江戸東京博物館で「北斎」展を観る! | とんとん・にっき

江戸東京博物館で「北斎」展を観る!



「北斎」展を観ての帰り、地下鉄の「両国」駅で掲示してあった温泉の広告を見たら「北斎通り」とありました。帰ってから調べてみると、「北斎通り」とは両国から錦糸町まで約1キロ、バス停毎に「葛飾北斎ギャラリー」があり、北斎の絵を展示してあるという。途中に「葛飾北斎誕生の碑」があるそうです。そして温泉はというと、天然温泉「御谷湯」という銭湯で、厳選は黒湯だそうです。北斎はこの辺で生まれた人だったのかと、改めて驚いた、というか、感心しました。さすがは「江戸博」、まさに地元、「北斎」展を開くのには、最も適しているというわけです。



東京・両国の江戸東京博物館で開催されている「北斎」展へ行ってきました。副題には「ヨーロッパを魅了した江戸の絵師」とあります。北斎は1760年に生まれ、1849年に亡くなります。日本の画家では最も早く西洋画法に習熟し、独自の世界を作り上げた人物といわれています。文政年間(1818-1830)、長崎のオランダ商館長は、4年ごとの江戸参府のたびに、北斎のもとを訪れ、人々の暮らしぶりを描いた作品を依頼していたこと、これについては僕は初耳でした。いわば「直取引」です。こうした直取引で海外に流出した北斎や弟子たちの肉筆画は、オランダ国立民族学博物館と、フランス国立図書館に所蔵されているという。ともに貴重な作品ですが、特にオランダのものは、あのシーボルトが持ち帰った膨大なコレクションだそうです。


昨年は、「ギメ東洋美術館所蔵 浮世絵名品展」とか、「ミネアポリス美術館浮世絵コレクション展」を観ました。ちょっと古いですが、2002年に仙台市博物館で観た「キヨッソーネ東洋美術館所蔵浮世絵展」もありました。まさに海外からの里帰り展、ですね。今ちょうど、名古屋ボストン美術館で「ボストン美術館浮世絵名品展」が開催されているそうです。2005年には国立博物館で「北斎展」が開催されましたが、僕は行ってないようです。そういえば、信州・小布施の「北斎館」、10年ほど前に行きました。図録買ったような気がしますが、見つかりません。


話は違いますが、最近、谷川正己著「フランク・ロイド・ライトの日本 浮世絵に魅せられたもう一つの顔」(光文社新書)を読みました。アメリカで始めてシカゴ美術館で「広重展」が開催されましたが、そのほとんどはライトのコレクションだったそうです。1905年に初来日し、浮世絵蒐集の成果を上げて帰国した直後の1906年です。1908年、再びシカゴ美術館で「日本の版画展」が開催され、それにもライトのコレクションが出されたという。フランク・ロイド・ライトといえば、帝国ホテルの設計者として有名ですが、実はその前に、浮世絵蒐集家としての顔があり、そのために来日していたんですね。他にも多くの国々に、浮世絵や肉筆画がたくさん流出しているんでしょうね。僕は、その辺りはよく知りません。








そこで問題ですが、太田美術館や出光美術館で浮世絵や肉筆画を観るとき、やたらと照度を落としてあります。もちろん、そこには「作品保護のため」などと但し書きがありますが、あれってどうなのかなと思うことがあります。国内に所蔵されている浮世絵や肉筆画は、なぜかうすぼけた作品が多い。色が飛んじゃっているんじゃないかと思うんですね。原画はもっと派手派手だったと思うんです。実は、「ミネアポリス美術館浮世絵コレクション展」のときに、皆さんが指摘していたように、色が鮮やかで、いま刷り上がったようにも見えるほどでした。いま「キヨッソーネ」を見直してみると、やはり色が鮮やかでどぎつい。今回、北斎が海外の要求に応えて作った作品も、はっきり言えばちょっとどぎつい。これはどういうふうに解釈すればよいのか。東大寺も法隆寺も、元々は原色で塗りたくってあったそうです。日本にある浮世絵や肉筆画は、保存状態が悪くてうすぼけてきたのか、もともとそうなのか。海外にあるものは、収蔵庫に眠っていたから、色がさめていなくて、色鮮やかなのか。その辺り、識者の考えを聞きたい、と、素人の僕はは思うのであります。


まあ、それはそれとして、今回の「北斎」展、第一部は「北斎とシーボルト」と名付けられていますが、ヨーロッパのオランダとフランス、2個所に分蔵されている作品を、同時に里帰りさせたという画期的な企画です。第二部は「多彩な北斎の芸術世界」、シーボルトを引きつけ世界を魅了した北斎の多彩な仕事を紹介しています。守備範囲、幅が広いですね。そういえば、北斎だけが描いたのではなく、弟子たちと共に描いたのか「北斎工房」とされています。こういうところは、ルネサンスの工房並みに、親方と弟子、システマチックに分業化されていたんでしょう。そうして「知らなかった北斎」と「知っている北斎」、このふたつの視点、これって素晴らしいキャッチコピーだと思うのですが、北斎の画業全体に迫るという展覧会です。刷りが違うものを同時に並べるとか、出来上がりと下絵を並べるとか、珍しい試みもあります。


細かいことを言い出したらキリがありません。なにしろ相手は「葛飾北斎」なのですから。前期、後期にわかれていて、絵本、読本、漫画、等々、合わせると238点という膨大な作品です。で、ちょいと気になった作品をピックアップして、下に載せておきます。ねっ、上の5枚は、ちょっとどぎついでしょ。「花魁と禿」を観ると、まるで靉嘔(アイ・オー)のレインボーですよ。北斎の「美人画」、どれを取ってもいいですね。ご存じ「冨嶽三十六景」は40点ほどありました。3万点もの作品を遺した北斎ですが、現存する屏風絵は10点ほどと少ない。「四季耕作図屏風」は、お雇い外国人の建築家、ジョサイア・コンドルの旧蔵品で、その娘がデンマークで手放して以来、行方不明になっていた作品です。北斎の「八十三歳自画像」も載せておきます。つい先日亡くなりました片岡球子の「面構・葛飾北斎」も併せて。滅多に買わない「図録」を、今回は買っちゃいましたよ。
















ho22 「北斎」展 

図録 313ページ
2500円










ho19 「北斎漫画展」

平成20年1月2日~2月11日

江戸東京博物館

常設展示室5会第2企画展示室










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「信州・小布施 北斎と栗の里」


信州の観光研究会

定価:900円

発行:平成2年2月28日


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「北斎館」

案内チラシ

入館券









江戸東京博物館


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