If you start me up I'll never stop | In The Groove

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a beautiful tomorrow yea

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“これがマイケル・ダグラスの最も素晴らしいパフォーマンスの頂点だ”

―Chicago Sun-Times



“この10年で一番良い仕事”

―Entertainment Weekly



先日、渋谷のこじんまりとした映画館「シアターN渋谷」で、マイケル・ダグラス主演作『ソリタリー・マン (原題:Solitary Man)』を鑑賞。彼が出演した作品について、今回ブログで綴るのは、2010年3月19日のブログ で取り上げた『フォーリング・ダウン』、2011年2月5日及び2月11日のブログで取り上げた『ウォール・ストリート』以来となる。

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映画の舞台はニューヨーク



最近、昔からずっとお気に入りだった雑誌『Esquire』日本版を読み返していると、俺のお気に入りの街<ニューヨーク>について書かれた、アラン・デュカスのコラム(2006年当時)が目に留まったのだ。 

 ニューヨークは貪欲な街である。そして誰もが知っているように多様性と変化に満ちた街である。人々の生活、モード、流行、すべてが常にめまぐるしく変わり、動き、決して止まることがない。あの悪夢のようなテロの後でも、人々は生きる気力を失わず前に進んでいく、バイタリティに溢れた街だ。



 私はモナコ、パリ、東京と同じようにニューヨークを愛している。愛着を抱く街である理由は、自然と街に溶け込め、落ち着くことができるからだ。トライベッカ、ソーホー、ノリータなどの地区では、アートギャラリー、高級ブティック、レストランなど、店の顔が毎日変わり、新しい店が開かない日はない。



 最近、初めてアメリカにおいて発売された『ミシュラン・ニューヨーク版』で、『アラン・デュカス・アット・ジ・エセックス・ハウス』が名誉ある三ツ星をいただけたことで、改めてニューヨークにフランス料理を根付かせる第一歩となったことを確信し、非常に嬉しく、光栄に感じている。


デヴィッド・ボウイがかつて住んでいた高級ホテル<エセックス・ハウス>のペントハウス。そのホテルのメインダイニングだった『アラン・デュカス・アット・ジ・エセックス・ハウス』には、俺も足を運んだが、今はもうない。変遷する街、ニューヨークはそういう街なのだ。



マイケル・ダグラスが演じた『ソリタリー・マン』の主人公<ベン・カルメン>という役は、アラン・デュカスの言葉を借りれば、決して止まることがないバイタリティに溢れた男だろうか。



ソリタリー・マンを日本語に訳すと、<孤独の男>。とはいえ、マイケル・ダグラスが演じた役柄について、私的な解釈は、ある意味、<幸せな男>、魅力的に映ったのだ。それゆえ、<孤独な男>と<幸せな男>とは紙一重の関係なのかもしれない(笑)。



パンフレットには、彼について次のように書かれている。


確かに嫌なヤツ、それでも気になる男



ベン・カルメン(マイケル・ダグラス)は50代後半のニューヨーカー。我が道をゆく無類の女好きだ。かつては大成功を収め、何でも手に入れてきた。大学時代からの恋人のナンシー(スーザン・サランドン)と結婚していたが、現在は離婚。それでも娘のスーザンと最愛の孫に会うことは許されていた。



ベンの現在の恋人ジョーダンの父親は大手自動車メーカーの役員であり、甚大なコネの持ち主だった。ベンはカムバックのタイミングを狙っていた。しかし、彼が欲望を抑えきれずに手を出してしまったのはジョーダンの娘、アリソンだった。二人の関係はジョーダンにバレ、ビジネスも私生活も全てを棒にふってしまう。



それどころかアリソンを忘れられずに、今度は娘の友人にも手を伸ばし・・。恋人と家族から突き放され、一人孤独を噛みしめる。だが、自分の性<サガ>は抑えられない。何故か憎めない正直であり、孤独な男の物語。



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以前のブログでも取り上げたニューヨークを舞台とした映画『ガールフレンド・エクスペリエンス』でタッグを組んだスティーヴン・ソダーバーグが本作で制作に携わっているのだが、監督のブライアン・コッぺルマンは、ソリタリー・マンについて次のように述べている。
 

これは“魅力”が持つパワーの物語だ。ものすごくチャーミングな男が、それだけを武器に驚くほど長い間、人生を切り抜けてきた。だけどやがて、それは内側から彼を蝕んでいく。



僕は何年も、ベン・カルメンのような男たちを話題にしてきた。金銭的なものだけでなく、魅力知性という財産を備え、チャーミングでパワフルな男たちだよ。だがなぜか、彼らは、自分たちに与えられた能力を無にし、自分の道を見失ってしまう。



みんな、ゴードン・ゲッコートム・ウルフといった、当時のニューヨークを牛耳っていた人々の影響を受けていて、自分たちも彼らのように振る舞うべきだと考えていたんだ。その光景は見ていてすごく面白かったし、何をしていても目についたよ。


また、マイケル・ダグラスは、自身の役柄について・・・



能弁で、楽観主義、生来の勝負師であり、とどまることを知らない仕事人間。それは彼が、自身の健康が危険な状況にあると知った時に、最もよく現れている。女性と関係を持つことで、人生に対するモチベーションを得るのだ。彼は健康問題に直面するには若すぎる年齢だ。それで失った時間を取り戻そうとやっきになるわけだね。

―マイケル・ダグラス
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付け加えると、アリソン・ランガー役を演じた1989年英国生まれのイモージェン・プーツ(写真:上)について、監督は次のように述べている。
 

映画で若い女の子年上の男が関係を持つ時は、女の子のほうが犠牲者みたいに見えがちなんだ。でもアリソンは全然違う。皮肉だけど、むしろ遊び人を気取っているベンのほうが、どん底にハマってしまって抜け出せなくなるんだ。



アリソンは欲望のままにひと時の楽しみを得て、若者らしくすがすがしいほど簡単に次の一歩を踏み出していく。ベンと対等な対等な立場で選択をしていく女性に見せたかったから、演技面でも存在感でもマイケルと遜色のない人物が必要だった。



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チェストン役を演じたジェシー・アイゼンバーグ君(写真:上)が、ベンについて驚くほどクールに分析している。


マイケルの演じるキャラクターは、ニューヨーク市に住む僕がよく知るタイプの男だ。あそこでは、何かに落ち着くことを拒否して恐らく追うべきでないものをいつまでも追い求めている人々に大勢出会う。



この脚本は、そんな風に責任から逃れ、決して報われることのない目先の快楽や満足に希望を見出そうとする人々の姿をリアルに描き出していると思う。


目先の快楽や満足に希望を見い出そうとすることは、自然なことだろう、良かれ悪かれ・・・。



ところで、1980年代のアメリカに誕生した英語“Yuppie(ヤッピー)”、今では死語となってしまった!?が、ヤッピーたちがニューヨークの街を変え始めた頃から、ニューヨークにはマイケル・ダグラス演じたベンのような、遊び人やプレイボーイといったありきたりの形容詞では表現できないような男たちが、数多く増殖していったんだろうね、きっと。トーキョーはどうだか知らないけれど。
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『ソリタリーマン』・・・クソではないにしろ、少し退屈にも思えたが、そんな作品には退屈で荒削りな音楽だとはいえ、終わらないロックバンド<ローリング・ストーンズ>の代表曲のひとつ“Start Me Up”がとても似合うように思う。人生について、考えさせられる映画だ。


If you start me up

I'll never stop

Never stop,

never stop,

never stop


Good Night!