マジェスティック(6点) | 日米映画批評 from Hollywood

マジェスティック(6点)

採点:★★★★★★☆☆☆☆
2002年7月6日(映画館)
主演:ジム・キャリー
監督:フランク・ダラボン


 「ショーシャンクの空に 」「グリーン・マイル」の監督第3弾!自分にとってはそれだけで内容が感動ものであることがわかった。そして主演はジム・キャリー!こうなると「トゥルーマン・ショー 」で演じたコメディだけない演技派のジム・キャリーが期待できる。というわけで見る前からかなり期待の大きかった作品です。


【一口コメント】
 ダラボンらしい感動の作品です。


【ストーリー】
 50年代のハリウッド。脚本家のピーターは"赤狩り"(現代版魔女狩りのようなもの・・・)に遭い、審問会に招集される。恋人にもふられ、酔った状態で車を走らせていたが、事故を起こし、川に転落してしまう。
 意識が回復した彼は海岸に打ち上げられていた。老人に助けられた彼は田舎町ローソンに連れて行かれる。そこでは町の人がみな彼のことを知っていた。しかし自分が誰なのかわからない。事故が原因で記憶喪失になっていたのだ。ある町人が「ルークが帰ってきた!」と言い、戦争で9年間行方不明になっていた自分の息子だと言う。こうしてピーターはその老人、ハリー・トリンブルの息子としてローソンの町に住むことになった。
 ルークが戻ってきたということでローソンは活気付いた。アデルという女性が昔ルークの恋人だった。ルークと婚約していたアデルもピーターを見て感激する。アデルだけでなく、戦争で自分の息子を失った人が多いこの町の住人誰からも歓迎された。町の人たちがパーティーを開いてくれたり、アデルが思い出の場所に連れて行ってくれたりしたが、ピーターは脚本家だった頃の自分も、この町で過ごしたルークという自分の記憶も思い出せなかったが、ローソンの町で暮らすことに馴染むようになっていた。この辺りの描写がダラボンらしい。先の監督作品で見せた"人間同士が向き合う時の温かさ"というものが非常にうまく描かれている。ピアノやクラリネットなどの楽器を通して、昔の友情を観客に間接的に伝えたり、アデルとピーターの後を町人全員がつけていって、町人全員がこの2人の恋路を見守ろうとしているのを描いたり、時には殴り合いを通して男臭さを描いたり(これが最後の感動を呼ぶ伏線となっていたりもする)、人間関係の描き方がいかにもダラボンの作品だと感じさせられる。
 最愛の息子が帰ってきたということで、ハリーはかつて経営していた"マジェスティック"という映画館を再開しようと決意する。そしてピーターが中心となり、マジェスティックは昔の輝きを取り戻す。しかしこれがきっかけとなり、ピーターは過去の記憶を取り戻す。
 それと同じ頃、ピーターを召集した非米活動委員会の役員がピーターの居所を突き止め、ローソンの町に訪ねてきた。ルークと瓜二つではあるが、記憶を取り戻したピーターは、自分とルークは別人であることをアデルに打ち明ける。ショックを受けたアデルはその場から走り去る。そこに非米活動委員会の役員が現れ、ピーターが"赤狩り"の対象者であること、そしてルークではないことを町人に告げる。
 町人の信頼が失望に変わり、赤狩りの審問会にも呼び出され、ハリウッドに帰るピーターの元にアデルから贈り物が届いた。そこにはルークからアデルに宛てた手紙が挟まれていた。その贈り物とその手紙を読んだことでピーターは変わる。そしてピーターは審問会にのぞむ・・・。


【感想】
 ジム・キャリーといえば、コメディ映画を思い出す人が大半でしょう。実際「
マスク」、「ライアーライアー」、「マン・オン・ザ・ムーン」、「ジム・キャリーのエースにおまかせ」、「グリンチ」などの作品に主演し、3度ゴールデン・グローブ賞にノミネートされている。しかし「トゥルーマン・ショー 」で演じたようにシリアス路線の演技もできる。自分はこちらの路線の彼が好きであり、この作品でますます好きになった。記憶を無くし戸惑う顔、アデルと恋に落ちた時の幸せそうな顔、審問会で主張する男の顔、いろいろな"顔"を見せてくれる。その中でも一番魅せられた演技が審問会での演技なのだが、まだ見ていない人のために、内容は伏せておきます。
 作品のタイトルにもなっている映画館"マジェスティック"もこの作品の重要な役割を担っている。ルークの父とピーターを固い絆で結びつけたのもそうだし、本当の意味でローソンに溶け込んだのも"マジェスティック"のおかげ。そして記憶を取り戻すきっかけになったのも"マジェスティック"である映画が上映されたため。そしてこの映画に感情移入したのが"マジェスティック"を改築していく場面だった。改築を通して町の人と触れ合うことが多くなり、町議会に掛け合ったりもした。町役場の地下に眠っていた、国から送られた戦死者のための銅像を陽の当たる場所に設置したりもした。こういった他愛もない描写によって映画の中に引き込まれていった。

 ・・・審問会を終えた後、感動のラスト・シーンが待っている。「グリーン・マイル」の涙を誘う感動ではなく、「ショーシャンクの空に 」のような心に響く感動です。