これで「自衛隊に公娼制度を」「慰安婦制度は必要だった」といった論理への反証を終りにします。
誰にでも理解してもらえるように世界の状況と日本の状況をまとめておきました。
日本人に代表される東アジア人の特異性について考えてもらえたら幸いです。
売春には、単純売春(個人売春)と管理売春があります。この区別を理解していないと売春問題を理解することはできません。
世界的に売春行為が合法化されつつありますが、多くは単純売春の合法化であり、管理売春が合法化されている国々は極少数です。また、こうした売春の合法化は、男性に対して性的はけ口を用意するためではなく、女性が売春を強要されて人権侵害を受けたり、性病や薬物に侵されることを防ぐために解禁されてきています。
つまり、組織的に管理する管理売春では、性行為の強要(強姦類似行為)が多発することが問題視されているのです。
強姦を無くすために国家が管理売春を推奨しても強姦類似行為の多発をうむだけであり、現時点で管理売春を合法化している国々は、オランダ、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、タイに限られています。
したがって、国連拷問禁止委員会は、従軍慰安婦問題における管理売春から逸脱した強姦類似行為の発生を問題にしているのであり、「軍が慰安婦制度を持てば強姦発生を防げる」といっても論理的に通じない。国連拷問禁止委員会の論理は下記を参照ください。
国連拷問禁止委員会で証明されてしまった日本の人権後進国ぶり
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-1415.html
5月22日、上田人権人道大使の「シャラップ」発言で嘲笑を受けています。
しかも、ドイツでは管理売春の合法化が失敗に終わりつつあります。下記の報告を参照ください。
合法化されて生活がより厳しくなったドイツの売春婦
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37973
売春は無くそうとしても社会が歪みますし、売春を管理しようとしても社会が歪みます。人間の営みをコントロールすることは非常に難しい…。売春を合法化して管理すれば良いという簡単なロジックではダメであり、行政や政治そして学校医に携わるものの常識です。
というわけで、日本の性の現状と、諸外国の取り組みについてまとめておきます。
図説「主要国の性行動比較」
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2263.html
過去一年間に売買春を経験した男性の割合
日本男性 13.6%
米国男性 0.3%
英国男性 0.6% など
これだけ売買春を男性が利用しているということは、同じ割合で応対する女性が多いということ。
日本人の売買春の頻度は、アメリカ人の45倍、イギリス人の22倍。
日本人は、この結果を自慢できるのだろうか。
成人男性の買春行動及び買春許容意識の規定因の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/79/3/79_3_215/_pdf
この検討でも1割程度となっており、過去一年間に売買春を経験した割合は、20歳代で22%、30歳代で23%となっている。また、過去4-5年間に買春経験がある男性は14.6%となっている。
この研究では次の2点を明らかにしている。
1)性的欲求が高い者や配偶者や恋人がいない者ほど買春を許容したり,買春を行ったりすることが明らかとなった。
2)家族との情緒的絆の弱さやぬくもり希求の高さが,成人男性の買春行動や買春許容意識と直接関連していた。
この検討結果は、他の研究における「”売る”女性に対する研究では,親との良好な関係が築けていないことが,女子中学生,高校生の非行や性への規範意識を弱めると指摘されていた。また,女子中学生,高校生の不安感や空虚感が,自分自身を直接的に受け止めてくれる他者のぬくもりを求める気持ちを高めると指摘されていた。」という結果と同様だった。つまり、単純に”性的欲求”という問題だけではなく”心のぬくもり不足”も問題であることを指摘している。
日本人は、日本社会における「ぬくもり希求」を自慢できるのだろうか。日本で売買春が多いのは、ぬくもりが無い家族が多いからかもしれない。こんな日本社会はキリスト教の欧米社会を批判できるのだろうか…
女子中高生 「合意」の論理で援助交際
http://www.t-shinpo.com/745/kokoro.html
以下、転載
-----
昨年(おそらく97年)10月、(財)日本PTA全国協議会が、全国の中学3年生(1778人)を対象に「子どもの社会環境についてのアンケート」を行った結果、「テレホンクラブ」「ツーショットダイヤル」に「かけたことがある」中3は、男子は6.4%だが、女子は20.7%もあった。
高校生の場合、テレクラに1回でも電話したことがある比率は、男子10.2%、女子はなんと34.6%であった(ベネッセ教育研究所「モノグラフ・高校生vol.52援助交際」98年1月)。 つまり、女子中学生の5人に1人、女子高校生の3人に1人が「テレクラ利用経験あり」なのである。
-----
90年代後半、性産業で働くことに抵抗を感じない女子中高生が、これ程までに増えていた。
こうした現状にもかかわらず、日本人は売買春を合法化すべきだろうか…
いま、神道を重んじる安倍政権や日本維新は道徳教育を政策に掲げている。そんな安倍政権は「自衛隊に公娼制度を」などとは決して主張しない。
日本人ならば、何も考えないまま安易に迎合せず、管理売春合法化にしっかりと異を唱えるべき。
だが、次のように日本でも売春を合法化すべきという意見もある。
日本の売買春――現状と対策(売春合法化の効果とは)
http://www.econ.hokudai.ac.jp/~hasimoto/Seminar%20Essay%20Group%20Project%20200507-3.htm
ここで強調しておきたいことは、世界の趨勢は、男性の性的欲求を満たすために合法化するのではなく、売春婦として働かねばならない女性を守るために合法化するということです。
売春に追い込まれる女性たちをどのように守るか、社会におけるモラルがどれほど大切なことか…
なぜ彼女たちは出会い系に引き寄せられるのか
「彼女たちの売春(ワリキリ)」著者、荻上チキ氏インタビュー
なぜ、女の子は飛田新地で働くのか?
http://diamond.jp/articles/-/36091
飛田新地も無視できない規制強化と価格競争
http://diamond.jp/articles/-/36447
飛田新地や西成を“きれい”にして残るものとは?
http://diamond.jp/articles/-/36733
飛田新地で働く人たちが街を去る理由とは?
http://diamond.jp/articles/-/37023
売買春は社会から無くなりません。
同様に強姦も社会から無くなりません。
なぜなら、人間が社会を営んでいるからです。
駐留するアメリカ軍から強姦する兵士を無くすには、日本からアメリカ軍を無くすしかありません。
オスプレイを残し、アメリカ軍を残しつつ、アメリカ兵の強姦を無くすことはできない。
スウェーデンでは、売春を合法化し、買春を違法として成功しました。
それでも、売春も、強姦も、無くなりません。
軍に公娼制度を設けても、表の職業として就職する人は殆ど現れないでしょう。
闇社会での管理売春では、必ず騙されたり薬漬けにされて売春を強要される女性が出てきます。
答えは簡単ではありません。
ただ単に軍に公娼制度を合法化しても、強姦も、強姦類似行為も、無くす事はできない。
どうすれば、女性を守ることができるか、確証と反証を繰り返し、答えを導き出すしかない…
性行為強要という強姦類似行為を誘発する管理売春は、近代から現代において必要だとか正しいとは断言できないという事です。
女性を守るという視点がなく、女性を性的欲求処理の手段としか考えていない論理では、国際社会を納得させることはできないでしょう。