノルウェーの映画だけあって、出てくる雑貨やインテリアがとってもオシャレ! このあたりもご注目くださいね。
どうぞお楽しみください!
※PPV
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