** スーちゃんが産まれた日 ** | Tortue topico*

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**アンティークに魅せられて**
いい事も 悪い事も 全て人生…
時が経てば味になる。
そんな風に生きられたらいいなぁ
お空に還した我が子の為に 
生きる意味を見つけながら
暮らしていきたい

好きなもの色々ひとりごと。。。

腕に抱いたスーちゃん。


軽くて、愛らしくて、たまらなく愛おしくてギューーって抱き締めたかったけど、力を込めると壊れちゃいそうなほど小さいからやめておいた。


小さいけれど、世界で一番可愛い子。

守ってあげられなくてごめんね。


どうして一人で逝かせてしまったのだろう。


心細くはなかったろうか。

ママと離れて寂しがってるかもしれない。

そんな風に思うばかり。




「可愛すぎるから、きっと神様にも愛されて連れてかれたんだ。

私達に授けるのが惜しくなったのかな。本物の天使になっちゃったんだね」


ぽつり、そんな事をつぶやく。

そんな事を言っても気休めにしかならないけれど、

何か救いが欲しかった。




産まれたての愛しい我が子との対面はこんなはずじゃなかった。

想像していた幸せな場面とは程遠い所にいる私達。



産んで数時間経つけど、まだ信じたくないよ。

この腕に抱いていてさえ受け入れたくない現実です。



看護師が言ってくれたように

スーちゃんは本当に安らかないいお顔をしてる。

天使の様な寝顔。

だけどね、息をしていないの。

心臓が動いていないの。


こんなことがあっていいのだろうか。。。



両家にとって初孫となるスーちゃん。

どんなにか、どんなにか、心待ちにしていたことか。

みんなが、スーちゃんを待っていたよ。



ベッドの背もたれに寄りかかりながら、スーちゃんの顔ばかり見ちゃう。

夫も言葉少なだけれど、しっかり我が子を目に焼きつけようとしていた。


涙目でカメラをこちらに向ける夫。


悲しいのにスーちゃんを抱っこ出来て嬉しい気持ち、なんだか言いようのないゴチャまぜの気持ちだ。

こんな気持ちで写真だなんて、どんな顔すりゃいいのだろう。

撮った写真をみると、やっぱり。

産後の疲れた顔、泣きすぎて鼻が赤く、うっすら笑みを浮かべていた。


スーちゃんとのせっかくの写真撮影だもんね。

ママ本当はもっといい顔で映りたかったな。


今度は夫も加わって、家族写真。

3人家族だね。



私の父も抱っこさせてと言う。

初孫だもんね。


元々、涙線の弱い父。

本当に孫の誕生が楽しみだったのに、こんな形で抱っこだなんてね。

悲しいね。





こんなに悲しい事が世の中にあるのかって思う。


今まで生きてきた中で最も最悪の悲しい出来事。


我が子を亡くすという最大の悲しみが突然襲ってきた。


耐えられない。






神様はどうして こんなむごい事をするのでしょうか・・・


今も、スーちゃんの写真を眺めては そんな事を考えてしまいます。





スーちゃんの写真を何枚か撮って、しばらくしてから病棟へ移されることになった。

私の状況を考えてか個室を勧めてくれたので、そうすることにした。





ストレッチャーに乗せられ、家族と一緒に病棟へ移動。

赤ちゃんはまた後で連れてきてもらえるとの事だった。



個室に着いてから私の処置をしてもらっている間は家族にはラウンジで待機していてもらう。

おっぱいが張って、母乳が出ない様に処方された薬も飲んだ。

スーちゃんに飲ませたかったミルクを出しちゃいけない。

むなしくなって、すごく切なかった。


導尿のカテーテルを抜いてもらい、分娩着から入院着に着替えさせてもらった。


窓の外は雨が降っている。

今日は朝から雨だったようだ。

悲しい1日を物語っているような気がした。


ほどなくして家族がまた揃い、部屋で過ごしていた。

昼食が出され、食欲はないからほとんどを夫が食べた。


夫以外は外に食事に出かけた。

しばらく夫婦2人の時間を持てた。


義母や母や父が戻って来てから、どれくらい時間が経っただろうか、会話のすべては今となってはあまり覚えていない。


前々日からろくに寝ていない私に 少し休むように言ってくれるのだけれど、眠れるはずがない。

身体は疲れているんだけど眠れないの。

スーちゃんを想うと涙ばかりが流れて嗚咽で息も苦しくなる。


身体から水分もだいぶ抜けていた。

カラカラしている。

少し水分を取るようにした。



夫だけ呼ばれて部屋を出る。

しばらく戻ってこない。



戻ってから聞くと、「死産届」を書いていたと。

それと、火葬の話。


仕方がないのは分かっているけど、

まだ、我が子の死を受け止めきれていないのに、随分と酷なことをさせる。

夫もつらいはずなのに。


家族で話し合って、どうするか決めてほしいという事だった。


病院から直接、一緒に斎場へ行くか。

それとも、一度赤ちゃんを自宅に連れ帰ってから斎場へ自分たちで運ぶか、というような選択肢らしかった。


結局、翌日に決まった私の退院に合わせて、病院側の提携している斎場を紹介してもらう事にした。

実家と病院の中間に位置する斎場だった。


仕方ないとは言え、あまりに早い別れの決定に戸惑うばかり。

本音は、もっとスーちゃんと一緒に居たい。

ずっと手元においておきたい、離れたくない。

どうして火葬なんてできるだろう。



無垢で儚げな小さいあの子を焼くなんて、出来ないよ。



今日生まれて、明日お別れなんて・・・

あの子の一生が私のお腹の中だけだなんて・・・


もっとあの子と繋がりを持ちたいのに、私の想いなんて関係なく、現実は淡々と過ぎてゆく気がした。

現実が怖い。






火葬が翌日に決まってしまったので、夫と義母は一度、必要な物を用意するため自宅へ帰る事になった。

私の両親は、もうしばらく私に付き添ってくれるという。


ナースコールをして、赤ちゃんに会いたいとお願いする。

これ以上、後悔したくないから、

あの子にしてあげられる事、考え付く事をすべてしてあげたい。

そして私もまた、自分のしたい事をしたいと思った。

だから、「赤ちゃんに会いたくなったらいつでも・・・」という病院の申し出が有難かった。


少し待つと部屋まで連れて来てくれた。


何度見ても可愛い。





スーちゃん、パパは一旦帰っちゃったけど、明日また会いに来るからね。

今日はママといようね。


再び抱っこする。


何かと引き換えにこの子を取り戻せるならそうしたい。

この子の為なら・・・と、心からそう思う。

報われることのない願いは一生続くだろう。


なぜ?

どうして?

という思いもまた一生消えないだろう。


この子は、どうして死産という運命を背負ったのか。

いつか私に理解できる日が来るのでしょうか。




スーちゃんに声をかけながら抱っこ。

両親もスーちゃんを見つめては泣けてしまうみたい。

可愛いだけに悔しい。


スーちゃんとの触れ合いはどれだけ時間があっても足りないくらい。

本当だったら11月には赤ちゃんを迎えるという希望に満ちた未来を夢見ていたけど、

いきなり潰えた今、この触れ合いだけが私が母であったという証。


両親も自宅に帰って行ったあと、私とスーちゃんは2人きりで過ごした。




病院の夕食が始まる頃、スーちゃんを再び預けることにした。



配膳された病院食。

ここはお肉やお魚を使わない菜卵食。

身体に優しい食事だと思う。

この日はロールキャベツ。


だけど食欲がない。

食べたくない。

けれど、処方されたいくつかの薬を飲むため少しだけでも食べたほうがいいだろうなと思い箸をつける。


口に運ぶと自然と涙が出た。

泣きながら一口、二口と食べる。

それ以上はもう食べられない。

スーちゃんをあんな目に遭わせておきながら、私だけいつもと同じように食べるとか眠るとか許されないような気がしていた。


あの子の事で胸がいっぱい。