〝それはオーストリアボクシングシーンの新しい幕開けとなるだろう〟
オーストリアが生んだ最高傑作と称される希望の星マルコス・ネーダーが初のメジャータイトル戦に挑んだ。
ネーダーは18歳にして国内アマタイトルを総なめにし国際舞台で活躍した。その後ドイツの名門ザウアーラントボクシングチームと契約しプロデビュー。以来16連勝を上げ今回のEBU欧州タイトル戦となった。
対する王者サントス(18勝10KO6敗3分)は苦節9年勝っては負けを繰り返し、難敵ドミニク・ブリチコ(当時26全勝)を8RTKOで破って当タイトルを手にした31歳のベテランだ。
さあウィーン一心の期待を背負うネーダーいかにサントスを攻略するかに焦点が集まった。
ネーダーまずはジャブで距離を測る。さすがに速い。そして正確なリード。サントスはガードを堅めこれをよく凌いでいる。
コンビネーションで崩しにかかるネーダーだが体全体の圧力ではサントスが上といったところか。
序盤はスピードで翻弄するネーダーに前進するサントスという構図。
ネーダーよく動きヒットで出ばなをクジくもののサントスの突進を止められない。
決してアウトボクス一辺倒ではなく出入りの激しいボクシングで打ち勝ちポイントを奪って来たスタイルが通用しないのだ。
何とか足で引っ掻き回し持ち前のボクシングテクニックでポイントアウトを狙うがいかんせん打ち負けているイメージが拭えない。
ネーダーは一言で言うと小手先のパンチでワンツスリーと打ち込んでも一発でも打ち返されるとハジキ返されるように後退するからだ。
それでもよく動き、的を絞らせず所々見せ場を作った。
そして後半戦だ。ネーダーは今回初めての12ラウンド、ここに落とし穴があったか。
豊富な運動量でサントスを制していたが失速してしまったのだ。序盤からサントスが狙っていたボディー打ちもここに来て効いてきた。
そうして試合はフルラウンド判定にもつれ込んだ。
結果は114-114、115-114、114-114ドローにてベテラン、ロベルト・サントスが見事防衛を果たした。
惜しくもタイトル奪取ならなかったネーダーは完全にグロッキーに陥ってしまった最終ラウンドさえ採れれば勝てた試合だ。
タフファイトを経験し一皮むけたネーダーだがオーストリアボクシングシーンの新しい幕開けとまではいかなかったようだ。
2012.11.2 Marcos Nader vs Roberto Santos