京極 夏彦
続巷説百物語

巷説百物語 」の仕掛けを引き継いでいるものの、

こちらの方が仕掛けのメンバーたちの過去にまつわる

事件のため、興味深く読めた。


だけどここに出てくる事件は本当に悲惨だ。

理由もなく続く殺人。

訳があればいいというものじゃないけれど

やり切れなさがどんどん心に溜まってくる。


又市もおぎんもつらい過去を持っているのに

(たとえお金を貰っているからとはいえ)他人の為に仕掛けをして

命までかけて世を渡っていく。


読むのが辛くて、でも先が知りたくて

少しずつ這うように読んだ。

「死神 或は七人みさき」の仕掛けはまさに命がけだった。

大きな悪を消滅させるのには大きな力が要る。


最後の「老人火」になると雰囲気が変わる。

又市の姿が百介の前からぱたりと消えるのだ。

戯作者として世に出た百介は表の人間として生きろ、と

見えない又市が言っているようだ。

でも百介はさびしい。読んでいる私もさびしい。

小悪党でも人情深い一味にまた会いたい。

そう思いつつ捲った最後のページにあった百介の涙は

そのまま読み手の涙だと思った。



読後満足度    ★★★★