ドラマ「関ヶ原」~秀吉、倒れる!~ | ♪ DEAR MY LIFE ♪

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テレビドラマ「関ヶ原」は、司馬遼太郎の小説「関ヶ原」が原作。
東京放送創立30周年記念番組として、
TBS系にて1981年1月2日~1月4日まで3夜連続で放映された作品。

当時、リアルタイムで鑑賞する事は出来ませんでしたが、
その後、90年代の再放送で観た記憶があります。
しかしその記憶も曖昧なものでしかなく、シッカリ観たのは大学時代。
歴史学科のゼミの教授のお宅に遊びに行った際、
教授のコレクションしていたVTRで、この作品に触れることが出来ました。
(以下、作品に関するうんちくは、その教授によるものが大半です。w)

この大学時代に観た「関ヶ原」は、自分にとってかなり衝撃的な作品でしたが、
とかく人間の記憶というものは美化されやすいもの。
近年のDVD化にあたって、早速、購入して確認してみると・・・、

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確かに、今から三十年以上前のドラマなので画面は粗いですし、
原作を再現するセットにも限界があったのか、
役者をほぼ正面からとらえたり、アップを多用したりと、
カット割りや演出に関しても稚拙な部分が数多く見受けられますが、

とにかく、昭和を代表する名優、豪華出演陣は目を見張るものがあり、
演技達者な役者を揃えているのは勿論なんですが、
その適材適所の配役、役者陣の「存在感が光っている」作品です。

◆◆◆秀吉、倒れる!◆◆◆
物語は、天正遣欧少年使節のメンバー、原マルチノ(田中健)が、
天下を二分した「関ヶ原の合戦」の顛末を、
ローマ教皇庁に書簡で知らせるという形で語られていきます。

ドラマ冒頭は帰国した使節団が西洋音楽を披露するシーン。
大坂城の大広間に集まった大名達が次々と紹介されていきます。
まずは太閤・豊臣秀吉宇野重吉、その隣に北政所杉村春子

宇野さんは『軍師官兵衛』で徳川家康を演じている、
寺尾聡さんの父上ですね。もうこの事実だけでも時代を感じます!

杉村さんは文学座の重鎮。ドラマや舞台で活躍したカリスマ女優ですが、
当時、このドラマの撮影日程と舞台公演が重なっていて、
制作サイドはオファーしても断られるのではないかと思ってたそうですが、
すでに決定している出演者リストを見せたところ、
「よくもまあ、これだけ揃えたもんね」と呆れつつ、快諾したんだとか。



秀吉の側室・淀君は、ヒステリー女を演じさせたら天下一品の三田佳子
大河「花の乱」では日野富子を演じてましたね。

五大老筆頭・律義者として有名な、徳川家康には森繁久彌
映画「社長シリーズ」でも有名ですが、
70年代、竹脇無我と親子を演じたテレビ朝日系「だいこんの花」も良作。
宮崎駿監督の「もののけ姫」では乙事主(猪の姿をした神)を演じてました。

この場面、秀吉に西洋音楽について尋ねられる面々。
北政所は「尾張の盆踊りの方が好きだ」と言い、
淀君は「演者が身に着けている衣装が美しい」と答え、
家康は「わけ分からんちん」、前田利家は居眠りしてる始末・・。w

いや、とても単純な台詞ひとつの中に、
それぞれのキャラが明確に表現されている点が面白いですね。

その点、最も秀逸なのは石田三成の台詞で、
「これは『皇帝の歌』かと存じます」と曲名まで言い当てる小賢しさ!
「三成に聞けば何も分からぬ事はないのぅ~」と秀吉も感心します。

この三成を演じる加藤剛さんはTBSの「大岡越前」を長く演じてましたが、
豊臣家の権力をふりかざす悪逆非道な奸臣ではなく、
清廉潔白な忠義の臣としての三成が、ドンピシャのハマリ役。
このドラマを観ていると、自然、三成を応援したくなるから不思議です。



関ヶ原合戦当日、石田隊と共に奮戦する宇喜多秀家三浦友和
当時、歌手の山口百恵さんと共演した「赤いシリーズ」が有名で、
まさに「青春スター」として活躍中でしたから、この配役は絶妙。

余談ですが、このドラマが放送されたのは、1981年の正月。
その前年の11月に百恵さんと結婚してますから、
収録当時は、かなり忙しかったでしょうね。



さて、無事に演奏を終えた原マルチノ(田中健)ですが、
不思議な音を奏でる楽器に興味を持った秀吉は、
「もっと近くで見せろ」と、マルチノに命じます。

しかし卓上型のチェンバロ(後のピアノ)は、
かなり重たくて簡単に動かせないので、その場でグズグズ。
苛立った秀吉は歩み寄ろうとした所に立ちくらみを起こし、
そのまま意識を失って病の床についてしまいます。



そんな中、ドラマは秀吉に関わる二人の女性を紹介していきます。
ひとりは正室の北政所(おね)。年寄りの女性にも優しい心配りを忘れない、
律義者の徳川家康から贈られた茶器に御満悦。
側に控える女性は、孝蔵主(こうぞうす)。今で言う首席秘書官。

続いて、侍女が運んできたロウソクの火に脅える淀君のシーン。
「裸火は嫌いじゃ!」という台詞から、信長の妹・お市の娘として生まれ、
小谷、北の庄の落城経験が語られていきます。



この孝蔵主三崎千恵子、淀君の側近・大蔵卿賀原夏子と、
それぞれ名脇役といえる助演女優を配置している点も見逃せないですね。
そして、淀君に仕える大蔵卿の紹介により、
三成と淀君との連絡係として、初芽という女が登場。

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しかし、松坂慶子演じる初芽(原作オリジナル・架空の人物)の正体は、
淀君と三成の間を裂く為に送り込まれた、敵側の間者でした。

同じ頃、奈良への道を急ぐ謎の武士。
道中、あとをつけてくる家康の放った忍者の攻撃をかわし、
医師・北庵法印(大滝秀治)から、秀吉の寿命を聞き出す侍。
彼こそが、石田三成の密命をおびた家臣・島左近でした。



関ヶ原よりはるか後年、筑前福岡城において、
黒田家の老将達が、はるか昔の関ヶ原を思いだす時、
真っ先に恐怖の対称とされたのが、三成隊の第一段に配置され、
黒田隊を潰走させた猛将・島左近の戦いぶりだったとか。

近江4万石の大名となった三成は、その半分の石高をもって、
彼を召し抱えた・・という逸話を持つ左近。
その島左近を演じるのは、日本を代表する役者・世界のミフネ。

黒澤明監督の主演映画で有名な三船敏郎さんですが、
フランス・イタリア・スペイン合作映画『レッド・サン』(1971年)では、
ハリウッドスターのチャールズ・ブロンソン、
フランス映画のスター、アラン・ドロンと共演、
西部劇を舞台にブロンソン&ドロン演じるガンマン相手に、
刀で戦うサムライを演じてました。(監督は007シリーズのテレンス・ヤング)

老獪な家康(森繁)相手に、若い三成(加藤)じゃ勝負にならん、
見る前から興ざめだよ、ムリムリ・・。
~と、そんなバランスの悪さも、三成側に島左近(三船)がいるだけで、
このドラマが引き締まること、いや~、その効果は絶大です!

▼ドラマ「関ヶ原」 ~朝鮮からの帰還~