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2006-12-20 21:49:52

「郵便局と蛇」 /自然と不思議と

テーマ:国書刊行会 
 
A.E. コッパード, A.E. Coppard, 西崎 憲
郵便局と蛇  

目次
銀色のサーカス
郵便局と蛇
うすのろサイモン
若く美しい柳
辛子の野原
ポリー・モーガン
王女と太鼓
幼子は迷いけり
シオンへの行進

巻末の「A・E・コッパードについて」によると、コッパードの作品は、キリスト教に関わるもの、村を舞台にしたもの、恋愛小説的なもの、ファンタジー、の四種に大別できるそうである。で、この「郵便局と蛇」は、その四種の中からランダムに編まれたものだとのこと。

虎の毛皮を被り、ライオンと闘う羽目になった男の話(銀色のサーカス)。
いつか世を滅ぼすとの予言をされ、封じ込められて最後の審判の日の前日までは、沼から出られない王子の話(郵便局と蛇)。
天国の悦びを探しに行った、幸福だった事が生涯三度しかなかった男、うすのろサイモンの話(うすのろサイモン)。
とある街道に立っていた、若く優美な、けれど一人ぼっちだった柳の話(若く美しい柳)。
薪を拾いにやって来た三人の女たちの話(辛子の野原)。
アガサ伯母と幽霊との蜜月を壊してしまった、ポリーとジョニーの話(ポリー・モーガン)。
戴冠することのない王女に、王冠の代わりに渡された太鼓の話(王女と太鼓)。
エヴァとトムの息子、無気力なデヴィッドの子供時代から青年時代までの話(幼子は迷いけり)。
旅をするミカエルの話(シオンへの行進)。

こう羅列してみただけでも、かなりのバラエティに富んだ話だと思う。美しい自然描写も魅力的だし、「うすのろサイモン」における天国へのエレヴェーターなど、ほんのぽっちり挿入される超自然的なアイテムも魅力的。

この中で私が好きだったのは、「辛子の野原」、「王女の太鼓」、「シオンへの行進」の三編。

辛子の野原」は、薪を拾いにやって来た女たちが、野原の中でただ語り合うという話で、不思議な事などは何もない。過ぎ去った男を追憶する二人の女、最後に一人の女が見つける一シリング銅貨など、平凡な人生にも過去それなりの出来事があり、それら全てを内包して人生は続くんだな、と思った。最後には小さな希望が残っていたり、ね。

王女の太鼓」は、家出した孤児のちびのキンセラが出会った王女トゥルースの話。戴冠式は常に延期され、王冠の代わりを求めた王女に与えられたのが太鼓、というこの突拍子もなさがいいなぁ。王女の見張りをしているのは、巨人のハックボーンズだったりね。この太鼓は実に美しく、「太鼓の胴には惜しげもなく黄金が用いられ、皮はもっとも神聖な獣の皮。飾り鋲と楔は水晶と柘榴石。絹の吊革、翠色も鮮やかな房飾り、黒壇の枹が一対」付いているのだそうな。

シオンへの行進」は、天国への旅路ということなのかなぁ。巻末の「A・E・コッパードについて」にもあるような、コッパードのキリスト教への不信感を表しているような気もするお話。旅をするわたし(ミカエル)の相棒となったのは、絹の舌と鉄拳を併せ持つ修道士。修道士は罪を犯す男を打ち殺す・・・。更に彼らと共に歩むことになったのは、自分が見た夢のために祈るマリア。

これは私にとっては「魔法の本棚シリーズ」の最後の一冊だったんだけど、これもまた不思議な味わいのお話でした。思いっきり怪奇小説している「
赤い館 」を除いて、この「魔法の本棚シリーズ」は自然描写がどれもこれも素晴らしい物語でした。美しい自然の中にあってこそ、「魔法」が活きるのかしらん。 

コメント

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1 ■シリーズ読破!

とうとう最後の一冊ですね。僕以外で、このシリーズ全部読んだ人は、ネット上では初めて見ました(笑)。とてもいいシリーズだと思うんですが、いかんせんマニアックすぎ。もうちょっと娯楽性があってもよかったんじゃないかとは思います。
さて、コッパードの作品は、宗教的なものはやっぱり難しいけれど、ファンタジー系統の作品は素晴らしいです。どこかすっとぼけた味のある『郵便局と蛇』もいいけれど、個人的に大好きなのが『王女と太鼓』。童話的な道具たてだけれど、そこかしこの風変わりな設定が楽しいです。どこかもの悲しい結末も面白いですね。

2 ■>kazuouさん

そう、これでシリーズ制覇です!
全部読めたのは、kazuouさんのオススメと励まし(?)のお陰です。笑
ううむ、ネット上で、これ、全部読まれた方他にはいらっしゃらないのでしょうか。
純文学の匂いがするファンタジーという、何だかちょっと特殊なお話でしたよねえ。<マニアック
おー、コッパードでkazuouさんがお好きだったのは、やっぱり「王女と太鼓」だったのですねー! 結末は確かに物悲しいけれど、私もこれ、好きでした♪ 「郵便局と蛇」も、何だかキラキラした不思議なお話でしたねえ(そして、確かにすっとぼけていた!笑)。

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