きけ、わだつみの声(1950年版) | キネマの天地 ~映画雑食主義~

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(ほぼ)一日一本のペースで映画の感想を書いてます。

日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声 [DVD]
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内容:東大出身の戦没学生の手紙や手記を集めて出版された「きけわだつみの声 日本戦歿学生の手記」を元に、関川秀雄監督が反戦の想いを描いた戦争ドラマ。戦争に巻き込まれて散っていった若者たちの反戦に対する真摯な訴えが痛烈に映し出される。(Amazonより)


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はい、昨日は8月15日、終戦記念日という事で鑑賞いたしました「きけ、わだつみの声」

ございます。

ちなみに「わだつみ」とは「海神」、海の神様の事ですね。

日本の伝承譚「海彦・山彦」や「イザナギノミコト」の話に出てきた綿津見神の

事だと思われます。まぁなんでここで海神が出てくるのかはわからないけど、海神は軍神と

されることが多いからじゃないかな?・・・たぶん。(^_^;)

ギリシャ神話のポセイドンもそうですしね。





ぬかるみのビルマ戦線。若き出陣学徒たちは、飢えと疲労に苛まれ、敗走に敗走を重ねて倒れていく。戦争に巻き込まれ、『仇も恨みもない人間を殺さねばならない。自分は侵略戦争を憎み呪う』と呻吟しながら散っていった学徒兵たち。何のための戦争か、誰のための戦争か。泥濘のビルマ戦線は、若者たちの血潮に染まっていく…。
(NTT-X Storeより)




本作は戦没学生の遺稿集「きけ わだつみのこえ」を基に、戦後間もない1950年に

製作された映画です。有名な作品ですし1995年には織田裕二主演で再映画化も

されてますので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。


きけ、わだつみの声
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↑こちら95年版。同じタイトルなれど本作とは全く別物です。





さて、感想。

この作品は「戦後反戦映画の第一号」とされる作品なのですが、反戦映画もこれまで

数多く作られてきましたよね、内外を問わず。

ですのでそれらをひととおり観てきた方にとっては、非常にスタンダードな反戦映画である

本作から受ける感銘は、正直言ってあまり大きくないと思います。

戦争の悲惨さなど他の第二次大戦やベトナム戦争を描いた作品でいやというほど観てきているし、

「戦没者が語る悲惨な体験」も、後の「ゆきゆきて、神軍」 などによって本作に描かれている

以上に悲惨だったことが明らかになっていますからね。

ですのでその点においては本作には取り立ててお薦めするポイントは御座いません。



本作の価値はやはり戦後反戦映画の第一号である」という事であり

「戦争の爪痕が未だ色濃く残る1950年に製作された」ということでしょう。

グァムやフィリピンなどにはいまだ数多くの元日本兵が取り残されており、

シベリアには沢山の日本人捕虜が抑留されていた。

つまりこの当時戦争はまだ過去ではなく、現在進行形の問題だったんですよね。

そんな時代に作られた本作を、帰還兵や戦没者遺族あるいは生存を信じて待つ

行方不明者家族の方々はどのような思いで観られたのだろうか、そんな事を

考えさせられる作品でした。



内容については・・・世間の風潮がそうだったのでしょうね、本作では一般から召集された

兵卒はひたすら可哀そうな存在として、部隊の指導者である軍人たちはひたすら

利己的で非道な存在として描かれています。

まぁわからないでは無いけれどこれはこれでかなり一方的な描き方ですよね、

ですので本作はあくまで“学徒兵からみた戦争の一面”であって戦争の全体を表した

ものでは無いという事を考慮の上で観た方が宜しいかと思いますね。



ただ映画として観るとなかなか見応えがありますよ、いささか感傷的ではあるけれど

リアリティは十分にあったし、ラストシーンの多重撮影による“死者の行進”

CGなど存在しない時代の映像表現の手法として勉強にもなりますしね。





総評。

内容からして当然のことではありますが、やはり楽しい作品ではありません。

「なぜ戦争はいけないのか」といった本質的な疑問に答えをくれる作品ではありませんが、

「理屈なんかど~でもいい、とにかく戦争はイヤだ!ヽ(`Д´)ノ」と思わせるだけの力は

十分にある作品です。

まぁ年に一度の終戦記念日ですからね、この日ぐらいはこういう作品を観てみるのも

いいのでは無いでしょうか。

というわけで気が向いた方は来年の今頃にドゾ!