ニューヨークと東京の違い②:日本はムラ(村)社会 | ウォールストリート滞在記

ウォールストリート滞在記

日本人から見たウォールストリート
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仕事の性質上、具体的な仕事内容等についてはあまり書けないのですが、
ニューヨークに滞在して、感じたことなどを書いていこうと思います。
内容はすべて、公になっている情報に基づいた所感です。

前にも書いたように、東京の生活に慣れていると、ニューヨークは不便だなと感じることがよくある。

でも、どうして、世界一便利で住みやすい東京ではなく、ニューヨークが世界一の都市なのかと考える。
馬鹿らしいと思われるかもしれないが、結構本気で思う。

分別とリサイクルがかなり進んで、ゴミは処理されどこでも綺麗な街並み。
家賃も世界の主要都市の中では東京は既に安く(ニューヨークや香港は東京の約1.5倍)、手入れが行き届いているし、何か問題があればすぐに解決してくれるマンション。
どこの店でも、笑顔でサービスしてくれる飲食店。マックの可愛いアルバイトの笑顔が0円なんて、奇跡だ。
いつも時間通りに来て、遅れる時はアナウンスしてくれる地下鉄。
スラリとした綺麗なフライトアテンダントが接客してくれる飛行機。もちろん、遅れた時は丁寧な対応と「申し訳ありません」の言葉。
24時間、常にお酒も弁当も、日用品も、大人の絵本も買い物ができるコンビニエンスストア。

他にもロンドン、シンガポール、香港には行ったことがあるが、どう考えても、東京が一番綺麗で、便利で、生活しやすい。
しかし、東京は残念ながら、1位ではない。
直近の世界の都市指数ランキングだと、
1位:ニューヨーク、2位:ロンドン、3位:パリ、4位:東京、5位:香港となっている。
(A.T.Kearney Global Cities Index, 2012)

日本には地震をはじめとした天災があり、少し敬遠されるのは分かるが、もっと他の理由がある気がする。
この半年間、ニューヨークに住みながらずっと考え続けていた。
そして、最近やっと分かってきた。

一言で言えば、日本は「ムラ(村)社会」なのだ。
日本という国は、日本人にとっては、非常に便利で生活しやすい。
しかし、日本人以外の人にとってはどうだろうか?
おそらく、外国人にとって日本は、興味がありながらもすぐにはなじめない国と文化な気がする。
その背景には、日本語という複雑な言葉、島国という地理、長い間の伝統と戦争が重なった歴史など、多くの理由があると思うが、結果として日本は、小さな組織でも大きな組織でも、「ムラ」という独特な排他的文化を形成している。

小さなムラの例は、企業の中を見ればいくらでも見つかる。
同じ会社の中で外国人と日本人のチームがなかなか相容れないのはひとつの例だと思う。近年、日本企業はグローバル化しようとする中で、海外の企業を買収したり、CEOが外国人に替わったりなど、外国の文化が社内に混ざることが多くなってきた。そうすると、もちろん外国人のチームと日本人のチームが共存することになるが、上手くいかず、対立が生まれることが多い。例えば、日本では、仕事がなくても色々と気を遣って日本人は会社から帰らない。しかし、外人は、定時にすぐに帰る。「定時の5時にあがるなんて、なんて外人達は仕事をしないけしからん奴らなんだ」と考える。ここでお互いにすれ違いが生まれる。
大きな組織のムラの例は、日本の教育システムや政治、選挙等が挙げられる。例えば、実際外国人と話す英語力が一切伸びない日本の英語教育。日本人が英語が弱いことに気づきながらも、未だに大学入試をはじめとして、テストで点数をとって良い大学に行く為だけの教育は、何も変わらない。政治や外交においても、排他的で変わろうとしない「ムラ」感は強い。

それに対して、ニューヨークという都市は、移民が集まって生まれたアメリカの歴史を背景として、多くの文化を受け入れる器がある。
ここに集まってきた人は、アメリカ人だろうが、メキシコ人だろうが、中国人だろうが、日本人だろうが、どこの国の人でもそれぞれの居場所を見つけることができる。
また、この街は、周りの目を気にしなくていい。これも、魅力的な理由だと思う。
破けた服を着ているホームレスも、ブルーカラーと呼ばれる労働者も、ドレスアップをしたマダムも、ウォールストリートのバンカー達も、貧富の差こそあれ、自由に暮らし、同じ空気を吸っている。

ニューヨークに来てみると、日本は窮屈だなと思うことがよくある。
例えば、日本の中になんとなくある、人の目を気にして外に出掛ける時はお洒落をしていきなさい、というのは少し苦手だ。
お洒落をしたい人はしたらいいし、したくなければしなくていい。
別に、自分がそんなことは決めるべきであって、周りの空気でやらされることでもない。
もうひとつ、先輩が後輩に対して威張るのも苦手。
いつだったか、先輩が後輩に飯をおごるのは、いばり賃を払っているのだと聞いたことがある。
なるほどと思って、納得が言った。
なら、いばらなくて、おごる先輩はもっとかっこ良くないか??

日本人にとって究極に便利で過ごしやすい東京に対し、ニューヨークは世界中の人々や文化を受け入れる都市。
僕は日本が好きだし、東京は世界一快適な街だと思うし、ニューヨークは一生を過ごす場所ではないとも感じる。
しかし、ニューヨークの色々な人種・国籍を受け入れる懐の深さと、周りを気にしなくていい自由な空気は、東京にはない。
そして、この懐の深さと自由な空気によって世界中の人々が集まってくることこそが、ニューヨークを世界一の都市にしている理由だと思う。

日本のムラ社会が一方的に悪いとは思わない。
実際に、この団結力で、日本は一時世界のトップまで辿り着いた。
しかし、もう、ムラ社会の結束のみで、日本が世界の上位に立ち続けることは難しくなってきている。
過去の栄光にすがるのではなく、そのことに気づき、認め、多くの事を不合理に抑圧しているムラ社会からは卒業しないと行けない気がする。



今日の言葉
チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ。
(本田宗一郎)