真空中において、磁場がする熱力学的な仕事は0として、電場の熱力学的な仕事が
で与えられるとする。前回の式(1-4)
を用いて、電流密度を書き換えると、
となる。ここで、ベクトルの関係式から
を用いると、式(2-2)は
となる。電場のエネルギーと磁場のエネルギー
から、電磁場のエネルギー密度を
と定義すると、式(2-4)は
と書ける。この積分記号を外すと、輸送方程式
を得る。ここで、
と置いたこのSは、ポインティングベクトルと呼ばれる。この、熱力学的な仕事をする電磁場では、式(2-8)から電磁場を流体と見なして、J・Eの密度で系への吸い込みがあると言える。すなわち、この密度を体積で積分すると、力学的な運動量に等しいため、
と書ける。また、面Aに対するエネルギー保存則により、力学的エネルギーと場のエネルギーの和が
を満たす。この式の右辺は、式(2-7)からガウスの定理を用いて、
と書き直したものである。ここで、nは単位法線ベクトルである。よって、式(2-7)と式(2-11)を比較することで、Umechは式(2-10)を満たし、Ufieldは電磁場のエネルギー密度を体積で積分したものに一致する。これより、Ufieldは
と書ける。ここで、前回の式(1-16)
からvを光速度cとして、定数を置き換えた。
次に、電荷qを持つ荷電粒子に働くローレンツ力
から、ニュートンの第二法則より、力学的な運動量Pmechは
となる。vは電流Iの定義式
から電流密度に書き直した。この式(2-15)右辺の被積分関数の電荷密度に前回の式(1-1)
と、電流密度に上述の式(1-4)を用いると
と書ける。ここで、前回の式(1-3)
を用いると
であるから、この式(2-18)を用いて、さらにc2B(∇・B)=0を括弧内に加えると、式(2-17)は
となる。これが運動量であることから、式(2-15)を用いて整理すると
となる。この式(2-20)の左辺が、運動量の総和を表すのであれば、電磁場の運動量は
である。また式(2-20)から、座標軸をxα,α=1,2,3としてベクトルを展開すると、α=1の電場の項は
と書ける。同様に、α=2とα=3の場合も書き直してまとめると
となる。ここで、δαβはクロネッカーのデルタである。同様にして、磁場の項についてもまとめると、式(2-20)の右辺の被積分関数は
と書ける。このTαβは、マクスウェルの応力テンソルと呼ばれる。これを用いると式(2-20)は
と書き直せる。この式(2-25)の右辺に、ガウスの定理を用いると
となる。□
出典:JOHN DAVID JACKSON.CLASSICAL ELECTRODYNAMICS P258. Chapter6 Sect.6.7
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電磁場におけるエネルギー保存則と運動量保存則を導いた。前半に示した電磁場のエネルギー保存則は、ポインティングの定理とも呼ばれる。今回得たかった結果としては、最後の式(2-26)である。式の概形から、右辺の被積分関数である、マクスウェルの応力テンソルは運動量流束密度を表している。すなわちこれは、電磁場自体が運動量を生じ、圧力を与えられることが示される。このことは、熱放射の理論において、電磁波が壁面に圧力を及ぼせることを示したわけである。わざわざ今回のような煩雑な理論を用いて、応力テンソルの存在を示した理由としては、真空中の電磁波には質量がないため、単純な分子運動論のような理論では説明ができないためである。
余談として、マクスウェルの応力テンソルを行列で表現すると、
となる。
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