「女の子ものがたり」/少女時代 | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

以降の更新は、http://tsuna11.blog70.fc2.com/で。

西原 理恵子
女の子ものがたり

事情があって、なつみの家族は父方の祖父の家に厄介になる事になる。
海の見える村から、山と田んぼと工場のある街へ。
それは朝から「しんぞうがふたふたする」ような一日だった。

なつみは、みさちゃんときいちゃんの二人と友達になる。みさちゃんのお母さんは、世界一怖そうなお母さんで、きいちゃんの家は半分がゴミで占められている。これは、経済的にも教育的にも、あまり恵まれた環境にいるとはいえなかった、三人の少女達の幼稚園から大人になるまでの物語。

amazonから引くと、こんな感じ。

出版社 / 著者からの内容紹介
サイバラの傑作「上京ものがたり」の続編!
「上京ものがたり」の女の子は、東京に出てくるまで、どんな子供時代を送ってきたのか?友達との交流を軸に、少女の成長を暖かく、そして限りなくシビアに見つめる、西原理恵子の自叙伝的作品第2弾!!

凄まじいばかりの閉塞感、小さな世界、どこにも行けない子どもたちが、くっきりと描き出されている。

六歳にして既に帰りたかったなつみの気持ち、我慢していたのにお弁当の時間に口を開けたら泣き出してしまったなつみ、「私はしあわせ 私はしあわせで かわいがられてる」と呪文を唱えるなつみ、「にゅうにゅうさん」なる仕組みを考え出すなつみ、子どものころの切ない気持ちがいっぱい詰まった本。自分にはここまで大変な経験があったわけではないけれど、子供の頃のこういう気持ちって、その大きさは違えど、みんな共通なのかなー。

中学校に行く頃には、近隣のおにいさん、おねえさんと同じく、三人はお約束の不良の世界へ。とはいえ、三人は「ヤンキーになってもさえないまんま」。
途中、一人、みさちゃんだけが早く大人にならなくてはならない出来事に遭ったりしながらも、三人は成長して行く。

高校を中退したなつみは父の死に出会う。死して初めて知る父の姿。

私は
なんにも見ていなかった。
なんにも聞いてなかった。
なんにも知ろうと
していなかった。

それは
恥ずかしいことだ。

何も見ず
何も聞かず
何も知ろうと
していないことは

とても
恥ずかしいことだ。

いつまでも、呪文を唱えているわけにはいかないのだ。

この街ではろくな女の人生は無い。夫に殴られたきいちゃんは頭蓋骨を骨折し、同棲中の男に殴られたみさちゃんは内臓破裂の重傷を負う。
そしてなつみは街を出た。

こんな女の
人生を
みるのは
もう
うんざりだ。

そして、なつみは「もうかえらない」。

子ども時代にそれぞれに満足出来ず、親友を探す瓶を海に流した三人。きいちゃんは汚いし、なっちゃんは気が小さい、みさちゃんは言ってはいけないことを言う。三人は、でも友達。大人になって、「もうこんなともだちは一生できない」と思うような友達。

そう長い漫画ではないのだけれど、重く心に残る物語。
西原さん独特の色使いが美しい。彼女が育った街は、ほんとは汚い街なのかもしれないけど、絵の中では、でも、綺麗な街。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。