プーチンやロシアの当局者数名がロシア人フーリガンの大暴れの様子を見てマフィアのような発言を連発し、フランスで暴動を起こしているロシア人フーリガンの中には、一部ロシア政府の軍隊・警察などが含まれていることをイギリス政府が確認しているそうです。

 

 

 

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ユーロ2016:ウラジミール・プーチンが暴動で「数千人のイングランドのファンが200人のロシア人に打ち負かされるなんて」と冷笑
Euro 2016: Vladimir Putin mocks 'thousands of England fans beaten up by 200 Russians' in violent clashes

 

6月20日【Independent】http://www.independent.co.uk/news/people/euro-2016-vladimir-putin-russia-violence-england-fan-fights-doubt-a7087971.html より概要を翻訳


11日土曜のマルセイユでの試合で、イギリスとロシアのサッカーファンが暴力的な衝突を見せた。試合前や、試合後にロシアのファンがイングランドのサポーターに突入した際などフランス警察は催涙ガスを使用して対応。

 

フランス警察によれば、「150人の異常に迅速で、異常に暴力的」なロシア側の中核的なグループはマルセイユに暴力行為を目的に乗り込み、最悪の衝突を行ったと非難している。ロシア側のサポーターの数に関しては、報道によっては200人やインディペンデント紙では300人程度と多少異なるようだ。

 

20日 にロシアのサンクト・ペテルブルグの経済フォーラムに出席していたプーチン大統領は初めてこの件に関して公言し、数百人のロシア人「ファン」に責任があるというEU側からの非難を冷笑するような発言をしています。

 

「ロシアとイギリスのファンの間の乱闘は、なんとも不名誉なことです」

 

「いったいどうやったら、200人のロシア人のファンが、数千人のイギリス人ファンを打ち負かすことなどできるのでしょう。私にはまったく理解できないことです」

 

 

 

 

この発言は、一部の観衆からは笑いと賞賛の拍手で迎えられた。


UEFAは、このロシア人「ファン」の行為を受け、再び同様の暴力行為が行われた場合にはロシアチームは決勝戦に参加できなくなるとレッドカード並の宣言を下したばかりであったが、プーチンはロシアチームの追放について、「すべての妨害者は同様に取り扱われるべきだ」と示唆している。

 

 

 

 

 

「ヨーロッパのサッカー決勝戦が現在行われているが、どうも試合よりもファン同士の対決に関心を払っているようです」

 

「ファン同士の対決に関心が集まるのは、残念なことです。このような行為の責任は、可能な限り個人的なものにされるべきです」

 

 

複数のロシア人のファンが逮捕・拘留されているが、イギリス人のファンも同様に投獄され、フランスから強制出国させられるなどしている。また水曜にはリールでイギリス人サポーターが地元のフランス人や警察と衝突し、36人が逮捕されていた。

 

 


(翻訳終了)

 

 

 

 

下手をしたら外交問題に発展しかねない状況の中、「ただの『ファン』がやった個人的な問題」と軽く流し、皮肉まで入れているあたりがまたプーチンらしいところです。

 

 

 

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そしてフランスでのイギリス人「ファン」については、現地の人に人種差別的な言動を見せたり、非道なことをしているという情報が集まっています。

 

 


リールで物乞いをしている子供にコインを投げつけるイギリス人サポーター

 

 

その他英Mirror紙などでは、 イギリス人サポーターがイスラム系住民の多いエリアで、地元のフランス人に対して「ISISちゃん、どこにいるの?バーべニューに豚肉を準備しておいたよ」などと野次を入れたために、地元フランス人との間でプラスチック製椅子投げ競争のような抗争に発展したと伝えています。

 


フーリガンはすなわち暴力行為を好む極右の自称「愛国者」が多いようですが、ロシア側の暴動はそんなイギリスのフーリガンをけん制するようなタイミングでした。しかしイングランドVSロシアの「ファン」対決の際にはロシア側だけが逮捕されたと伝えられています。

 

しかもその暴動の際には、イングランドやロシアだけでなくウェールズやスロバキア人も乱闘に含まれ、混乱していた様子(Mirror紙)。


また問題の乱闘の場には、恐れ知らずのフーリガン集団として有名なロシアン・ウルトラ(Russian ultras)のTシャツを着た「ファン」がいたり、ロシア側がイギリス側に対して手榴弾風の軽度の爆発物を投げつけたという報道もあります(Telegraph紙)。

 


さらにロシア政府の調査担当職員ウラジミール・マーキン氏はツイッター上で逆にフランス警察の警備の甘さを非難するような発言をし、 ロシアのサッカー関連上層職員の一人はロシア人サポーターの行為を支持するような発言をしています(Guardian紙)。

 

ウラジミール・マーキン氏 :「本物の男のあるべき姿を見せた本物の男を見て、フランスの警察は驚いたのでしょう。フランス警察は『ゲイのパレード』でしか『男』を見かけないので」
サッカー関連上層職員の一人 Igor Lebedev 氏のツイッター:「サッカーでファン同士がケンカすることの何が悪いのか、私にはまったく理解できません。むしろその反対に、私はこう言いたいです。お前らよくやった。そのままがんばれよ!と」

 

 

4年前にポーランドのワルシャワで行われたサッカーの試合でも、ロシア人とポーランド人が大激突になっていましたが、それがロシア基準の「本物の男のやること」なんでしょう。

 

 

 

 

そしておそらくロシア側の一般市民(?)によって投稿されたと思われる、ロシア人側の「ファン」の暴動の様子が克明に映し出された動画がこちらです。

 

 


Russian hooligans beat England 2016 HD NEW

 

 

たしかにフランス側の警察も、どう対応してよいのかわからずにただじっと見守っている場面もあります。さらに動画を見ていると相当な数のビールのボトルが武器として使われていることも明らかです。

 

 

 

 

イギリスではサッカーの全試合なのかどうかわかりませんが、少なくとも一部の重要なサッカーの試合ではビールは紙やプラスチックのグラスに入れられており、さらに警備には少なくとも数名の兵士が配置されているそうです(ちなみに缶ビールはその重さのために、武器として投げられた場合に致命的になることが多いそうです。 さらにイギリスの普通のフェスティバル全般でも、入場時にガラス製のボトルがないか荷物をチェックされることが一般的です )。

 

しかし、街の中のアルコール販売店にまではさすがに統制できなかったのでしょうか。後片付けがかなり大変そうなくらい町中にビールのボトルが散乱しています。


この動画を見ていると、どうもこの「異常に迅速で、異常に暴力的な」サッカー「ファン」は、体格も全体的に大柄で締まっており、動きも敏捷で慣れた様子で、やたら統制も取れているようです。そして何よりも恐れ知らずなのがよく見て取れます。ずっと見ているとまるでスペツナズ(ロシア最強の特殊任務部隊)なんじゃないかとさえ・・

 

 


その暴動の後、ロシアのメディアは次のようなニュースを伝えています。


プーチン「ロシア政府には妥協の余地もある」とし、EUとロシアの間の協力関係を復活させることを求める
Putin urges EU to restore cooperation with Russia, says Moscow is ready to meet halfway
6月17日【RT】https://www.rt.com/news/347102-putin-eu-russia-cooperation/

 

タイミング的にまるで「言うことを聞かなければ、うちの意気のいい若い衆をお前の国にも送りつけるぞ」とでも言わんばかりです。ロシアのサポーターにはUEFAから「レッドカード」が出されましたが、ロシアは逆にEUに「ブラックメール(脅迫状)」をつきつけているようです。

 

フランスでロシア最強軍団のスペツナズ風の集団が大暴れした後に、EUに対してロシアとの協調を訴えるなんてやたらタイミングがいいようななんて思っていたら、さらにイギリス政府のこんな発言も。

 


ロシアのフーリガンは、ロシア政府とつながりのあるのではないか・英国政府の懸念
Whitehall fears Russian football hooligans had Kremlin links
6月18日【Guardian】https://www.theguardian.com/football/2016/jun/18/whitehall-suspects-kremlin-links-to-russian-euro-2016-hooligans-vladimir-putin


マルセイユやリールで、イギリス側のサポーターに対して残酷で非常に組織立った攻撃を加えたロシア人の中の相当な数がロシアの「制服業務(警察や軍隊など)」に所属する人物であることが確認されており、プーチンが仕掛けた「ハイブリッド戦争」としての機密作戦に参加しているロシア当局筋なのではないか、とイギリス政府がプーチン政権との関連性を調査しているとのこと。

 

イギリス政府側で、今回のユーロ2016の警備担当をしている人物は、この暴動はここ10年のサッカー関連の暴力行為の中でも最も深刻で、組織立っていると話しています。

 

さらに2010年のサッカーのファンの葬儀の場での写真で、プーチンの横に写っていたAlexander Shpryginというサポーター集団のリーダーは、南フランスからリールへの移動中に身柄を拘束され、フランスから強制出国させられています。

 

 

 

ともあれフーリガン同士の対決自体は好きにやったらいいと思いますが、一般の市民に迷惑をかけるようなことだけは止めて欲しいですね。