Sウエルター級にヤバいホープが現れた。
トップランク所属ミカエル・ゼウスキー23歳。まだ表情にあどけなさを残すカナディアンボーイはケベック州出身のファイターだ。
アマ通算138勝29敗、4度もカナダナショナル王座に就きつつもオリンピック出場を蹴ってプロ入りして来た。
「プロの世界はリスクもあるけど大金をゲットできるからね。オレは2009年に誰もがアマ最高と認めるキューバのカルロスを倒してんだぜ。もうアマでやり残した事はないよ」
ひょうひょうと言って退けるあたり正にプロ向き、なんとも図太い神経の持ち主だ。
そんなゼウスキーがボクシングに目覚めたのは9歳と早い。サッカー、フットボール、ホッケーとカナダで人気のあるスポーツは一通りやってはみたものの違和感を覚えたと言う。
「チームプレーってヤツがどうも駄目でさ。自分の思いのままにプレーできるスポーツっていったらボクシングだったんだ」
なんかこんなエピソード畑山も持ってたような。ことリング上では己の力だけが頼りのボクシング。ここにも生粋のボクサーがいたのだ。
さて今回は自身が〝これまでのキャリア中最大の戦い〟と称するセサール・チャベス(20勝10KO2敗)メキシコ王者と対戦。今後のタイトルショットを睨んでの本格的なテストマッチが始まった。
ゼウスキーがタイトル戦までに何としても経験しておきたいのが混戦だ。
16勝12KOとほとんどの試合を序盤KOで終わらせていて長丁場12ラウンズの世界戦に耐えうるかどうかまだ未知数な部分が多いからだ。
「オレにはまだまだ経験が足りない。より多くのラウンドをこなしその中で学ぶべきものを吸収したいんだ。これまで最大で6ラウンドまでしか戦った事がない。ついこないだも1Rで終わってしまったんだよ」
ゼウスキーは強すぎるが故自身のポテンシャルを伸ばせない事にジレンマを感じていた。さすがに今回の相手チャベスは困難な戦いが予測された。
「まだオレの経験のない7~8ラウンドあたりで勝負をつけられればと思ってるんだ。そう簡単な相手じゃないのも十分承知だよ。でもこれを乗り越えない事には上はないからね」
さあ試合だ。長丁場に備えてこれまで以上のハードトレーニングを積んで来たというゼウスキーどう出るか。
ファーストラウンドまずは軽快なフットワーク。チャベスを取り囲むようにして行く手を塞いで行く。
ゼウスキージャブ、ジャブ、ワンツーで踏み込んだがチャベスダックでかわしワンツーを返した。
瞬間左フックカウンター!入った!右アッパーでチャベスダウン!!
チャベスもんどりうって苦しむ。効いていると言うより頭蓋骨にヒビでも入ったかのような痛がり方。駄目だ。立てない。
ストップ!ゼウスキー1R37秒またも速攻でTKO勝利してしまった。
「今後の課題はやっぱり多くのラウンドをこなしてない事だね。これは問題だよ。明日にでもリングに上がろうかな」
チャベスは試合後診断で鼻を粉砕されていた事が判明した。
2012.11.3 Mikael Zewski vs Cesar Chavez