とても素敵なお話! 父と息子の絆の再生、普遍的に受け継がれていく物語の感動と、ティム・バートン監督らしいちょっぴりの奇妙さが、絶妙に混ざり合って素晴らしい化学反応を起こしている名作です。ユアン・マクレガー主演、
『ビッグ・フィッシュ』です!
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楽しいホラ話で人々を魅了するのが得意な父親エドワード(アルバート・フィニー)と自分の結婚式で大ケンカして以来、3年も口をきいていないウィル(ビリー・クラダップ)。ある日、母(ジェシカ・ラング)から、父の病状が悪化したとの報せを受けた彼は、妻を伴って久しぶりに故郷に戻る。父は、死を間近にしても、いつもと変わらずウソと真実をない交ぜにしながら自分の人生を面白可笑しく語り続ける。時間が限られるなか、父の人生の真実を知りたいと願うウィルは苛立つのだが…。
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父と息子。陽気な父親と、生真面目な息子。
社交的で話し上手で、楽しいウソが上手な父親を、幼い頃は大好きだった息子。
でも、成長するにつれ、繰り返されるホラ話にウンザリするようになり、その軽妙さが軽薄に思え、掴みどころのなさに苛立つようになってしまうのです。
死を前にしても、その陽気さを失わない父親。本当のことを知りたい、と焦る息子。交わらない親子の思い。
父の死までに、その溝を埋めることはできるのか?
…というのが、メインストーリー。
ですが、出色は、物語の半分以上を占める回想シーン!
若き日の父の冒険、恋、人々との出会いや、おもわぬ人生のいたずら…。それは、ティム・バートンらしい、ちょっぴり奇妙な世界。
魔女や巨人など、不思議な登場人物。奇天烈な展開。時々挟まれる、少しほろ苦いなユーモア。ただ甘く美しいだけではない、不思議でおかしな世界に、観る者の心は魅了されます。
そして、若き日の父エドワードを演じるユアン・マクレガーの、ちょっと古風で、でも好奇心イッパイで真っ直ぐな、若者らしい表情もすごくイイ!
ファンタジックな父の人生のおとぎ話で魅せたあと、物語は現実に戻って、現実の世界でのクライマックスへ。
このクライマックスで父が息子に託したものも、息子が選んだ父とのお別れのしかた…本当に素晴らしいんです! 人の死を扱いながら、こんなに温かく愉快で、希望にあふれた明るいシーンも珍しいと思います。
怖れず、小さな喜びを自分らしく大風呂敷を広げて楽しみ、苦労を面白がり、人を愛し、死が近づけばあとに遺す者にいさぎよくすべてを託し、笑って手を振って、もといたところへ戻っていく…。
同じように生きて死ぬなら、できるなら、こうありたいな。そんな風に素直に思えた、とても素敵な映画でした。
ぜひお楽しみください!
ちなみにタイトルの“ビッグ・フィッシュ”は、比喩でもスラングでもなんでもなくい、文字通り「大きな魚」のこと。なぜ、タイトルに唐突に魚が出てくるのか、ぜひぜひ本編をご覧くださいね。本当に素敵なお話で、個人的には大好きな映画のひとつです!
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