Not Too Late | In The Groove

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a beautiful tomorrow yea

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の土曜日。


小雨の中、スポーツジムから夕方に帰宅した。以前のブログでも記したかと思うが、毎週末の“愉しみ”のひとつが、自宅でシャンパン片手に、フレグランスキャンドルだけの灯りの下で、DVDを鑑賞するのが日課となってしまった。日常的には、新しいCD鑑賞も日課のひとつとなっている。


とはいえ、今週は何も購入していなかった(レンタル派ではなく、セル派)ため、映画チャンネルから、面白そうな映画を選択してみようかと番組表をチェックしてみたのだが、19時以降にスタートする作品で目に留ったのは、ムービープラスでは“ジュード・ロウ”の『マイ・ブルーベリー・ナイ』と“マチュー・アマルリック”の『潜水服は蝶の夢を見る』、シネフィル・イマジカでは“オドレイ・トトゥ”の『プライスレス 素敵な恋の見つけ方』、ザ・シネでは“レイフ・ファインズ”の『イングリッシュ・ペイシェント』等などで、全て鑑賞済みの作品ばかりだったのだ。


仕方なく、日本映画専門チャンネルチャンネルNECOをチェックしてみると、19時20分からの『東京タワー』という映画タイトルが目に留ったのだ。邦画は1983年公開の『戦場のメリークリスマス』以来、劇場まで足を運んで観たことが1度もなく、TVでもまともに邦画を観た記憶すら残っていないのだ。


昨夜は普段より早めのディナーを済ませ、2004年に制作された邦画『東京タワー』をフレデリック・カッセルョコラをいただきながら、シャンパン片手に鑑賞した。


映画のジャンルは「恋愛映画」に分類されるのだろうが、予想外に面白かったというのが、正直な感想なのかな。お子ちゃま(男)の言葉がいくつか印象に残ったので、列記してみたい(正確ではないと思うので、あしからず)。


恋はするもんじゃなくて、

“落ちる”もんなんだ。



人妻は可愛い。

彼女らは“愉しみ”に飢えているから。


年上女のいいところは、

“セックス”と“経済力”。



こんな台詞、今どき誰も使わないと思うのだが…原作も脚本も女性だからだろうか。本作品は、2組の男女の不倫(20代の男と40代の女の設定?)を描いていて、いつの時代も、この逆パターンはよくあるケースなのだろうが、こういう設定も悪くないのかなぁ、とも思えたのだが、不倫もロマンティックな衝動からスタートするのか。ひねくれていて、安っぽくて、異常で退屈、そこまでクソな作品でなかったとはいえ、先入観にとらわれず、これからは邦画にも目を向けてみようかなぁ、などと高級ショコラをいただきながら、気まぐれに思ったのだ。


とは言っても、俺の場合、昔から年上の女性には全く関心がなくて、恋愛対象として考えられなかったため、本作の人物設定には大いに違和感を憶えたのだ。劇中から伝わってくる男女の感情的なエネルギー心理的作用は、とても日本的でもあり、短期間に突発的に燃え上がるような恋心が、俺の眼には昔気質で、古臭く映ったりもしたのだ。TOKYOを舞台に、不倫(恋愛)の表層しか伝わってこなくて、本能で動いている男女間の描写が…。


ところで、「東京タワー」は小さい頃から見慣れている電波塔であるため、私的には今さら?といった感じは否めないのだが、地方出身の人々の眼には新鮮に映るものなのだろうか。世界中、今ではすっかり誰もが当たり前のように手にしている携帯電話は、1980年代のバブル期をはじめ、1990年代前半には存在しなかったコミュニケーションツールであり、21世紀には、恋愛をするには最適な環境が整い、非常に便利な時代になったのは確かだし、劇中でも携帯電話を使用するシーンが多く見受けられるのだ。こんな時代に、“草食”といった活字(造語)が躍る日本が、私的には「どうかしてるよ」的にも思えてくるし、病的なのだろう。


東京タワーが見える「眺めのいい部屋」に住む主人公の日常は、俺が長年住んでいるタワーマンションと同じシチュエーションだとはいえ、本作品では「東京タワー」が男女のランドマークとなっており、重要な要素を構成しているのだ。特別なテーマが隠されているようにも思えなかったのだが、こういった作品には倫理観を求めるものじゃないのだろうし、本能の赴くままに行動していった末、男は留学し、女は(そもそも嫌気が差していた)夫婦関係にピリオドを打って、(ロマンティックなパリのエッフェル塔の近くで)ハッピーエンディングを迎えるのは、映画とはいえ出来すぎな気もするが、あえて日本的で、女性向けの作品に仕上げているのだろうか。


以前のブログで、「シャネル」を題材とした不倫の映画を3作品取り上げてみたが、本作とは時代背景が全く異なるわけで、自由な精神云々というよりも、本作品では、年下の男が心を落ち着かせた“クール”を装う一方で、年上の女は安定した生活から抜け出せず、もう一歩前に踏み出せないといった揺れる心が、とても対照的にも思えた。「人妻は可愛い。彼女らは“愉しみ”に飢えているから」といった男の台詞が、映画を観終えたあとでは、まんざら嘘でもないように思えてくるのだ(笑)。


本作品は、洋画のようにドラッグが登場する作品ではなく、移り変わりの激しい男女の世界を描いているとはいえ、ひねりもない、純粋な恋愛映画のようでもあり、デヴィッド・リンチ監督作をはじめ、異常な映画の世界を数多く覘いてきた俺にとっては、安物のショコラに映ったのだ。俺の“五感”を揺すぶってくれなどと言うつもりもないが、昨夜の“”が今後、邦画に対しての興味をかきたててくれる方向に向かってくれればよいのだが…。


とりわけ“高級”の感じられる映像作品ではなかったにしろ、ノラ・ジョーンズの“Sleepless Nights”も悪くなかったし、エンディングで流れてきた山下達郎の“Forever Mine”という曲を、本作で初めて耳にし、「しじま」という言葉(歌詞)を久し振りに聞いたわけだが、そんな言葉、日常的にはほとんど使われないだろうから…とても印象的だったのだ。ある意味、最後に爆弾を落としてくれたと思えるくらい、記憶に残ったともいえる。


挑発的で、大胆で、官能的で、大いに解放的だった作品と思えるような、そんな日本映画があれば、ぜひ教えて欲しいものだが、混乱することもなく、我慢することもなく、あっという間の126分が過ぎていったのだ。


年上役を演じた黒木瞳寺島しのぶのオトナの女性よりも、平山あやが演じたオトナに憧れている女の子に魅力を感じたのは俺だけだろうか。


Happy Valentine's Day !