「5/26ノッティンガムのリングに立ったルシアン・ブテは本当のルシアン・ブテじゃなかったんだ。何が悪かったのか。弱点を克服してフロッチへの雪辱を果たす事を心に誓った。オレは強くなって必ず戻って来る」
悪夢の5RTKO負けから約5ヶ月。ルシアン・ブテが帰って来た。
ブテホームとなるモントリオールに元キック世界王者無敗のグラチョフ(12全勝8KO1分)を迎えてのLヘビーNABFタイトルマッチ。グラチョフは前回アマ302勝のシラクを8Rで破壊しているファイターだ。
「リングで何ができるか実践的なテストをするために私はあえて危険なグラチョフを選んだ。この戦いは私のIBFスーパーミドル級ベルト奪還のための第一歩となるだろう」
ブテの決意。
この試合はLヘビータイトルが賭けられたが170ポンドを上限としたキャッチウエイト、つまりブテが目指すはあくまでSミドル戦線〝フロッチへのリベンジ〟だ。
さあブテ、悪夢をあの岩をも砕くかのような獰猛なフックで、アッパーで、ストレートで粉々にブッ壊せるか。
しかしこの日のブテは慎重だった。いやグラチョフのプレスが予想以上に強く慎重にならざるを得なかったのか?グラチョフのショットの前に終止押し込まれていた。
いい方に取って見れば誘い込んでカウンターを狙う戦法と言えなくもない。しかしそれにしても単発すぎる。
「フロッチ戦で私は完全にペースを見失っていった。敗因はジャブだ。私の武器である高速ジャブを忘れていたんだ。それさえ打っていれば…」
フロッチ戦の呪縛。
この日ブテに骨抜きのようなファイトをさせたのはフロッチだったのだ。
距離を取り右ジャブ右ジャブ右ジャブ。ちょっとでも打ち込まれたらすぐさま引き下がりまた右ジャブ。ロープに詰る場面が何度もあったが決して打ち合わない。
……これがブテか…
ブテに何ら恐れる事なく右のロングを強振し襲いかかるグラチョフ。時おりブテの顔面を捕らえヒヤリとする場面も。
アウトボックスに徹したブテ、クリーンヒットでは一枚上か。最終12ラウンドのみ従来のブテらしく打って出た。
しかし試合を通しここまで下がっていては判定はどう出るか?
115-113、116-112、118-110三者ともブテで判定勝利をものにした。
この試合で唯一ブテ復活を無理に論じるのであれば打ち込まれてもダウンしなかった顎の証明か。
早ければ来年の3月にもフロッチへの再戦が噂されているが今日の出来ではかなり厳しいだろう。
同興行アンダーカードでリングインしたアラン・グリーンとの2択、ここはグリーン戦へ行くのではないだろうか。
「ババババン!ババババン!OK?!ブテ!」
ラウンド間セコンドが打って出ないブテに叱咤していた声が印象に残る試合だった。
Carl Froch On Bute Beating Grachev→試合フル動画はこちらリンク先よりどうぞ