クリストフ・マルケの「大津絵 民衆的風刺の世界」が届いた! | とんとん・にっき

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アマゾンに頼んであった、クリストフ・マルケの「大津絵 民衆的風刺の世界」(角川ソフィア文庫:平成28年7月25日初版発行)が届きました。小さな文庫本ですが、まだざっと斜め読みしただけです。以下に簡単に紹介しておきます。


僕が最初に「大津絵」と出会ったのは、日本民芸館の「日本の民画」大津絵と泥絵」展でした。大津絵の傑作「鬼の行水」や「藤娘」を初めて知りました。

日本民芸館で「日本の民画 大津絵と泥絵」展を観た!


その後、どういうわけか恵比寿の日仏会館へ出入りするようになり、日仏会館フランス国立日本研究センターの所長がクリストフ・マルケさんであることを知りました。「河鍋暁斎」に関するマルケさんの講演会が最初でしたが、次に「大津絵」のマルケさんの「アンドレ・ルロワ=グーラン」の講演会や、マルケさんの企画した「大津絵」の国際シンポジウムに出席することができました。3人の講師によるシンポジウムで僕の「大津絵」の理解が一気に進みました。

「大津絵にみる庶民信仰の造形 アンドレ・ルロワ=グーランの研究をふりかえって」!

日仏会館・国際シンポジウム「大津絵を読み解く」に参加した!


マルケさんは、8月をもって日本での勤務を終えて、フランスに帰国されるそうで、残念でなりません。



本の裏表紙には、以下のようにあります。

江戸時代、東海道の土産物として流行した庶民の絵画、大津絵。鬼が念仏を唱え、神々が相撲をとり、天狗と象が鼻を競う・・・。奇想天外な世界をいきいきと描くその伝統は、いかに人気を博し、そして消えてしまったのか。多彩な78種の画題をオールカラーで掲載し、愛すべきヘタウマに込められた風刺と諧謔の精神を解き明かす。柳宗悦や梅原龍三郎、河鍋暁斎、ピカソさえも魅了された大津絵の全貌が文庫オリジナルで今よみがえる。


クリストフ・マルケ:

1965年、フランス生まれ。1989年から92年に東京大学留学後、浅井忠と明治美術史についての研究でフランス国立東洋言語文化大学(INALCO)より博士号取得。現在、同大学教授。2011年から16年まで日仏会館フランス国立日本研究センター所長。専攻は日本近世・近代美術史と出版文化史。1999年にジャポニズム学会賞、2016年に日仏図書館情報学会賞を受賞。編著に「日本の文字文化を探る 日仏の視点から」「テキストとイメージを編む 出版文化の日仏交流」(勉誠出版)などがあるほか、フランスで歌麿、鍬形蕙斎、北斎、中村芳中、河鍋暁斎など、江戸・明治の画譜の翻訳復刻を多数出版している。


目次

はじめに

第一章 江戸の庶民絵画、大津絵の歴史

第二章 楠瀬日年の「大津絵」

第三章 楠瀬日年と大津絵―再発見と創作

おわりに

注釈

参考文献


朝日新聞:2016年8月14日「読書欄」

「大津絵 民衆的風刺の世界」は、朝日新聞読者欄、「オススメ 編集部から」に比較的大きく取り上げられました。江戸時代の庶民に浮世絵とともに人気があった民画。浮世絵がその後、西洋のジャポニズムの波にものって「芸術」となったのに対して、職人たちによる民画は「作品」と見られないまま忘れられてしまった。しかし「江戸の文化が生んだ『ゆるキャラ』ともいえ」る素朴で楽しい絵には、ピカソやミロも関心を寄せたという。


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朝日新聞:2016年8月21日「日曜に想う」
クリストフ・マルケさんは、江戸時代に守り札などに使われた民画を扱った「大津絵 民衆的風刺の世界」を出版した。大津絵がかつて浮世絵と人気を競っていたこと、無名の職人の手になるための芸術作品として残りにくかったこと、生活や道徳を鬼や七福神の滑稽な所作に託して伝えていること…。「民間信仰や庶民文化を理解するうえでも、内外でもっと広く知られるべきです」と、その意義を力説します。


渥美清さんが亡くなって20年、NHKBSで放映されていた「男はつらいよ」第一作を(再び)観ました。また、葛飾柴又の帝釈天にも(再び)行ってきました。山田洋次監督の作品も再評価されています。仏ロピニオン紙記者のクロード・ルブランさんは、来春から仏中部の保養地ビシーで日本映画祭を定期的に開きたいと考えている。初回は山田洋次監督のさまざまな作品に焦点を当てたいという。「寅さんが日本人にしかわからないとか、その心情がとても日本的だとか思うのは日本人だけだからね」ともいう。


2人とも、もどかしそう。日本文化が十分に知られていないこと以上に、その価値を自分でまだよくわかっていないことに、それを自分で外に発信しないことに。「せっかく魅力を感じている人が外国にたくさんいるのに、もたもたしていると、この波がそのうち引いてしまわないか心配」。タイトルは「寅さんは旅に出てこそ」。外の世界と出会おうとしないまま自画像に酔う・・・。葛飾柴又に閉じこもったままではフーテンの寅さんにはならない。と、大野博人はいう。


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「日仏会館」ホームページ


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