京極 夏彦
巷説百物語

時代物だというので初めは気乗りがしなかった。

だけど2、3ページ進むうちにスムーズに

その世界に入ることができた。

妖怪の名をタイトルにした短編で

諸国に起きた摩訶不思議な話が連なる。

いつの世でも怖いのは妖ではなく人なのだね。オバケ

自分の欲に囚われているとヒトでなくなる。


事件を収める御行一味の素性はよく分からないんだけど

小股潜りの又市らにうまく丸め込まれるところが

「必殺仕事人」風で面白い。

粋で艶っぽいおぎんなんてのは、

京極堂シリーズにはいないタイプで嬉しい。

それに善人じゃないところがまたいい。

小悪党。(悪党はダメだよー。)


この本で一番好きだったのは「芝右衛門狸」。

ヒトに化けた狸、に化ける治平が面白かった。

一番怖かったのは「帷子辻」。

常人の感覚とずれると愛情もこれほど恐ろしいのかと思った。


京極堂シリーズよりさくさく読めるところがいいね。

いや、あれはあれで楽しいのだけどね。

この巷説シリーズ(・・・っていうの?)も次が楽しみ。音譜




読後満足度   ★★★★