予測と精神とその構造(その10) | クラスタ民主主義システム研究室

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☆学習とディベート☆ ☆ネットワークデモクラシーを夢みて☆ 
☆教育ディベートを推進しよう☆ ☆「complex system」で思考してみよう☆「ネットワークデモクラシー(Demoex)研究室」からタイトル改題しました。 

もうだいぶ長くなってきたので早目に結論へと向かうことにします。


その3 で書いた交互に作動する揚水ポンプのようにシステムは常に二系統を用意して補完したり拮抗したりするシステムを構築することが大切です。これは原発の電源にバックアップを必ずつくるべきだという常識とも共通しているわけです。


これは自民党(A)と野党(B)や衆議院(A)と参議院(B)が拮抗したり補完したりする必要性とも共通していて、システムを設計したり運用したりする上で全ての参加者が共同認識(共同幻想)していないと、このツインシステムは機能しません。


今の日本では、どうしても「A」と「B」とが協調せず潰し合ってしまい互いを修正し合う機能が失われていることが今の日本の迷走と閉塞を招いていると言えるでしょう。


しかし、人間というものは「A」と「B」の二グループに分かれると、常にお互いに対立し潰し合う行動を執る習性があります。これは私たち人間の本能でもあるのでしょう。これは協調(A)競争(B)のツインシステムが機能しているからです。


この協調と競争のツインシステムを活用するためには集団の参加者が協調と競争の目的を共同認識していないと機能しません。協調と競争が同じ目標に向かうためのシステムだということを現代社会では教育しませんから、機能せず世界が混沌としてしまうのは仕方ないのですが…


人間は、現状を改善する方法を理解できていないと、「A」と「B」とのツインシステムが互いに対立し攻撃し合うのですが、同じ目標を共有させて共同作業を行うような【場】を設計できれば、「A」と「B」は違ったブラウン運動を始めます。


兎に角、この教育ですし、日本の学校ではこの目標共有と共同作業の【場】が殆どないため、教育の段階から排他と競争が子供たちに植え付けられていきます。ちょうど鬼畜米英で外敵を想定し集団の求心力を高めている北朝鮮のような精神構造の方を高めてしまうため、世界が亀裂と分断で引き裂かれていく…。この現状を改善するための方策を誰かが構築しないと、今の世界も今の日本も再び敵対勢力の殲滅へとひた走ることになると思います。


私たちは何らかの情報を受けることにより性別や人種や肌の色などといった基準で二分されてしまうと、いずれかへの所属意識を植え込まれます。この所属意識はとても厄介な存在で、生命は所属集団の拡大と優位性を必然的に目指します。


所属集団への忠誠の証しとして互いの優劣を判定しますし、自集団への自尊と他集団への偏見を確認し合うために差別するようになります。選別したり分別したりするのは脳の本能ですから、この差別は私たち生命の宿命なのでしょう。


こうした人間の行動様式を助長する国家や宗教への所属意識は極めて危険で扱いにくいものです。特に自称イスラム国やタリバンでわかるように国家と宗教とが直結すると、その集団は暴走していく危険性が高まります。この精神構造はキリスト教の十字軍でも証明されていると言えるでしょう。


では、私たち人間はどうやったらこの永遠に続いてきた繰り返しから離脱することができるのでしょう?…。そのために私たち人類は仏教のような宗教を生み出したのだと思うのですが、そういった宗教が所属意識を生じるので、これまた厄介です…。


集団間に生じた敵意や対立を解消するためには、人的交流や精神修養はあまり役立ちません。効果的なのは、同じ目標に向かって行動する【場】を確保することだけでしょう。ポンプ「A」とポンプ「B」とが揚水するという【状況と目標】を持たない限り、軋轢なき切磋琢磨、不満なき適材適所、失敗に学ぶ改善は始まりません。


誰かが「高台に揚水する」といった現状に必要な解決策を明示して、「A」と「B」との敵対や対立の先には明るい未来は無いことを、人々に教育しなければならないのでしょう。そういった賢明さが出て来ないと、私たち人間は「偏見、排他、差別、敵対、壊滅」の悪循環から抜け出すことができません。


では、具体的には、どうしたら良いのでしょう?


そのためには記憶と感情と動機と所属との相互作用を理解し、競争⇒敵対⇒憎悪といった連鎖を違った方向へと向けていくことが大切だと思うのです。先の大戦でも「勝てないから降伏しよう」とか「戦果が上がらないから特攻は見直そう」といった「A」とは違った「B」という要素を人々の精神の中に拮抗させることができていたら、おそらく違って展開が開けていたと思います。


そのために、リアルな「A」は各自の主観「A’」とは違うこと、主観「A’」には別の主観「A”」があり、「A”≒B」だという拮抗する別の対を想念する訓練が必要でしょうし、その逆廻りで「A≒B」の部分を見い出して同仁へと混ぜ合わせていく訓練も必要でしょう。



内外転


その過程として、先ずは「A」をA'、A”、A’”…と分割していく内転(involution)と、A'、A”、A’”…を「A]へと同調させていく外転(evolution)とを理解しておく必要があると思っています。(グルジエフの理論)


簡単に言うと、協調と競争とはフィールドを調律すると理解するのが外転(evolution)で、調律は協調と競争の拮抗であると理解するのが内転(involution)ということ。。。


「一」から細分化するのが内転、多数から原点回帰が外転。そして、そのフラクタル。どこに境界を認識しているか…、この境界認識が世界観を左右していると思っています。


ウサギ