『つながれない若者たち』 | トナカイの独り言

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 昨晩、NHKの首都圏スペシャルで 『つながれない若者たち』 を観ました。
 こういう番組ができることを嬉しく思いながらも、いくつか反発を感じたり、意見を言いたくなる場面がありました。

 番組の内容は、「今から十八年後の2030年を、今の若者たちはどう向かえるのだろう」 とでも説明したらいいでしょうか?

 今から十八年後、日本人の三人に一人は高齢者となって、一人きりで暮らす世帯も四割近くに達するそうです。財政赤字の問題、経済の沈滞、税金の高騰、社会保障と、目を覆いたくなるような未来像ばかりが、わたしたちに提示されています。
 そんな中、若者とその親の年代による対立に、番組の焦点が当てられた時間がありました。そこで、たくさんの若者が親の世代への不満を噴出させ、同時に親たちも子どもたちへの不満をぶつけていました。

 果たして、そうした対立軸のなかで、どこまで真理に迫り、現状を改善できるのか、わたしには不安が残りました。

 第二次世界大戦で負けた日本は、アメリカに占領されます。
 占領したアメリカは、いかにして日本を弱小国にするのかに全霊を捧げます。
 日本国民の根性をどうしたら抜くことができるかを、科学的に研究し、マスコミと教育制度を使って着々と実行していきます。戦勝国としてごくあたりまえのことをしたと云えます。
 こうした方針は冷戦によって、多少の方向転換を余儀なくされますが、基本路線は変わっていません。
 つまり、戦後の日本では、まず自尊心を持たず、自己嫌悪を植え付けられた日本人が育てられたのです。
 次に、朝鮮戦争と冷戦により、日本経済の活性化という目標を選択したアメリカと日本は、大量生産大量消費にふさわしい人間を、こちらも大量生産するのです。その結果、「自分で考えず、上からの命令に服従し、よく働く人間」 の育成に力が注がれました。

 その世代が、番組の両親の世代を形作っています。
 自ら疑問を呈さないこと。権威に逆らわないこと。云われたことに全力を注ぐこと。こうして作られた人間が、両親の世代なのです。

 そうした両親の姿を見て、疑問を感じ続ける世代が、今の若者を形作っています。
 両者共に、教育によって、自尊心を持たず、自己嫌悪を植え付けられています。

 ちなみに番組に出てきた両親たちの親にあたる世代は、ほとんどが戦争を経験しています。わたしの両親の世代です。彼らの多くに、古い日本の何かが強く残されていると、わたしは感じることがあります。

 番組に現れた個による対立以前に、より大きな対立や方針が、より大きな力によって作られてきました。

 近頃、オーストラリア人と仕事をする機会の多いわたしは、日本人のより大きな時代的特性を感じるようになりました。

 番組のなかで、両親の世代は、子どもたちを失敗をさせないために、過度に 『予防型』 『先回り型』 になることが多いと説明されました。
 子どもたちが失敗しないために、高学歴を求め、一流企業への就職を求める姿も、その 『予防型』 『先回り型』 に含まれます。

 そのため、子どもたちの夢や希望を、「到底、かなえられないものだ」 として、夢や希望を奪う行為に出ることも多いと説明されました。もし、やりたいことを奪われ、両親の望むことをやらねばならず、それに失敗した子どもの場合、その責任を自らが負うことができるでしょうか。
 それはとても難しいことだとわたしは考えます。
 彼らは、自分たちは犠牲者だと、責任を親に転嫁してしまうことが多いのではないでしょうか。

 自ら選択したことを思い切りおこない、そこで失敗して初めて、人間は成長できるような気がします。それで、失敗したら深みのある人間になり、もし成功したなら、それは新たな自信へとつながり、いっそう力強く夢を追うのではないでしょうか。

 昨晩の番組は素晴らしいものでした。しかし、日本はもっともっと深く歴史を掘り下げて考えるべきだとも感じました。
 自分たちだけが原因で、今があるのではないことを、もっと理解すべきです。
 そして、根源的原因が、どこにあるのかを突き止め、根本的な治癒を進めるべきでしょう。


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