この道は母へとつづく(2005ロシア) | CINEPHILIA~映画愛好症~

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気づいたら11月。もうすぐ1年終わっちゃいますねー。今月はフィルメックス見に行かれたらと思ってます。

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マイナー国(すみません、日本人にとってという意味で)の子供映画が、今年はなかなかよいです。ベルリン映画祭で少年映画部門グランプリを受賞したのを始め、アカデミー賞外国語映画賞のロシア代表作品にも選出されています。


ロシアの孤児院で暮らす6歳のワーニャ(コーリャ・スピリドノフ)は、幸運にも養子を探しに来たイタリア人夫婦に引き取られることになる。院の仲間たちからの嫉妬(しっと)と羨望(せんぼう)のまなざしを浴びる中、「引き取られる前に、一目でいいから本当のママに会いたい」という気持ちを募らせた彼は、実の母親を探しに孤児院を脱走してしまう。 (シネマトゥデイ)


ワーニャ役のコーリャ・スピリドノフ君の演技の素晴らしいこと。長いオーディションの末の配役だったそうで、彼のちょっとした眼差しや、泣きそうに歪んだ顔、黙って外を見る背中に、言葉を超えて伝わってくる思いがあります(特に手首切りのシーンには、痛々しさとともに、涙でした)。モコモコの帽子を被った姿の可愛らしいこと。コーリャ君にまた別の映画で会えるといいな。


また映像の素晴らしさは必見です。ロシアの冬から春に掛けての物語で、雪に覆われた白い世界と、ワーニャの白い肌、色素の薄い髪が、リアルな世界のなかにあってどこか御伽噺のような映像になっています。ちょっとした風景や、自然光の使い方もよく、やはり今秋公開のポーランド映画「僕がいない場所」に並ぶ作品です。


ロシアの孤児院を取り巻く子供の事情、大人の事情を丁寧な取材ベースにリアルに描いているので、全く白々しさがなく、潔い。そんな現実から出たワーニャなので、余計に応援してしまう。


でも・・・実話ベースで顔もわからぬ母を慕う思いというのは胸を打つ感動がありますが、子供を捨てた母親を美化し過ぎで、その責任は問わないのかというわだかまりも残りました。国民性や文化によらず、子に対する親の責任は普遍的だと思うのです。だから迂闊に親になってはいけないのだ。この物語はひたすら彼の視点であり、彼が幸せなら何よりですが…。


10月27日(土)より公開予定

満足度:★★★★★★★☆☆☆