スーパーマン(1978) | つぶやキネマ

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140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています

★ スーパーマン(1978)

 銀河の彼方にある惑星クリプトンは優れた科学文明を誇りながらも、太陽の寿命が近づき惑星消滅の危機が迫っていた。クリプトンの危機を訴え続けた科学者で最高権威者のひとりであるジョー=エル(マーロン・ブランド)は、裁判官として凶悪な犯罪者ゾッド将軍(テレンス・スタンプ)とその部下のノン(ジャック・オハローラン)とアーサ(サラ・ダグラス)の3人を反逆者として裁こうとしていた。最長老(トレヴァー・ハワード)たち裁判員の投票の結果、3人は時間のない監獄空間ファントム・ゾーンへの終身刑を言い渡されたが、ジョー=エルのクリプトンからの民族脱出の提案は惑星消滅の危機に疑念を抱く最長老や長老(ハリー・アンドリュース)、ボンド・アー(マリア・シェル)ら最高権威評議会によって却下され、ジョー=エル自身も反逆者ではないかと疑われクリプトンを出る事も禁じられてしまう。ジョー=エルは妻ラーラ(スザンナ・ヨーク)と消滅するクリプトンと運命を共にする事に決めるが、最愛のひとり息子カル=エルだけでも間近に迫る惑星消滅から救い出そうと、クリプトンのあらゆる知識や科学力、息子へのメッセージを収めたグリーン・クリスタルと共に星形の小型宇宙船スター・カプセルに乗せ、クリプトンとよく似た環境の太陽系第3惑星"地球"に向けて脱出させる。その直後、膨張し赤色巨星となった太陽に飲み込まれた惑星クリプトンは消滅してしまう。スター・カプセル内でカル=エルは成長し、知識や科学力を学習しながら"地球"に向かっていた。カンザス州スモールヴィルで農場を営んでいるジョナサン・ケント(グレン・フォード)は、妻のマーサ(フィリス・サクスター)とトラックで農場へ帰る途中、轟音と共に落下する隕石に遭遇、麦畑へ落下した隕石の中から現れた幼いカル=エルの姿に驚くが、故障したトラックの修理をするジョナサンに子供のいないマーサが養子として引き取ろうと提案していたその時、ジャッキが外れトラックがジョナサンの上に落下するが、怪力でトラックを支えその危機を救ったのは幼いカル=エルだった。ケント夫妻に引き取られクラークと名付けられて成長したカル=エル(ジェフ・イースト)は、地球人とはかけ離れた超能力を発揮するようになっていたが、ジョナサンから他人には超能力を隠しておくように堅く禁じられていてた。そんなある日、同級生の前では平凡な冴えない青年を演じる事に嫌気がさしていたクラークを慰めたジョナサンは、農場で突然倒れ亡くなってしまう。父の葬儀を済ませたクラークは、納屋に隠されていたグリーン・クリスタルに導かれ、母を残して北へと向かう。たどり着いた北極で、クラークはグリーン・クリスタルの不思議な力によって「孤独の要塞」を出現させ、ジョー=エルの残したメッセージと対話し出生の秘密と超能力、地球における使命を知る。「孤独の要塞」でクリプトンの知識や科学力を学び成長したクラークはスーパーマンとなって飛び立つ。スーパーマンである事を隠し田舎育ちの青年クラーク・ケント(クリストファー・リーブ)としてメトロポリスのデイリー・プラネット新聞社へ入社、ペリー・ホワイト編集長(ジャッキー・クーパー)、女性記者のロイス・レイン(マーゴット・キダー)、カメラマンのジミー・オルセン(マーク・マクルーア)と共に新米記者として働く事になるが、聡明で美しいロイスに惹かれてしまう。ロイスは取材に向かうために屋上からヘリコプターに乗り込むが、強風で外れたロープがヘリコブターに絡まりビルの端で宙吊りになってしまう。ロイスの危機を知りスーパーマンに変身したクラークは、力尽きて落下するロイスを受け止めヘリコプターを屋上へ戻し、呆然とするロイスに「友人です」と名乗って飛び去る。この時の様子が写真やTVカメラに捉えられたため、メトロポリスは謎の空飛ぶ超人"スーパーマン"の登場に騒然となり、ホワイト編集長はロイスに独占取材を命じる。活躍を続けるスーパーマンは、ロイスの取材を受けるためロイスの自宅アパートのテラスに飛来し、インタビューの後にロイスを夜間飛行デートに誘う。そのころ、メトロポリスの地下に本拠地を構える天才的頭脳の犯罪者レックス・ルーサー(ジーン・ハックマン)は、部下のオティス(ネッド・ビーティ)と美しい愛人イブ(ヴァレリー・ペリン)と共に巨大な悪事を企んでいた。大陸間誘導ミサイルに細工してサン・アンドレアス断層を破壊し大地震を起こして、アメリカ中をパニックに陥れようとしていたが、計画実行にはスーパーマンの存在が邪魔だと考えたルーサーは、ロイスの書いた記事等からスーパーマンが惑星クリプトンから来た宇宙人である事を突き止め、スーパーマンの力を奪ってしまう鉱石クリプトナイトを含む隕石の捜索を始める...というお話。「スター・ウォーズ(1977)」の大ヒットに便乗して製作されたDCコミックのヒーロー・シリーズの映画化で、「オーメン(1976)」の監督のリチャード・ドナー、原案・脚本が「ゴッドファーザー・シリーズ(1972~1990)」のマリオ・プーゾ、撮影監督は「2001年宇宙の旅(1968)」等のジェフリー・アンスワース、特撮には「サンダーバード(1965~1966)」「キャプテン・スカーレット(1967)」「謎の円盤UFO(1970)」「007シリーズ(1973~1995)」のデレク・メディングス、音楽は「ジョーズ(1975)」「スター・ウォーズ」「未知との遭遇(1977)」等で巨匠の仲間入りをしたジョン・ウィリアムズという布陣には、映画ファン、特にSci-Fi映画ファンは狂喜乱舞したものであります(注1)。ジョン・ウィリアムスの華麗で勇壮な音楽に乗って尾を引きながら流れるタイトル・ロゴや、たくましさと爽やかさを併せ持つスーパーマン=クリストファー・リーブの勇姿と存在感には、幼少期にジョージ・リーブス主演のTVシリーズ「スーパーマン」に夢中になった世代としては万感胸に迫るものが...。何よりも素晴らしかったのは新機軸と言えるスーパーマンの飛行シーンで、フライシャー兄弟のアニメーション・シリーズやTVシリーズが、地球に来たことで得られた「強力なジャンプ力」の延長としての飛行だったのに対して、明らかにウォルト・ディズニー作品の「ピーターパン(1953)」を意識したと思われる自然な浮遊感が本当に素敵です...夜間飛行デートのシーンは完全にピーターパンとウェンディだもんね(注2)。本作で最も好きなのは、アメリカ映画らしい雄大で奥行きのある画面で描かれるカンザス州スモールヴィルでの青年期のクラークを描く短いパートで、クラークを演じたジェフ・イーストの素朴で明るい笑顔と超能力者であることを隠さなければならない大きな苦悩を抱えるコントラストが素晴らしかった...声はクリストファー・リーブによって吹替えられています。作品冒頭の惑星クリプトンのスケールの大きさにもワクワクさせられたが、ビデオの時代以降に何度も観直した事で、衣装やセットが意外とチープだったり、セットの一部が中盤に登場する北極の「孤独の要塞」として使い回されているのに気がついてしまった。しかし、本作が本当の意味で素晴らしかったのはクラークが「孤独の要塞」で覚醒しスーパーマンとなって飛び立つまでで、田舎育ちのボンクラ青年としてデイリー・プラネット新聞社へ入社したあたりからは突如としてコメディ調になり、スーパーマンの活躍も「なんだかなぁ」という感じ(阿藤快さん、ご冥福をお祈りします)。原作コミックのファンに目配せしたのか、宿敵であるレックス・ルーサーも、巨大な犯罪をたくらんでいる割に子分は役立たずのオティスと愛人のイブのみという、TVシリーズ版や同じくDCコミックのヒーロー・シリーズのTVシリーズ化「バットマン(1966~1968)」と大差ないスケールになってしまう。ミサイルのプログラム変更にもたつくオティスとか、ミサイルを運ぶ部隊のエロ司令官がイブの色仕掛けにまんまと乗ってしまうあたりとか出来の悪いハリウッド・コメディでしかないし...ラリー・ハグマンは好演してましたが(注3)。後半のスーパーマンの大活躍では特撮が突如として当時の基準としては考えられないほど雑になり映像的な迫力が半減し、惑星クリプトンの特撮や孤独の要塞の巨大なセット、スーパーマンの飛行シーン等で予算を使い果たしてしまったのではと思わせるほど。クライマックスの地震の描写もおざなりで、巨大ダムの決壊もミニチュア自体は素晴らしかったが撮影や照明、編集が平凡で、さっぱり迫力が感じられない残念な結果に。地震に巻き込まれたロイスを救出するそんなアホなという手段も、もう少し別のアイデアは無かったのかと突っ込みたくなりました(注4)。この件は、すでにフライシャー兄弟のアニメーション・シリーズから露呈していた、同時多発の事故・事件に対しての単身ヒーローの限界もはっきりとした形になり、結局この問題は「X-メン・シリーズ(2000~)」「アベジャーズ・シリーズ(2012~)」等のように複数ヒーローの活躍を描く事でしか解決出来ないという結論になる。本作はクリストファー・リーブという、唯一無二のスーパーマン俳優を得たことで全体的には愛すべき作品になっているだけに、脚本上の欠陥や映像的な魅力に欠ける部分はすごく残念であります。一件落着ということでスーパーマンが今後の活躍を予感させつつ地球の周りを飛行するラストで、スクリーンのこちら側にいる観客に目線を向けニッコリするという映画のタブーを犯したのには拍手喝采であります...この場面で細かい不満はすべて解消してしまうのであった(注5)。

●スタッフ
監督:リチャード・ドナー
製作:ピエール・スペングラー、アレクサンダー・サルキンド
製作総指揮:イリヤ・サルキンド   
原案・脚本:マリオ・プーゾ 
脚本:デヴィッド・ニューマン、レスリー・ニューマン、ロバート・ベントン、トム・マンキウィッツ
撮影:ジェフリー・アンスワース   
特殊効果:コリン・チルバース、デレク・メディングス、ドミニク・フルフォード、ボブ・ホフマン、デレク・ボーテル
音楽:ジョン・ウィリアムズ   

●キャスト
クリストファー・リーヴ、マーゴット・キダー、マーロン・ブランド、ジーン・ハックマン、テレンス・スタンプ、ジャッキー・クーパー、ネッド・ビーティ、トレヴァー・ハワード、スザンナ・ヨーク、グレン・フォード、ヴァレリー・ペリン、マーク・マクルーア、ジェフ・イースト、フィリス・サクスター、ラリー・ハグマン、サラ・ダグラス、マリア・シェル、ハリー・アンドリュース、ジャック・オハローラン、スティーヴ・カーン

◎注1; DCコミックの「スーパーマン」映画化の企画は、ジョージ・リーブス主演のTVシリーズ放映中からあったようですが、当時はSci-Fiやホラーは所謂B級映画で、ハリウッドで活躍するプロデューサーや監督たちからは二流・三流の仕事として無視されていました。冷戦時代の1960年代はヒーローはジェームズ・ボンドのようなスパイが全盛で、ベトナム戦争が泥沼化するに連れて単純な娯楽映画やヒーローものはさらに下火になり、ハリウッドではフランスのヌーベルヴァーグに影響されたアメリカン・ニューシネマが台頭し、国際情勢や社会生活を反映したシリアスな作品が多くなり結末もシニカルなものが増えます。しかしTV界では「宇宙大作戦/スター・トレック(1966~1969)」のようなSci-Fiや「バットマン(1966~1968)」のようなコミック・ヒーロー物が人気を得ていました。そんな時代でしたが、「ミクロの決死圏(1966)」や「猿の惑星(1968)」、「2001年宇宙の旅(1968)」の成功によってSci-Fiというジャンルをハリウッドが再考するきっかけとなり、「猿の惑星」はシリーズ化され、「宇宙からの脱出(1969)」「アンドロメダ...(1971)」「地球最後の男 オメガマン(1971)」「スローターハウス5(1972)」「未来惑星ザルドス(1973)」「ウエストワールド(1973)」「ソイレント・グリーン(1973)」「ローラーボール(1975)」「2300年未来の旅(1976)」等が次々と公開されますが、いずれの作品もアメリカン・ニューシネマの影響を受けたシリアスな内容でした。「三銃士(1973)」「四銃士(1974)」の成功で「スーパーマン」の映画化権を取得したアレクサンダー・サルキンドとイリヤ・サルキンド親子はハリウッド各社に売り込みを続けていたようですが、単純明快な勧善懲悪のヒーロー物は敬遠されてしまったようです。そんな中、「アメリカン・グラフィティ(1973)」を大ヒットさせたジョージ・ルーカス監督で20世紀フォックスがSci-Fiの活劇物を、「ジョーズ(1975)」を大ヒットさせたスティーヴン・スピルバーグによるUFO物をコロンビア映画が製作中という噂がハリウッドに流れ、ワーナー・ブラザーズが当たればシリーズ化も可能な「スーパーマン」に飛びついたようです。本作の製作及び総指揮となったサルキンド親子は、製作費削減のために「三銃士」「四銃士」と同様に最初から2作同時に撮影する事を決め、TVシリーズ「拳銃無宿(1958~1961)」「ミステリー・ゾーン(1961~1963)」「コンバット(1962~1967)」やチャールズ・ブロンソン主演の「宇宙船X-15号(1961)」等のベテランで「オーメン」の大ヒットで一躍注目されたリチャード・ドナー監督で撮影を開始しますが、編集等をめぐってサルキンド親子と衝突したドナー監督は本作の完成後に続編の撮影が半分以上残っていた段階で降板してしまいます。この時のトラブルが原因で、当時ドナー監督作品として劇場公開された「スーパーマン(1978)」、「ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!(1964)」「HELP! 4人はアイドル(1965)」の監督で「三銃士」「四銃士」ではサルキンドと組んだリチャード・レスターが監督を引き継いだ「スーパーマンII/冒険編(1981)」、後年ドナー監督自身によって再構築された「スーパーマン ディレクターズ・カット版(2000)」「スーパーマンII リチャード・ドナーCUT版(2006)」が存在するという厄介なことになっています。サルキンド親子はその後シリーズ第3作「スーパーマン III/電子の要塞(1983)」に続いて「スーパーガール(1984)」「サンタクロース(1985)」を製作しますが、この2作の失敗が原因で「スーパーマン」の映画化権をキャノン・フィルムズに売却、その後に「スーパーマンIV/最強の敵(1987)」がクリストファー・リーヴのストーリー原案への参加で製作されています。サルキンド親子はDCコミックの「スーパーマン」の派生作品「スーパーボーイ」の権利は手放さなかったようで、その後TVシリーズ「スーパーボーイ/Superboy/Adventures of Superboy(1988~1992)」を製作、「コロンブス(1992)」の失敗を最後に映画製作からは撤退したようです。
◎注2; 本作の特撮は「トミー(1975)」「ロッキー・ホラー・ショー(1975)」「ムーンウォーカー/スムーズ・クリミナル(1988)」「X-メン(2000)」等のコリン・チルバース監修の元、ミニチュア撮影を「サンダーバード」等のデレク・メディングスが担当していますが、本作の目玉と言えるスーパーマンの飛行シーンは、ドミニク・フルフォード、ボブ・ホフマン、デレク・ボーテルによって試行錯誤が繰り返されたようです。ほとんどの飛行シーンがワイヤーで吊るされている事を忘れるくらい自然で素晴らしいんですが、一番の難問はスーパーマンの赤いケープ(マント)だったようで、ワイヤーで吊るして風を送っただけでは身体に密着してしまい綺麗に羽ばたかなかったそうです...ケープを袋状にしてタイミングを合わせて圧縮空気を送り込んだらしい。一番期待したデレク・メディングスによるミニチュア撮影の出来が悪かったのがホントに残念...ミニチュアの出来は悪くなかったんだけど照明と撮影がねぇ。惑星クリプトンのシーンではジョー=エルたちの衣装やセットに道路標識等で使われている反射材を使用し、フロント・プロジェクション方式で照明を当てて輝かしている。公開当時は感心したのだが、何度も観直すと上手く光っていないシーンが多いのに気がついて妙に安っぽく感じてしまいます。ミサイルの発射シーンは本物の記録映像が流用されているのだが、スタンダード・サイズで撮影された映像をワイドスクリーンにあわせて引き延ばしているので、天地が潰れたようになっている...ドナー監督は監督デヴュー作「宇宙船X-15号」でも同じような荒技をしていて、実写フィルムを流用したX-15の飛行シーンはすべて天地が潰れていました。ジェフ・イースト演じる高校生のカル=エルがフットボールをキックして遥彼方まで飛ばすシーンは、演技にあわせて大砲のような機械でフットボールを発射したそうです。尾を引きながら流れるタイトル・ロゴは、「スター・ウォーズ」の冒頭の奥に流れる字幕を意識したのは明らかですが、映像的完成度はこちらの方が遥かに高く、CGの無かった時代としては驚異的なクオリティです。コンピューター制御のモーション・コントロールカメラを使用して、照明を微妙に変えながら何度も移動と露光を繰り返すことで得られる画像なので、特撮関連の予算と時間がかなりつぎ込まれたのではないかと思われます。
◎注3; クリストファー・リーブは、1974年頃から数本のTVドラマに小さな役で出演して注目され、スーパーマンを演じることが決まってからは筋肉トレーニングと筋肉増強レシピで鋼鉄の男(The Man of Steel)の見事な身体を作り上げ撮影に臨んだ。同年公開の映画デヴュー作「原子力潜水艦浮上せず(1978)」では少しほっそりしている事から短期間で肉体改造を行ったと想像出来ます。結局のところ本作と3本のシリーズ作品は、クリストファー・リーブの勇姿と演技、存在感が最大の魅力となっていて、後に登場する多数の"スーパーマンたち"も彼を越える魅力を発揮出来ていない。クラークを演じる時の、黒ぶちメガネに少し猫背気味の姿勢で頓珍漢な台詞を喋るコメディ演技も良いコントラストになっているし、ロイス宅でスーパーマンであることを告白しようとする場面では、わずかな変化でクラークとスーパーマンを一瞬で演じ分けていて素晴らしいです。ロイスを演じたマーゴット・キダーは、ブライアン・デ・パルマ監督のカルト作「悪魔のシスター(1973)」で注目され「暗闇にベルが鳴る(1974)」「リーインカーネーション(1975)」等の"恐い女性"が当たり役だったので、ロイス役に抜擢された時はかなりな不安がよぎった。シーンによっては痩せ過ぎていてちょいちょい"恐い女性"が顔を出すが、全体的にはコメディ演技もナカナカ良く可愛く撮られていて、自宅アパートのテラスでのインタビューから夜間飛行するデート場面はホントに素敵です...個人的には「華麗なるヒコーキ野郎(1975)」の時の少しふっくらなのに幸薄い感じが好み。レックス・ルーサーを演じたジーン・ハックマンは、アカデミー主演男優賞を受賞した「フレンチ・コネクション(1971)」以降の絶頂期だったので演技も存在感も最高、コメディ要素過多の演出にも関わらずスーパーマンの宿敵としての悪の魅力全開で、クリストファー・リーブとの共演場面では主役を完全に喰ってしまっています。ジョー=エルを演じたマーロン・ブランドは、当時世界一ギャラの高い俳優としてギネス記録になったほど本作の出演者の中で最高額のギャラをもらっていたにもかかわらず、台詞をまったく覚えて来ないのでセットのあらゆる所にカンペが貼られたらしい。そのせいか台詞は棒読みな感じが顕著で、1950から960年代の諸作やアカデミー主演男優賞受賞の「ゴッドファーザー(1972)」のような名演を期待したプロデューサーや監督はひどく落胆したらしい...本作あたりをきっかけに存在感だけで高額のギャラを獲る俳優になってしまいます。オジさん世代の映画ファンには、惑星クリプトンの長老役としてトレヴァー・ハワード、ハリー・アンドリュース、マリア・シェルが、クラークの育ての親としてグレン・フォード、フィリス・サクスター、ペリー・ホワイト編集長を演じたジャッキー・クーパー等が嬉しかったが、彼らの出演作を知らない日本の若い映画ファンには「あれ誰?」な感じだったようだ。高校生のクラークが列車と競争するのを車内の幼いロイスが目撃する場面には、両親役として「スーパーマン(1948)」で初代のスーパーマンとロイスを演じたカーク・アレンとノエル・ニールが特別出演しています...ノエル・ニールはジョージ・リーブスのTVシリーズでもロイスを演じています。ミサイル警護のボンクラ司令官を演じたラリー・ハグマンは、オジさん世代にはTVシリーズ「かわいい魔女ジニー(1965~1970)」のNASAの宇宙飛行士トニー役でおなじみだったが、本作は所謂カメオ出演だったようだ...本作公開時には大ヒットTVシリーズ「ダラス(1978~1991)」で主演する事は日本の映画ファンには伝わっていなかった。ロイスとクラークがデイリー・プラネット新聞社のドアで挨拶を交わすのは、当時オカマ(?)の映画評論家としてTVで大人気だったレックス・リードです。
◎注4; 原案・脚本のマリオ・プーゾは、イタリアからの移民である自身の体験を元に執筆した「ゴッドファーザー」がベストセラーとなり、映画化の際には脚本家としても参加しアカデミー脚色賞を受賞しているが、本作のようなヒーロー物には向いていなかったようで、デヴィッド・ニューマン、レスリー・ニューマン、ロバート・ベントン、トム・マンキウィッツの4人によって次々に改変され、完成した作品には彼の執筆した部分はほとんど残っていないようだ...名声だけを当てにして人を雇って失敗した典型で、本作の後半のドタバタ展開は船頭多くして何とやらの見本みたいですな。
◎注5; スーパーマンが観客にニッコリする場面は、アメリカでは拍手が起きたらしい。日本では一部の映画ファンがニヤニヤしただけだったようだ。個人的には、フランソワ・トリュフォー原案、クロード・シャブロル監修、ジャン=リュック・ゴダール監督・脚本のヌーベルバーグの記念碑的作品「勝手にしやがれ(1959)」への、ドナー監督からのかなり遅れた「返答」ではないかと妄想しています。

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