ブルース・オールマイティ(7点) | 日米映画批評 from Hollywood

ブルース・オールマイティ(7点)

採点:★★★★★★★☆☆☆
2003年12月26日(映画館)
主演:ジム・キャリー、モーガン・フリーマン
監督:トム・シャドヤック


 一週間だけ神様になれるとしたら?といういかにもジム・キャリーらしいテーマに加えて、神様がモーガン・フリーマンというキャスティングに魅かれた作品。


【一口コメント】
 人間とは神様に頼らなくても素晴らしい"奇跡"を起こせるんだということを教えてくれる作品です。


【ストーリー】
 人を笑わせる才能に恵まれたテレビレポーターのブルースは、まもなく引退するアンカーマンの後任になることを夢見ていた。だが、そのポストをライバルの同僚に奪われてしまった彼は、ショックから生放送中に禁止用語を口にしてしまい、局をクビになったあげく、人助けをしようとして不良にからまれるなど、どつぼにはまっていく。
 「あんたは職務怠慢だ!」と、神に怒りをぶつけるブルースの前に神が現れ、「文句を言うなら、お前が代わりにやってみろ」と、彼に神の力を授けて1週間のバカンスに出かけてしまう。スープを「十戒」の海のように割ってみたり、渋滞にはまリ、居並ぶ車を脇に寄せてスポーツカーで突っ走ったり、そのパワーの偉大さを知る。しかしパワーを使うにあたって、ルールが二つあった。一つは、自分が神であると人に言ってはならないこと。もう一つは、人の意志は操れないということ。
 神になった彼は、その力を使ってスクープをゲットする。そして職場復帰を果たし、アンカーマンの座を手に入れた彼だが、それと引き換えに恋人のグレースはブルースから離れていってしまう。
 更にブルースの頭の中に、人々の祈りの声が鳴り響くようになる。「祈りに答えなければ、どんどん声は大きくなる」と神に言われたブルースは、パソコンに祈りをダウンロードし、数百万の祈りすべてに対して「YES」の文字を打ち込んで行く。すると、たちまち株価が暴騰し、異常な数の宝クジが当たりるなど、不可思議な現象が起こる。
 そしていよいよ、アンカーマン・デビューの日がやって来た。ブルースにとっては、まさに一世一代の晴れ舞台だ。しかし、本番開始直後、隕石落下の後遺症によって電源がダウン。外では暴動が起こり、とても放送どころではなくなってしまう。
 すべての異変は、神のパワーを乱用した結果であり、その重大さに気づいたブルースは、グレースの祈りさえも一括「YES」にしていたことに気づく。

【感想】
 ジム・キャリーといえばコメディだが、この作品は笑いと感動の二部構成となっている。前半は役柄と同じく笑いの才に恵まれた彼が観客を大いに笑わせてくれる。彼の十八番とも言える顔芸(クリント・イーストウッドのモノマネはすごい!)やアメリカの古典的なコメディもところどころに散りばめられていて、前半は笑いで映画館が一杯だった。
 そして後半はジム・キャリーのもう一つの顔とも言える一見軽いけれども実は奥深い人間ドラマが繰り広げられる。神の力を持て余し、最愛の人が自分から離れていく恐怖と最愛の人に幸せになってほしいという祈り、この二つの感情が涙を誘い、この作品を一線を画したコメディ・ドラマとでも呼ぶべき作品になっている。

 作品の大きなテーマである自分が神様になれたら?という設定だが、もし神の力を持てたら何をするだろう?この作品では、最初はスープを「十戒」よろしく割って見せたり、女性のスカートをめくってみたり、渋滞を解消させたり、と誰もが密かに考えたことがあるであろうささやかな願いから、死体を発見したり、最終的には隕石を墜落させたり、といろいろな願いを叶えている。
 もし仮に自分が神様になったとしても最初はこの作品のようにささやかなことから始めるのではないだろうか?というのも本当に全知全能の力が身についたのか?と疑りから始まるから。そして力が確認できた時点で徐々に大きな願いを叶えていく。そういった意味でこの作品はリアリティがある。(神様になれるという設定自体はリアリティがないが・・・)
 そして最終的にはやはり人間には神様は務まらないということになるのだが、それでも人間には"奇跡"を起こす力があり、その"奇跡"によってブルースはハッピー・エンドを迎え、感動のフィナーレへと流れていくのです。

 また日本で神様といえば白い顎鬚をたくわえた白い衣装に身を包んだお爺さんをイメージする人が多いのではないだろうか?西洋でもギリシャ神話のゼウスに代表されるようい白いお爺さん的なイメージがあるのではないだろうか?
 しかしこの作品の神様は黒人のモーガン・フリーマン。正直彼が神様?という第一印象だったが、バケーションに出かけたり、普通の人間に力を分け与えたりする、この作品のような茶目っ気たっぷりの気まぐれな神様であれば、このキャスティングは素晴らしい選択だったのだと見終わって思った。

 「
トゥルーマン・ショー 」や「マジェスティック 」に引き続き、ドラマ作品に関するジム・キャリーの脚本選びの確かさを確信した作品となりました。