バイエルンの3冠ならず ドルトムントがクロップ監督に花道を用意 #バイエルン・ミュンヘン | ヒロ・ゴラッソ

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生放送で観たいと思ったのでスポーツバーで観戦レポート☆

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バイエルンの3冠達成を阻止

 ドルトムントがクロップの"花道"を用意

DFBポカール準決勝

バイエルン1-1ドルトムント

     PK0-2

【得点者】<バイエルン・ミュンヘン>レヴァンドフスキ(30分)

<ドルトムント>オーバメヤン(75分)


ブンデスリーガ3連覇決定のバイエルン

 前半戦最下位から急浮上中のドルトムント

 

 先週、バイエルン・ミュンヘンはCLの準々決勝でポルトガルのFCポルトと対戦。第1レグをアウェイで3-1と敗れて迎えたホームでの第2レグでも、アリエン・ロッベンとフランク・リべリの2人のクラックが負傷欠場という厳しい状況で迎えていました。しかし、"ロベリー"(ロッベン&リベリーの略)の欠場により、本来はインサイドMFやボランチ、右サイドバックを担当するブラジルW杯時のドイツ代表主将DFフィリップ・ラームを右ウイングという高い位置に置いたり、低い位置からのビルドアップも1つラインを飛ばすミドルパスや、右ウイングのラームに収めるロングボールも織り交ぜるなどして巧みに主導権を握り、6-1と大勝。結局2試合合計7-4の大差がつく結果となり、ここ6年間で5度目のベスト4進出を決めました。


 さらにヘルタ・ベルリンをホームに迎えたブンデスリーガでは辛くも1-0で勝利し、翌日に2位のヴォルフスヴルクが敗れたため、ブンデスリーガ3連覇が決定。2年ぶりとなるブンデスリーガ・DFBポカール(ドイツカップ)、欧州チャンピオンズリーグの3冠へ向かって順調なステップを踏みました。


 対するドルトムントはCLで決勝トーナメント進出を決めるも、べスト16で敗退。さらにブンデスリーガでは昨季の得点王を獲得しながらバイエルンへ移籍したポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキの穴が一向に埋まらず。ドイツ代表のブラジルW杯優勝の後遺症として主力選手のチーム合流が遅れたため、常にコンディション不良と負傷者続出に見舞われた前半戦は・・・なんと・・・リーグ戦最下位で折り返し。後半戦に入ってアジアカップから帰還したMF香川真司もハビエル・アギーレ前日本代表監督から好影響を受けて復調し、チームも後半戦に入ってからは復調。リーグ戦ここ11戦で7勝2分2敗と好成績を残し、現在は8位まで急浮上。来季のCL出場権獲得となる4位は狙えないものの、ヨーロッパリーグ圏内となる5位のシャルケ04と6位のアウフスブルクまでは勝点で3ポイント差までつけています。


 香川も現在リーグ戦2戦連続得点中ですが、ここへ来て7シーズンに渡って指揮を執ってきたユルゲン・クロップ監督が今季限りでの退任を発表。来季からは前マインツ05のトーマス・トゥヘルが新監督に就任する事まで発表されています。クロップがマインツの監督時代にマインツのユースを率いていたトゥヘルがドルトムントでも指揮を執るのは喜ばしい事だと思います。


 ドルトムントは前述のように、すでにCL敗退、ブンデスリーガでも4位以上の可能性も消滅しており、リーグ連覇や2011年の2冠(リーグとポカール)を達成したクロップ監督に唯一タイトルの可能性が残るこの1戦に恩師への花道(決勝の舞台)を作るために挑みました。



完全に"ペップ・バイエルン"のゲームで先制

 ペップの下で最も伸びたボアテンクを起点に攻略




 抽選の結果、ホームのアリアンツ・アレーナで対戦できるバイエルンは先週にCLがあった影響や、負傷者続出が永遠と続いている現状もあり、先発メンバーを大幅に変更。負傷上がりのDFメディ・べナティアが先発復帰し、ロッベンもベンチ入りしました。対するアウェイとなるドルトムントは先週末のリーグ戦を欠場させた司令塔のMFイルカイ・ギュンドアンを先発起用。おそらく、この一戦へ温存していたものと思われ、ドルトムントの覚悟の程が窺い知れました。香川も2列目で先発しています。


 試合の方はキックオフから両チーム共に慎重な立ち上がり。確かにバイエルンはボールを支配するものの、ポルト相手の3-1の負けからの反省点を意識し、自陣でのビルドアップからロングボールも活用。ドルトムントはそのバイエルンの圧倒的なポゼッションに対してしっかりとマンツーマンで対応し、連動したプレッシングと球際の強さを持って対抗する構図。オープニングシュートが14分までなかった事が集中力と緊張感のある試合を象徴していたと言えます。それもCKからのバイエルンのトーマス・ミュラーのシュートでした。


 ただし、ドルトムントのプレスを交わすのにも慣れて来たバイエルンは、おそらくジョゼップ・グアルディオラ監督の就任後の2シーズンで最も伸びたと言える選手であるDFイェロメ・ボアテンクが最終ラインからワンタッチでサイドチェンジやロングフィードを通す事でドルトムントのプレス網を攻略。ペップ監督の恩師であるヨハン・クライフの口癖である、「ワンタッチでプレーできる選手は優秀、ツータッチはまあまあ、スリータッチは下手な選手」を体現するボアテンクは、ペップ監督就任時は"スリータッチの選手"だったと思います。それがこんなに強いだけでなく、上手い選手にもなったとは・・・さすが"ペップ・バイエルン"と感心するビルドアップの数々でした。ボアテンクを起点にゲームを攻略し始めたバイエルンは右サイドから侵入したラームがGKを襲うシュートを放つなど好機も演出。


 そして30分でした。ドルトムントのカウンターで香川が中盤をドリブルで持ち上がって数的優位を作ってのフィニッシュの局面。しかし、ここで香川のパスをシャビ・アロンソがインターセプトすると、攻撃参加していたドルトムントの右SBドゥルムの裏をシンプルに使われ、FWレヴァンドフスキーが流れてフリーでエリア内まで持ち込みシュート。1度はポストに阻まれるも、自ら拾ったレヴァンドフスキが角度のない位置からDFの股を抜く巧みなシュートを決めて1-0とバイエルンが先制。


 その後も好機を演出していたバイエルンが1-0とリードして前半を折り返しました。

バランスが狂った選手交代

 「壊す」のがドルトムントの真骨頂


 両チーム共に選手交代なしで入った後半も試合の主導権を握るのはバイエルンのまま。55分には左サイドからファン・ベルナトのパスでエリア内に抜け出したレヴァンドフスキが右足を振り抜くが、クロスバーに阻まれる場面も。ここまでは完全に"ペップ・バイエルン"の理想的なポゼッション・ゲームでした。


 しかし、正確な技術でゲームをコントロールしていたバイエルンMFチアゴ・アルカンタラが68分に負傷。チアゴに替わって投入されたのはロッベンでした。それまで<3-5-2>のインサイドMFに入っていたチアゴに替わって、本来ウインガ―のロッベンが入った事で、システムは<3-4-1-2>にマイナーチェンジされ、ロッベンはトップ下に入りました。逆にドルトムントがボールに全く絡めないで、失点の起点にもなってしまった香川をベンチに下げ、ヘンリク・ムヒタリアンを投入したのが70分。この両チームの選手交代が大きく試合を変えました。


 攻撃を前線の3人に任せながらカウンター気味に追加点を狙いに行ったバイエルンでしたが、それまでMF3人で圧力を加えていたバイエルンの中盤での支配力が消え、ドルトムントの激しいプレッシングが圧倒する展開となりました。技術の高いチームを相手に、ある種「壊す」事でカオスの状態にして同じ土俵に上がる事で互角に渡り合うのはドルトムントの真骨頂。


 そして75分、ドルトムントの分厚い攻撃。エリア外からの"クバ"ブワチュコブスキが浮き球のパスでエリア内左のムヒタリアンに。コレをダイレクトのグランダーで折り返すと、中央のマルコ・ロイスには合わなかったものの、ファーサイドに流れたボールをピエール・エメリク・オーバメヤンがスライディングで右足を合わせたシュートがゴール枠内へ。バイエルンのGKマヌエル・ノイアーが懸命に掻きだした場所は明らかに枠内と判定され、ドルトムントが1-1の同点に。


 さらに悪循環が続き、バイエルンはロッベンが途中出場から15分ほどで負傷交代となり、元ドルトムントのマリオ・ゲッツェが投入されたものの、レヴァンドフスキと共に「裏切り者」がピッチに立った事で、ドルトムントの闘争本能がさらに燃え上ってしまいました。


 ただし、スコアはこのまま動かずに延長戦に突入。バイエルンはシステムを<3-5-2>から<4-3-3>に替えてバランスを取り戻し、ドルトムントのプレッシングにもさすがに限りが見え始めました。そして、バイエルンにセットプレーから途中出場のバスティアン・シュヴァインシュタイガーが頭で合わせる惜しい場面も。延長後半早々にはドルトムントの途中出場のMFケヴィン・カンプルが2枚目の警告を受けて退場。バイエルンが数的有利となり攻勢となりましたが、115分の左クロスから、中央フリーで飛び込んだシュヴァインシュタイガーのヘッドもGKミチェル・ランゲラクの左足でセーブされ、延長でもスコアは動かずPK戦に。



PK4人全員失敗のバイエルン

 主将・副主将が軸足を滑らせる



 PK戦は衝撃の事態に。ホームスタジアムで開催されており、PK戦もバイエルンのサポ―ター側のゴールで行われながら、写真のようにバイエルンの
1人目ラームと、2人目のシャビ・アロンソが軸足を滑らして転倒しながらのキックとなり大きく枠を外して失敗。3人目のゲッツェもGKランゲラクにセーブされ、4人目のキッカーは「流れを変えるために」おそらく自ら申し出てGKノイアーが務めながらクロスバーに当てて失敗。チームの主将と副主将が連続で外し、W杯決勝でドイツを優勝に導くゴールを決めたラッキーボーイも、世界王者の守護神も失敗してはメンタルで負けてしまって当然です。


 ドルトムントのキックを世界王者の守護神ノイアーは維持で1本止めましたが、2本を成功させたドルトムントが勝利。ベルリンでの決勝進出を決め、退任が決まっているクロップ監督の花道を用意しました。

 決勝の相手は現在ブンデスリーガで2位のヴォルフスブルクで、5月30日にベルリンのオリンピア・シュタディオンで開催されます。


"激情家"が仙人のような落ち着き

「悟りを開いた」クロップが決勝へ導く



 この試合で意外だったのは、普段はテクニカルエリアの最前線ぎりぎりで喜怒哀楽を全身で大きく表現するドルトムントのクロップ監督が試合を通してベンチで静観し続けていた事です。明らかに"激情家"として有名なクロップが今季限りで退任する事で、2010年辺りから主力を担い続けている選手が多いドルトムントの選手達は、「監督に花道を」とモチベーションを最大限にまで上げたのでしょうが、クロップ監督がいつもように熱くなるのではなく、逆に冷静に振る舞った事で、選手たちは戦いに集中できたのかもしれません。


 逆にバイエルンのグアルディオラ監督の方は延長戦開始前にレヴァンドフスキに頭をつけて感情を乱しながら指示を出すなど、キャラクターが逆になってしまったかもしれません。


3冠ならずも、いよいよ古巣・バルサと対決

 スタイルの所有権はクラブか?監督か?の解答



 バイエルンではチアゴとロッベンの負傷交代というアクシデントに続き、延長戦ではレヴァンドフスキが空中戦でGKの危険な飛び出しで接触して脳震盪で動けなくなってしまい、そのプレーもPKが妥当だったとは思うのですが、精神的に落ち着きを欠いたペップ監督に批判が集中すると思われます。それこそ、CL準決勝で古巣・バルセロナに敗れたら解任騒動にも発生しそうです。


 それでもこの試合はバイエルンにとってのアクシデントが多かったのが事実。リーガ・エスパニョーラで首位、コパ・デル・レイで決勝進出、CLで準決勝進出と、ペップ監督が2009年に果たして以来の3冠達成に向けて進む現在のバルセロナですが、その試合内容は南米強豪国のエース3人が揃う前線の個人技に頼り過ぎてる事で、「3冠でも監督解任が妥当」だと叫ばれています。


 遂にポゼッションサッカーの本家でもある古巣・バルセロナ相手に、"ペップ・バイエルン"の対戦が迫っています。バイエルンは"ロッベリー"がいなくても個人技に頼らず、本家を超えるバルセロナっぽいポゼッションサッカーでバルセロナに勝てるか?それは「スタイルとは誰のモノか?」「スタイルとは監督によって移植可能か?」という問いの解答にもなるため、サッカー界全体に与える影響は図りしれません。


 この日のDFBポカール準決勝敗退により今季も3冠達成はなりませんでしたが、来週から行われるCL準決勝に向けてのペップ・バイエルンの動向には注視していきたいと思います。



恥ずかしくイライラする実況・解説


 最後に1つだけ。この試合を放送した日テレですが、バイエルンのシステムはどう見ても<3-5-2>でしたし、"ロッべリー"が欠場する際はよく使う布陣なのですが、ずっと「4バックの~」と言い続けていました。ちょっと調べれば分かる事ですし、試合を観れる能力があるんならシステムぐらいは見分けられると思うのですが、どちらも持ち合わせていないという事でしょうか?恥ずかしいし、イライラしてくるので、自宅でこの試合を観ていたら確実に音声を切るか、スタジアム音のみで観ていたでしょうね。


バイエルン・ミュンヘン
(DFBポカール準決勝・VSドルトムント)
レヴァンドフスキ ミュラー
チアゴ ラーム
ベルナト ヴァイザー
シャビ・アロンソ
ラフィーニャ べナティア
ボアテンク
ノイアー

 上記のような布陣でしたが、ラフィーニャが本来は右SBの選手だという固定概念から誤った認識をしたのでしょうね。2011年のクラブW杯でもペップ監督が率いるバルセロナの試合で、完全に本来は右SBのダニエウ・アウべスが右ウイングで固定されていても、「右SBの選手がこれだけ攻撃参加するんですから」言うくらいですから。


 ペップが率いるチームの試合を観る時は、こうした固定概念を取っ払って見るのが僕の楽しみでもあります。それはピッチに立っている選手が、相手のシステムや特徴を掴むのと似たような感覚で観戦できるからだと思っているのですが、日テレはいつまで経っても固定概念で放送を続けているようですね。


 海外の試合を現地観戦した経験がある人には理解できると思いますが、海外では先発メンバーの発表ではわざわざポジションまで紹介するようなアナウンスはあまり成されません。誰がどこのポジションでプレーするか、なんて実際に試合が始まらないと分からないですから。そういう分かりにくい事を解くため、実況や解説がいるはずなのですが、日本ではずっと違うようですね。



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新アンケート実施

「オランダリーグとJリーグはどちらが上なのか?

 と言う事で、このたび新しいアンケートを作成しました。日本人が外国籍選手にはならない事が判明したオランダリーグ。欧州トップリーグへのステップアップを狙うためのリーグという位置付けですが、最近の日本人選手はあまりオランダリーグには在籍しています。


 欧州の舞台で低迷するオランダリーグよりは、Jリーグでプレーする方が良いのか?攻撃サッカーを標榜するオランダリーグの価値、またはJリーグの価値を考えてみたいと思い、集計に入りたいと思います。


 選択肢のない場合は【その他】を選んでいただき、【コメント欄】に記入をお願い致します。興味深い集計になると思いますのでご参加お願い致します。


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