** 死産という現実 ** | Tortue topico*

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いい事も 悪い事も 全て人生…
時が経てば味になる。
そんな風に生きられたらいいなぁ
お空に還した我が子の為に 
生きる意味を見つけながら
暮らしていきたい

好きなもの色々ひとりごと。。。

6月16日 午前7時49分


男の子を出産した。

死産でした。




分娩室では余裕がなくて、産まれたばかりの我が子を見ることが出来なかったけれど、後陣痛があり確かに産んだんだ、というぼんやりした感覚だけが残っている。


分娩予備室へ戻されて少ししたら両親が来てくれた。


何も言えない。。。

私も両親もまだ信じられないからだ。



身体が異常に熱くて、熱を測ったら39.1℃

部屋の温度を下げてもらい、アイスノンを身体に充てる。


しばらくは発熱したままボーっとしていた。

夢なら覚めてほしい。きっと悪い夢だ。

赤ちゃんはどこに行ったの?



部屋に、赤ちゃんを取り上げてくれた先生が来て両親に赤ちゃんの状態を説明している。

目を閉じて私も話を聞いた。



「胎盤の状態もキレイでしたし、特に二分脊椎や骨などの異常、内臓の障害、そのほか奇形などは見られませんでした」


やっぱり・・・

あの子は健康だった。

あの子は異常なんてなかった。

なのに、なんで。



羊水検査のせいだ。

検査直後から痛みだしたお腹。



あの時、あの子は子宮に入って来た針に反応して、手を伸ばしてきたの。

針を触ろうとしていた。

エコーでその光景を見ていたから危険じゃないだろうかと心配して先生に聞いたけど、向こうから寄ってくるのは防げないからといって検査は続行。

確かにこれに関しては問題ない事なのだろう。

その針を触ろうとする仕草さえ私には可愛いと思えたし。


だけど、今から思えばあれは


「僕は異常なんてないよ。羊水検査なんて必要ないよ」


というメッセージだったんじゃないかって思えてならない。

後悔ばかりが渦巻く。


検査なんて受けなきゃよかった。

マーカーテストの数値に振り回されて動揺して、自分の子を信じてあげられなかったんだ。

不安の方が大きくて。。。

お腹が痛くなった時、なんで病院に行かなかったのか。

どうして、どうして・・・


私のせい。

とにかく、スーちゃんは何も問題なかったの。いい子だったよ。

ママが守れなかったからだね。




両親に頼んで夫を呼んでもらったけど、川崎からだと時間がかかるだろうな。

結局11時ごろ到着した。


義母と一緒に病院に来てくれた夫の顔を見たら、


涙が溢れて止まらなかった。

夫も朝早くに呼ばれて実感はないだろう。

前日の入院の知らせから早すぎる最悪の展開、一晩の間に起きた信じられない悪夢に泣いていた。


お義母さんが私の手を握ってくれた。


「ごめんなさい。。。」

涙と一緒に、こんな言葉しか出てこない。


一生懸命かけてくれる慰めの言葉もあまり入ってこない。

とにかく申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



夫もただ泣いていた。

私の手を握って、声を殺して泣いていた。

二人で泣いた。


「ごめんなさい。赤ちゃん守れなかった・・・」



彼は首を横に振ってくれたけど、

それでも自分がしてきたことに重大な間違いがなかったか自信がなかった。

私のせいだ。

そんな思いに押しつぶされていた。



だって、あの子は何にも悪くない。

直前まで心臓だって動いていたんだから。




途中、看護師が入って来て

「赤ちゃんに会われますか?」


何よりもすぐに会いたいと思っていた。

「はい」


早くあの子に会いたい。会いたい。会いたい。

さっき、産まれてきた感触を覚えている。


「では後で連れてきますね」



そうして一旦出ていく看護師。

すぐ戻ってきたが、今度は私の処置があるとのことで家族が部屋から出される。


看護師が言ってくれた。


「とっても可愛い赤ちゃんですよ。お鼻高く鼻筋がスーッと通っていてキレイなお顔ですよ。ご主人にはまだお会いしてないから分からないけど、きっとお鼻はお母さん似かな。」


似ていると言われた鼻の奥が熱くなった。

とめどなく涙が溢れてしまって声を出して泣いた。



看護師は続ける。


「いいの。いっぱい悲しんであげて。

赤ちゃんのお顔を見ると本当に幸せそうなお顔してるよ。

お腹の中に居る時の状態で赤ちゃんの顔を見ると分かるの。

あなたの赤ちゃんは苦しまなかった。

本当にそういうお顔してるからね。

ちょっと早くママに会いたくなっちゃったのかな。

でもね、大丈夫。きっと帰って来てくれるよ。

今は無理することない。無理して我慢することないよ。

いっぱい泣いて、赤ちゃんの為に悲しんであげて。

自分を責めないでね。

大丈夫、赤ちゃんきっと帰って来てくれるから」


身の回りの処置をしてくれながら、看護師は優しい言葉を掛けてくれた。


初めて家族以外の人にすがるようにおいおい泣いた。

どれだけ泣いても、我が子は還ってこない。。。

それが現実。

深い悲しみだけがそこにあった。




家族が揃ったところで主治医から夫へ話があるとのことで夫だけ部屋から出る。



しばらくすると戻って来た。

後で聞いた話では、夫はこの時、誰より先に赤ちゃんと対面していたのだった。



主治医に連れられ

私達の赤ちゃんがキャスターがついた新生児のベッドに寝かされてやってきた。

お顔だけ出して身体は丁寧にタオルに包まれている。

タオルがとても大きく感じる。



「かわいい・・・」

私の第一声は確かこうだった。

涙でかすむ我が子。


だけど良く見えるよ。

あぁ本当に可愛い。


一目見てからは、もう愛情が止まらない。

愛しくて愛しくてたまらない。

家族みんながそうだった。

涙が出るけど、同時に笑顔にもなってしまうくらい。



先生が包まっているタオルを開いてくれた。

その下にはガーゼがお布団のように掛けられていたけど、それも外してくれて。

足の先まで良く見える。



なんて小さい。

でも立派に人の形。

ちゃんと人の赤ちゃん。

私の赤ちゃん。


よーくよーく見せてもらう。


なんて可愛いのだろう。

どうしてこんな可愛い子を神様は連れて行ってしまったのだろう。



頭の形が本当にキレイ。

髪の毛はまだない。


足の指もちゃんと5本

手の指もちゃんと5本


お鼻は・・・本当だ、赤ちゃんなのに高いお鼻。私似かしら?

お口は結ばれているけどニコっと笑っているようだ。


お目目はまぶたが出来ているね。

開いてはいないが、透けて見える瞳が大きいのが分かる。

私も、夫も目はクリっとしているから、どちらに似ても大きいお目目の子だと思っていたよ。


頼りなげな小さな肩。そこから伸びる細い腕。

だけど骨がしっかり出来あがっているのがママには分かるよ。

お肉がまだついてないから、肋骨が浮かんでいる。

おへそには、当たり前だけど、へその緒がしっかりあって、先っぽはガーゼが貼ってあったけど。

私の小指の半分くらいの細さのへその緒だけど、スーちゃんとママはここで繋がっていたのね。

ずっと一緒だったね。


ちいちゃいおちんちん。

ママは妊娠してすぐ男の子だってなんとなく感じていたよ。

パパだって夢を見たんだよ。

ぱっちりお目目の可愛い男の子の夢。

ひょっとしたらスーちゃんが私達に先に知らせてくれていたのかな。



大腿骨だってしっかりあって、すらっと伸びた細っこい可愛いあんよ。

つま先にも指先にもイッチョ前に爪だって生えてたね。


すごいね、スーちゃん。

いつの間に、こんなに大きく育っていたの?


後はお腹の中で残りの日々、もっと筋肉やお肉が付いて、身体の色んな機能が逞しく成長していくだけだったのに。



主治医も言う。

「特に異常は見当たりませんでした」

「抱っこしますか?」


はい。と答えるとタオルを包み直してくれて

そっと 私に抱かせてくれた。


残った看護師が

「どうぞゆっくり過ごして下さい。写真も撮って大丈夫ですよ」

そう言って部屋を出て行った。



部屋にいた家族が

わぁ、と感嘆して近づく。

みんなして「可愛い、可愛い」と愛情たっぷりにスーちゃんを囲んだ。



こうしていると、スーちゃんは生きているんじゃないかと錯覚する。