「サンタクロース物語」 | [Twinkle-Box]

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「サンタクロース物語」 (表紙はこちら


 塩野米松------------文・構成

 中川祐二------------写真   (新装版・1990年刊)



大人になったって、サンタクロースを信じてる、

という 著者が。


北欧に住むという ふしぎな存在に 会いたくて。


全く異なる 顔を見せる、

冬と夏 ふたつの季節に 北欧を訪れ。


どんな風土と

どんな暮らしが、

クリスマスの夜の ファンタジーを生んだのか。


温度も伝わってくるような 写真ともに

語られている本、です。



特に印象に残ったのは、

・独特の日照時間

・クリスマスとお墓参り

・各地でのサンタ物語の起源…。



【日照時間】

たとえば、

フィンランドを訪れたときの お話では。

午前11時ごろに やっと日が昇ったかと思うと

朝焼けが そのまま夕焼けにつづいて。

そして、

光は 消えていってしまう…。



凍てつく寒さと、覆い被さる 闇の世界。


だからこそ、あたたかく迫る、

オレンジ色の 灯。

クリスマスの飾りで彩られた、

ショーウィンドウや 家庭の窓々。



そんな風土を 見せられると。


長い長い冬の夜を 過ごしゆくために、

何か、楽しみを。

厳しい自然のなかにも、何か

親しみを持てる 存在を…。



そんな、北の国の人びとの願いが

しぜんと 不思議な存在を 見いだしていった…


ファンタジーが生まれる 必然性が

素直に、受け入れられていきます。




【サンタのはじまり】


紀行文のほかに、興味深かったのが、

北欧・英独・米…


各地の サンタクロース物語の

「起源」を紹介する 章でした。



各国の文学・児童文学の 翻訳者さん、

言語・口承文芸の研究者さん…たちが、


簡潔に、


それぞれの国の サンタクロースの起こりを

まとめてくださっているのですが。


なぜか、皆、共通する事情は、


もともと、その土地にあった、

民俗的な言い伝え・風習、

宗教行事などが ベースになっている、

いうことで。



各国の クリスマス絵本を見ると、

国によって サンタさんのイメージが

異なっていたりしますが。


その理由が、

よくわかりました。



妖精さんが ベースになっている

サンタさんが、

個人的には いちばん 来てほしいかな…

と、思います。




【クリスマスと墓参】

また、北欧では、

クリスマスは

死者を悼む日、でも あるのだそうです。


墓碑が 平たいので、

雪に埋もれると どこにあるのか、

わからなくなってしまうのですが。


きちんと、その日は早朝から、

教会の方が 雪を除き、ブラシをかけ、


ろうそくの灯をともした

アイスシェード(氷でつくられた、風よけ。それでも氷が解けない、極寒さ…)

を、

墓碑のまえに ひとつひとつ

置いておいてくださる…。


そして、人びとは

花を たずさえて、訪れる…。



その風習の背景には、自分のご先祖さまだけでなく、

その国の

かなしい歴史を悼む、

という面も、

あるのだそうです。




サンタさんが いる、いない

を つきつめようとするより。


どうして、こんなにサンタさんは

世界中で 愛されてるのか。


人びとが サンタを必要とした、

生活に根ざした 「理由(わけ)」

には、


やはり、魅かれるものが、あります…。



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ちなみに、「サンタクロース物語」の著者、

塩野米松さんは、


こちら↓ の本の翻訳も、されています。

ピーターラビットの野帳(フィールドノート)/アイリーン ジェイ