ロード・ジム(1965) | つぶやキネマ

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大好きな「映画」について「Twitter」風に
140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★

 

ロード・ジム(1965)

 

 ビクトリア朝のイギリス、海軍の若き士官候補生とし
てマーロウ船長(ジャック・ホーキンス)の船に乗り込ん
だジェームズ・バーク(ピーター・オトゥール)は、船長
の期待に応え航海士として活躍していたが一方で海の英
雄になる事を夢見ていた。不注意から足を骨折し船を降
りる事になり、入院治療が済み回復したジムは、貨物船
パトナ号に一等航海士として乗船するが、パトナ号は老
朽船な上に貨物室には聖地巡礼に向かうイスラム教徒が
800人詰め込まれていた。ある晩、気圧が低下した事で
スコールが近い事を聞いたジムは用心のため機関士のロ
ビンソン(ジャック・マッゴーワン)に速度を半分にする
よう命じるが傲慢なブライアリー船長(ウォルター・ゴ
テル)はジムの意見に耳を貸さなかった。まもなくパト
ナ号は霧の中で座礁し薄い船底から浸水が始まっていて
イスラム教徒たちが騒ぎ出す。雷鳴と共に襲って来た嵐
の中、ジムは船長たちが救命ボートを降ろし逃げ出そう
としているのを目撃、もう一艇ある救命ボートを降ろし
ても乗客全員は助からないと知っているジムは、大波に
打たれ混乱する中で船長の呼ぶ声に耳を奪われ、気がつ
くと船長の救命ボートに乗っていた。ジムと船長、ロビ
ンソンと船員の4人は長い漂流の末に港にたどり着くが、
そこにはフランス船によって救出されたパトナ号の姿が
あった。ジムたちの逃亡が明らかになり、開かれた海難
審判でのフランス軍士官(クリスチャン・マルカン)の証
言等からジムは船員資格を剥奪され、身を隠すように東
南アジアの港を渡り歩き労務者として働き続ける。逃亡
の日々を送っていたジムは新聞でブライアリー船長が自
殺した事を知り、移送中のオランダの極東貿易商会の積
荷火災を防いだ事で交易所長のスタイン(ポール・ルーカ
ス)から声をかけられるが、港にロビンソンの姿を発見す
る。彼と再会した事でこの港に居られない事を悟ったジ
ムはスタインの事務所を訪ね、パトサンの村へ銃と火薬
を運ぶ仕事を依頼される。パトサンの村人は将軍(イーラ
イ・ウォラック)と呼ばれる男の武装集団に支配され奥地
の錫鉱山で奴隷のように酷使されていて、銃と火薬は村
人が将軍と戦うためのものだった。バト・クリングの港
で貸し船業者のショーンバーグ(エイキム・タミロフ)か
ら蒸気船は故障中と言われ、ジムは小さな帆船でふたり
の水夫と共に出帆するが、川を遡る途中で水夫のマレイ
(リック・ヤング)がもうひとりの水夫を殺して逃亡、マ
レイは将軍のスパイとして送り込まれた男でスタインの
積荷に火を放ったのも彼だったのだ。ジムは出会ったパ
トサンの村の少年ルオン(スオン)の機転で運んで来た銃
と火薬を隠し船を爆破して偽装するが、報告を受けた将
軍の部下たちに捕まってしまう。将軍によって拷問にか
けられたジムは、教師をしている娘(ダリア・ラビ)に助
けられパトサンの村へ身を隠し、将軍との戦いを決意し
たジムは村長ドゥ・ラミン(斎藤達雄)と息子ワリス(伊丹
一三)と共に戦略を練る...というお話。

 1900年に発表されたジョセフ・コンラッドの原作を

「暴力教室(1955)」「熱いトタン屋根の猫(1958)」「冷

血(1967)」等のリチャード・ブルックスが映画化した重

厚な冒険映画であります。ジョセフ・コンラッド原作で

ピーター・オトゥール主演の面白映画にもかかわらず、

語られる事が少ないのが残念(注1)。マーロウ船長によっ

てジムの苦難の生涯が語られる形になっていて、ストー

リー自体はメチャクチャ面白いのだが、ラストを迎えた

時に何となくモヤモヤした感じが残る。その辺はリチャ

ード・ブルックス監督がアメリカ人だからなのか、有名

なイギリス人俳優が多数出演しているにも関わらず、全

体的に植民地時代のイギリス風味が欠如している事と関

係があるかもしれないし、パトサンの村での戦いが2部

構成風なのも原因かもしれない。パトナ号の事件から

将軍との戦闘あたりまではワクワクドキドキの連続なの

だが、将軍に勝利しジムが伝説的指導者トゥアン・ジム

(ロード・ジム)として崇められた後、スタインの元部下

で将軍の仲間だった酔いどれのコーネリアス(クルト・

ユルゲンス)がバト・クリングの港へ逃げ延びた後に、

ショーンバーグや悪名高い海賊のダンカン・ブラウン

(ジェームズ・メイソン)を引き連れて、将軍の残した財

宝を奪い返しに村に戻って来るエピソードは、ストーリ

ーの雰囲気が完全に変わってしまっていて、別の映画を

観ているような気分にさせられる。ジムがパトナ号事件

の呪縛と決別するためには必要なエピソードなのだが、

脚本や演出もちょっとギクシャクした感じで、ラストの

ジムの決断に説得力が足りなくなったように感じます。

パトナ号とパトサンを関連付けるジムの言葉も、ダジ

ャレの解説みたいで苦笑するしかないのだ...PATNA→

PATUSAN→PATNA+US。ジムの家族についてはまった

く語られないのだが、ラストでジムを息子のように思い

連れ帰ろうとするスタインに「救おうとしないでくれ、

"助けて"くれパパ」と静かに語りかけるジムの台詞は

ナカナカ泣かせます。

 

●スタッフ
製作・監督・脚本:リチャード・ブルックス
原作:ジョセフ・コンラッド
撮影:フレデリック・A・ヤング
音楽:ブロニスラウ・ケイパー

 

●キャスト
ピーター・オトゥール、イーライ・ウォラック、
ジェームズ・メイソン、クルト・ユルゲンス、
エイキム・タミロフ、ジャック・ホーキンス、
ポール・ルーカス、ウォルター・ゴテル、
ジャック・マッゴーワン、ダリア・ラヴィ、
伊丹一三、斎藤達雄、クリスチャン・マルカン、
リック・ヤング、スオン

 

◎注1; 本作の最大の魅力は出演俳優たちの演技合戦
で、ピーター・オトゥールは「アラビアのロレンス
(1962)」に迫る名演が観られます。ジャック・ホー
キンスも"イギリス人の偉い人"ぶりがホントにサマに
なっている。イーライ・ウォラックとエイキム・タミ
ロフは得意の"無国籍な怪しいヤツ"を演じていて見事
と言うしかないし、ポール・ルーカスの人柄が良く正
義感の強い老人はホントにはまり役です...物語終半は
彼の演技が大きな見せ場になっています。ジェームズ
・メイソンが楽しそうに極悪人を演じているのも嬉し
いし、クルト・ユルゲンスは本作唯一のコメディ・リ
リーフで小ずるい呑んだくれぶりが楽しい。「白い肌
に狂う鞭(1963)」でお色気タップリだったダリア・ラ
ヴィは今回は露出が少なくて残念...将軍に脱がされる
場面では期待してしまったエロ親爺デス。伊丹一三(十
三)は見せ場は多いし少しだけですが英語の台詞もあり
ます。斎藤達雄は存在感タップリだったが台詞はアメ
リカ人俳優が吹き替えているようです。

 

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