「伊東豊雄 建築|新しいリアル」展を観る! | とんとん・にっき

「伊東豊雄 建築|新しいリアル」展を観る!


京王線初台駅の「東京オペラシティ・アートギャラリー」で開催されている「伊東豊雄 建築|新しいリアル」展へ行ってきました。実は、京王井の頭線の明大前で鈍行に乗り換えたら、あれあれという間に初台を通り越して新宿駅へ着いてしまいました。駅員に聞いて、京王新線の新宿駅まで延々と歩いて、また初台へと向かいました。なにしろ「東京オペラシティ」は、アクセスが悪いのが玉に瑕です。ここのアートギャラリーは、前に来たのは「ダニエル・リベスキンド」展だったので久しぶりです。その時は車で来ましたが、やはり駐車場の入り口で迷った記憶があります。


最初の部屋には、アプローチを含んだ「台中メトロポリタン・オペラハウス」の巨大な模型が置かれています。コンペの応募案の図面も展示してあります。メビウスの輪のような、今までにまったく見たことのない、内部と外部が絡み合った立体曲面の空間です。人体を切断した断面を見ているような、不思議な感覚に襲われます。次のやや小さな部屋は、06年に完成した岐阜県各務原市の市営斎場「瞑想の森」の天井の、原寸大の曲面を模した床が一面に張りつめられています。そして次の大きな部屋は、「せんだいメディアテーク」以降の7つの作品が、波打つ白い床面の上に置かれています。靴を脱いで、素足で歩き回ります。鉄や木の実際の建築と同じ素材を使った大型の模型や、CG画像、施工中の建築現場の映像など、様々な角度で伊東の建築を照らし出しています。表参道の「TOD´S 」や銀座の「御木本」も見られます。最新作、杉並区の高円寺会館の模型もありました。次の廊下状の部屋では、菊竹清訓事務所を独立して以降、設計事務所開設後の伊東豊雄のすべての作品が、所員数と共に掲示してあります。


チラシの解説によると、均質なグリッド[格子]の美学を追究し、合理性と抽象性のもとに多様性をそぎ落としてきたモダニズム建築を、伊東豊雄は、より複雑で豊かな秩序を内包する「エマージング・グリッド[生成するグリッド]」という概念をもって超えようとしています。規則的で無機質な空間から、複雑で有機的な空間へ、建築を自然のシステムに近づけ、建築と人間との関係に無限の可能性を与えるもので、それが伊東の目指す「新しいリアル」のようです。



知人によると、毎週土曜日12時から行われていた、伊東事務所の所員による「ウィークエンド・ギャラリー・トーク」が評判がよかったそうで、人数制限を行った場合もあったようです。波打つ床の部屋には、武満徹が作曲した井上陽水夫人である石川セリの歌がBGMとして流されていたということですが、聞き漏らしてしまいました。僕が観ていたときは入場者が少なく、学生らしき人が数人だけでした。身体と知覚に直接働きかけるこの展示空間であり、新しいデザインの可能性を体験するには、是非とも会場に足を運ぶべき展覧会だと思いました。



東京オペラシティ・アートギャラリー


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