軍師官兵衛:第33回 傷だらけの魂 第2幕 | ♪ DEAR MY LIFE ♪

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茶々と道薫
秀吉は当代随一と名高い舞いの演者を城に招き、
茶々を喜ばそうとするが、あえなく敗北・・・。



退屈でたまらない茶々は、途中で退席した後、
廊下で道薫~荒木村重と出会う。



※化け物が出会う廊下
この次の場面で、これまで自分が与えてきた物に、
一切興味を示さなかった茶々が、唯一、興味を持ったのが、
お前だ!道薫~という秀吉の台詞がありますが、

この出会いのシーンの茶々は、興味を持ったといっても、
「わぁ、荒木村重様!常々、お会いしとうございました!」
「あの信長公に謀叛したという気骨ある殿方のお話し、
 茶々は、是非、聞きとうございます!」という様な、
憧れの人物に出会えた喜びの表情!という訳じゃなさそうですよね。

何か、見てはいけない者を見てしまった、
おぞましい化け物を見てしまった様な、陰鬱な表情。
恐らく、茶々は茶々なりに、道薫という人物が、
自分と同類=生ける屍である事を雰囲気から察したんでしょう。



翌日、秀吉に呼び出された道薫は、茶々の希望により、
有岡の話しをすることを命じられる。



大坂城下・南蛮寺
大坂城から天満の黒田屋敷への帰り道、
高山右近のいる南蛮寺に立ち寄った官兵衛



この大坂の街にも、立派な南蛮寺が建ち、
布教が許され、信徒が増えつつあることを喜ぶ右近。
そこで官兵衛は、有岡幽閉時代、だしが歌っていた曲を耳にする。



>だし様は、常に、村重様や周りの方の
>心、安らかならんことを祈り続けておりました。(右近)

>もう、六年になりますか・・・。(官兵衛)

※だしの祈り
右近の言葉を、そっくりそのまま信じるとするなら、、
だしって、自分自身の心の平穏の為に
祈ってたわけじゃなかったんですね・・・。
ジグソーパズルの欠片を一つ発見!という感じ。



だしを救いたかった右近は、生きていれば八歳になる、
彼女の子供の行方を気にかけていた。

天満・黒田屋敷
屋敷に帰宅した官兵衛は井戸端で働く下男の姿が目に入った。
新吉を紹介する善助
九郎右衛門は、何処かで見覚えのある顔だと感じたが、
ハッキリと思いだせない。



その新吉が自宅に帰ると食事の用意が整っていた。
カメの水を飲み、絵を書いている子供=又兵衛を呼ぶ新吉。
その所作、動作からみて、彼は農民出身ではなく、
元・武士の様な気配が漂っていた。

道薫と官兵衛
茶々の希望により有岡の話しをする事になったと告げる道薫
時間の止まった彼は、官兵衛に見届け役を依頼する。



道薫に目通りを願う者がいると、九郎右衛門が連れてきたのは、
村重の家臣・谷崎新吉と、だしの侍女・さと
そして、村重の息子・又兵衛だった。

行方知れずだった村重。関白の御伽衆になったと聞いた新吉達は、
大坂付近、この天満の黒田屋敷に奉公して、
いつの日か、村重と又兵衛を会わせたいと願っていた。



さとは、又兵衛の首もとの、だしの遺品のクルスを見せるが、
自分には子供などいないと言って退席する道薫
新吉の出自、道薫の態度、目の前の出来事に戸惑う官兵衛

※親子の再会
元家臣とはいえ、逆賊・荒木村重の子供をかくまい、
秘かに育てていた谷崎新吉と、さとの姿に、官兵衛は、
亡き竹中半兵衛と同質の何かを感じたのかもしれませんね。

有岡から救い出され、秀吉と共にボロボロの姿で信長に拝謁、
同時に、殺されたはずの松寿丸が、実は半兵衛にかくまわれ、
生きていたと分かり、無事、再会を果たした場面。

あの、官兵衛自身の経験からすれば、

生きていた我が子・又兵衛と再会した道薫の、
あまりにも酷薄な姿を見て、
彼が受けた心の傷の深さに思いが至り、村重もまた、
乱世の被害者だった事に気付いたのかもしれません。

道薫の庵
雨の降る中、帰宅した道薫。世を捨てたはずの自分の前に、
我が子があらわれ、何事かを決心したかの様子。

※村重の思い
ひと目なりとも、生きていた我が子に出会えた喜び。
しかし彼は、自分は喜んではいけない、そんな資格はない、
また、こんな父を持った我が子が不憫だと、自分の心に鍵をかけ、
我が思いを断ち切ろうと、すべてを拒否している様に見えました。



大坂城下・南蛮寺
道薫の一件を、右近に伝える官兵衛
村重の子供が生きていたことを喜ぶ右近だったが、
我が子を見た時の道薫の姿に、素直に喜べない官兵衛。

>だし様は、右近殿のすすめでキリシタンになったと
>おっしゃっていたが・・(官兵衛)

>あの方は、際限のない戦いに苦しむ
>荒木様のお心を救いたいと考えていたのでございます。
>それがデウスの教えにおすがりするきっかけでございました。(右近)




>有岡城で土牢に押し込められた私を、いつも気づかって下さった。
>だし様とて、つらいことばかりであったはずなのに。(官兵衛)

>苦しい時ほど、隣人を大切に思うのでございまする。
>デウスの御教えにございます。(右近)


※だしの思い
思い返せば、温泉療養中、中々、体が元の様に動かず、
このままでは仕事も出来ない~と、周囲に悪態をつきながら、
一度は、軍師への復帰を諦めかけた事もあった官兵衛。

そんな時、誰が自分を支えてくれたのか?

それに比べ、今の道薫には、誰もいない。
勿論、それが彼の選んだ道とはいえ、
また、体の傷と、心の傷の違いはあるにせよ、

あまりにも無惨な、今の道薫の姿を、
村重の心を救いたいと願っていた、だしが見たら、
彼女は、どう思うだろうか・・。

苦しい時ほど、隣人を大切に~という右近の言葉。
一番、過酷な環境にあった土牢の中で、
夫の目を盗んでの、だしの献身的な姿を思い出す官兵衛。

右近の言葉により、だしの行為とデウスの教えが重なり合い、
化け物から人間再生の道=人を生かす道理を模索し始める官兵衛。

~てな具合に書くと、何やら格好良すぎるんですが、

だいたい、有岡幽閉当時の、だしっていうのは、
自分が官兵衛に書状を出したばかりに官兵衛を巻き込んでしまった~と、
そんな自責の念の方が強かったと思うんですよねぇ。
(っていうか、そういう風にしか見えなかった・・)

ただ、当時のだしが、どういう思いだったにせよ、
彼女の精神の根底にはキリシタンの教えがあったのは事実でしょうし、
今の道薫(村重)を救えるのは官兵衛しかいない!~と考えた、
高山右近の策だったとしても、結構、面白い創作だと感じました。

▼軍師官兵衛:第33回 傷だらけの魂 第3幕