真・地獄の黙示録(1993) | つぶやキネマ

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大好きな「映画」について「Twitter」風に
140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★

 

真・地獄の黙示録(1993)

 

 19世紀末期のロンドン、港に停泊する船上で船乗り
のマーロウ(ティム・ロス)はロンドンの海運会社社長
のイェーガー(ピーター・ヴォーン)と弁護士(ステファ
ン・オックスレイ)、会計士(ティモシー・ベイトソン)
と会っていた。イェーガーはマーロウからカーツ(ジョ
ン・マルコヴィッチ)がコンゴで記した書類のファイル
の所在を執拗に聞き出そうとするが、カーツとの出会
いはマーロウにとっては思い出したくない出来事だっ
た。8年前、マーロウは海運会社と契約しベルギー領
のコンゴへ派遣され、ベルギー海運会社の会計主任ジ
ャック・デルコミューン(ジェフリー・ハッチングス)
から、コンゴ川上流の奥地にある交易出張所の所長の
カーツが象牙の出荷をして来なくなったので、船長と
して蒸気船で川を遡りカーツの所在確認と象牙の回収
をしてくるよう命じられる。マーロウは社員のギュス
ターヴ・アルー(マイケル・フィッツジェラルド)と現
地人の機関士ムフム(アイザック・デ・バンコール)と
20人の人夫たちと共に、スタンリー・プールの中央出
張所を目指して徒歩で密林を進むが、キャンプ中に人
夫3人が原住民にさらわれるが、ムフムが象牙取引のた
めのビーズ一袋と交換にふたりを取り戻す。中央出張
所に着いたマーロウは、乗るはずだった"ベルギー国王
号"が原住民の襲撃で沈没しているのを目にし、支配人
のゴス(ジェームズ・フォックス)から錯乱したカーツが
多数の原住民を従えて王国を築き象牙を独占している
と聞かされる。ムフムと共に船を引き上げ修理したマ
ーロウはカーツの後任をまかされたアルフォンス・ド
・グリフ(パトリック・ライカート)とヴェルム(アラン
・コーデュナー)を同乗させると、カーツの居る出張所
を目指して出発する。マーロウはムフムから姿を隠し
て船を追跡している原住民の一団がいる事を知らされ、
途中にある社員の居なくなった出張所でわずかな象牙
を回収すると霧の中をさらに奥地へと進むが、突然襲
って来た追跡者の槍を受けてムフムは死んでしまう。
ムフムの遺体を川に沈めたマーロウは、危険だから引
き返そうというド・グリフの意見を無視し船を進める
...というお話。ジョセフ・コンラッドの小説「闇の奥」
を、ニコラス・ローグ監督が"ほぼ"原作に忠実に映像
化したTVムービーであります(注1)。象の皮膚のアッ
プから徐々にその象が瀕死の状態である事が解る導入
部は思わせぶりタップリなのだが、船上で会話するマ
ーロウの場面の薄っぺらい感じでTVムービーだった
事を思い出させてくれる。全体的にボリューム不足で
ストーリーを追うのに精一杯な感じだし、過去や未来
の出来事をインサート・カットとして頻繁に使う編集
は最悪、映像的にはかなり頑張っている感じだが、演
出が平凡過ぎてサッパリ盛り上がらない。特に、川を
遡る部分の緊張感が無いため、簡単にカーツの元へた
どり着いてしまったような印象なのが残念であります。
肝心のカーツも、病に冒されながらもカリスマ性を保
っているという描写や雰囲気がまったくなく、衣装も
変な感じでジョン・マルコヴィッチの名演を殺してし
まっている。マーロウを演じたティム・ロスは演技も
存在感も悪くないのだが、行き当たりばったりの演出
のおかげでキャラクターが定まっていない感じになっ
てしまった...他の俳優さんたちも熱演しているだけに
残念であります。前半にマーロウが海運会社の指示で
医師の診断を受けるのだが、多数の野生動物の剥製が
置かれた先にある診療室で頭のサイズを測られたりす
るのはホントに意味不明...謎の医師を演じているのは
「スター・ウォーズ・シリーズ」でパルパティーン皇
帝を演じたイアン・マクダーミドであります。男ばか
りの登場人物の中でやたら目立っていたのが、カーツ
の女戦士(情婦?)を演じたイマンであります。彼女の存
在も思わせぶりタップリなのだが、役割や行動がまっ
たく意味不明なまま終わる。ラストには、カーツの婚
約者(キャンディス・ダリ ー)も登場するが、作品とし
て何の解決にもなっていないのにも脱力してしまいま
す。ニコラス・ローグ監督は「美しき冒険旅行(1971)」
「赤い影(1973)」「ジェラシー(1979)」等の作品でオ
ジさん世代を驚かせてくれた監督だったのに、このや
る気のない感じはいったいどーしたんでしょうねぇ。
多くの映画人が刺激され映画化にチャレンジして来た
原作を、こんな凡作にしてしまった罪は重い。

 

●スタッフ
監督:ニコラス・ローグ
製作:ボブ・クリスチャンセン、リュック・ローグ、
リック・ローゼンバーグ
原作:ジョセフ・コンラッド
脚本:ベネディクト・フィッツジェラルド
撮影:アンソニー・B・リッチモンド
音楽:スタンリー・マイヤーズ

 

●キャスト
ジョン・マルコヴィッチ、ティム・ロス、
アイザ ック・デ・バンコール、ジェームズ・フォックス、
モルテン・ファルダース、パトリック・ライカート、
アラン・コーデュナー、マイケル・フィッツジェラルド、
ジェフリー・ハッチングス、イマン、ピーター・ヴォーン、
ステファン・オックスレイ、ティモシー・ベイトソン、
イアン・マクダーミド、フィービー・ニコルズ、
キャンディス・ダリー

 

◎注1; ジョセフ・コンラッドの小説「闇の奥」は、
オーソン・ウェルズがCBSネットワークの「マーキ
ュリー劇場」でラジオ・ドラマとして放送し、映画
初監督作として準備していたが製作費がかかりすぎ
るという事で頓挫している。その後も多くの映画人
が映画化を試みるが実現には至っていなかった。ジ
ョン・ミリアスが設定を変えて脚色したフランシス・
フォード・コッポラの監督の「地獄の黙示録(1979)」
が初映画化になります。本作を観ると、コッポラさ
んは偉かったと再確認出来ます。2000年に滝沢聖峰
が舞台設定を第二次世界大戦末期のビルマに変更し、
任務を放棄しジャングルの奥に君臨する日本軍の大
佐の暗殺に関東軍の特務機関員が向かうという物語
に脚色され「Heart of Darkness」のタイトルで劇
画化されている...これは読んでみたいですな。

 

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闇の奥[原作本]

 

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