サラエボの花(2006ボスニア・ヘルツェゴビナ) | CINEPHILIA~映画愛好症~

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気づいたら11月。もうすぐ1年終わっちゃいますねー。今月はフィルメックス見に行かれたらと思ってます。

サラエボ2

じつは、「カルラのリスト」の直前にこの作品を見て、2つセットで強い衝撃を受けました。


12歳の娘サラ(ルナ・ミヨヴィッチ)とつましく暮らすエスマ(ミリャナ・カラノヴィッチ)は、修学旅行を楽しみにするサラのため旅費の調達に奔走している。そんな中、戦死者の遺児は修学旅行費が免除されると知ったサラは、戦死したと聞かされていた父親の戦死証明書を学校へ提出するようエスマに提案するが……。(Yahoo!ムービーより)

岩波ホール創立40周年記念作品第1弾です。なんともらしい作品。女性とか戦争というキーワードがこのホールで多い気がします。総支配人・高野悦子さんの趣味でしょうか。

悲哀に満ちた歌で始まります。主人公はシングルマザーのエスマ。彼女の行動や表情で秘密が何なのかは一目瞭然ですが…、これは秘密を探るサスペンスではないので問題ありません。彼女はいつも淋しげで疲れた表情だけど、娘への愛情をひしひしと感じます。前半はかなり静かに彼らの生活が進むので、ラストの激しい感情のぶつかり合いと告白には、(予想していたものの)心揺さぶられました。人の抱える苦悩というのは別個のものなんだから、この映画を「○○みたい」と言いたくありません。これはフィクションだけど、実際にこういう方が日本から遠く離れた国にいることは事実。戦争を始めるのはたいてい男性なのに、どうして苦しむのは女性なんだとやるせない思いです。

でもここに政治的意図や非難はなく、監督曰く「愛についての映画」らしい。

娘役のルナ・ミヨヴィッチはオーディションで決まったそうで、下唇の膨れ具合と目が魅力的。ラストにはびっくりする行動を取るのですが、これは母親への謝罪の意味なんでしょうか。自分の過去への決別とか浄化という意味だったのでしょうか。

短いけれど、心に残る作品でした。 心の傷がいえることはないと思う。私も質は異なるけれどトラウマを抱えて生きている。でも、この作品のラストは、嘘でも明るい風が吹きほっとしました。


12月1日(土)より岩波ホールにて公開予定
満足度:★★★★★★★★☆☆