「障害児」の親ってけっこうイイじゃん ~ニコちゃん通信増刊号~ | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

ニコちゃん通信の会:著 ぶどう社 定価:1500円 + 税 (1997年11月)


      私のお薦め度:★★★★☆


一口に「障害児」といっても、その障害の種類はいろいろありますね。

私ごとですが、哲平が中等部に通った養護学校にも、肢体不自由のA部門と知的障害のB部門がありました。教室は別々ですが、学校行事、入学式や卒業式、運動会や文化祭、夏祭りやキャンプなんかはいっしょにやります。


「同じ障害児の親でも、子どもが生きるか死ぬかってところをくぐり抜けてきた人と、そういうことを経験しないで、なんとなくちゃらんぽらんと障害児の親をやってきた人とでは、迫力が違うよね」

                                (「障害児もいる家族物語 」:玉井真理子)


そう、私も玉井さんと同じく、そう言われると「そうかもなあ」と納得してしまう口です。


文化祭で、A部門の子どもたちの演技、音楽に合わせて上手から出てきて、舞台でターンして下手へ入っていく・・・ある子は先生の腕に抱かれ、ある子はバギーを押してもらい、車椅子を操作しながら、両松葉杖をつきながら・・・同情ではないんですが、そのせいいっぱい生きていることを主張する姿には涙がでてきます。
それにひきかえ息子たちの、太鼓をたたいて暢気に踊っている姿(笑っちゃいましたけど)、直接生命の不安がないだけ気楽といえば気楽と言われてもしかたないでしょうね (これでも大変なことは大変なんですけどね(^_^;)・・)。

でも、夏休みや冬休みのあけた始業式では、休みの間に亡くなられた子どもさんの訃報を聞くこともありました。合掌です。


そんな重症心身障害児をもつお母さんたち、福岡市立心身障害者福祉センターの0歳から2歳までの肢体不自由児通園施設「にこにこ園」で保育を行っていた方たちが中心になって、コミュニティー誌を発行していているのが、「ニコちゃん通信の会」です。
この会を「ニコちゃん」と名付けたお母さん、森山淳子さんのお子さん涼子ちゃんも3歳でこの世を去ってしまいます。


平成3年8月。涼子ちゃん、3歳・・・・・。私たちにとって、決して忘れることのできない悲しみでした。
へんな話ですが、私は、亜貴よりも先に涼子ちゃんが亡くなるとは思ってもいませんでした。「死」がいつも身近にあるのは、亜貴だけだと思っていたものですから・・・・。
けれどこのときからの5年間で、私たちは本当に多くの子どもたちを亡くし、決して亜貴だけが特別ではない。誰もが死と隣り合わせの生を生きているんだということを、イヤというほど知ることになりました。
そして1日1日を大切に生きるということは、本当に誰にとっても大切なことなんだということを、何度も危機を乗り越えて生きぬいてきた亜貴との暮らしの中で、そして「ニコちゃん」の多くの子どもたちとの別れの中で、はっきりと意識づけられてきたのです。
 (森山 めぐみ:亜貴ちゃんのお母さん)


その悲しみを乗り越えて、ネガティブな状況も、みんなが集ればポジティブなパワーにできるのでは・・そんな願いで生まれた「ニコちゃん通信」です。
年に2~3回発行で、100ページぐらいあるというから、もう立派な一冊の本ですね。
そんなパワーが出せる源は、やっぱり「仲間」の存在なのでしょう。一人でいると、死と隣り合わせの暮らしに落ちこんでしまう障害であっても、みんなが集っておしゃべりできれば、お互い楽しく前向きになっていけるのですね。


もし、この子がね、障害のない子どもだったら、私はこんなに一生懸命、人とつながろうとはしなかったと思うのよ。
この子たちと楽しく暮らしていこうと思ったら、いろんな人に助けてもらわないと、やっていけないでしょ。それには、いい関係でつながっていかなくちゃって思うからね。
でも、そのおかげで、私のほうが生きるのがラクになって、楽しくなっちゃった。


そう 「こういう人生もステキだなって」、そう思えるのは障害の種別を超えていっしょですね。


私は、もし、自分の子どもに障害がなかったら、お勉強ができる子どもが良い子だと思っていただろうし、そのことになんのギモンも抱かずに子育てしてたかも。
今はね、障害があるおかげで、子どもが目に見える形で問題やサインを出してくれるでしょ。それで、私もしっかりと腹をくくって、子どものホントの幸せっていうものを考えることができる。
それが、自分自身の生き方をマジに考えることだったりして・・・・・。そういう子育てをさせてもらえるって、スゴイことだと思う。


そう 『「障害児」の親って けっこう イイじゃん』ですね。


                   (2003.2)


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障害児の親ってけっこうイイじゃん/ニコちゃん通信の会

私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍
¥1,575
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目次


はじめに 誰もが「けっこう、イイじゃん!」って


1章 私と「ニコちゃん」


      「いのち」を楽しんで、生きたい! ・・・・・・・・・・・・・・・・ 森山 めぐみ


  座談会 ― やっぱり、「関係」と「願い」よねッ


  ★ 元気のモトは「ニコちゃん」から
      はまっていく・・・・・私  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中條 伸子
      「ニコちゃん」がんばれ! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 安部 久美子
      居ることから、始めよう  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 落石 美穂
      熱烈歓迎! 親睦会! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  辻野 純子


2章 障害のある子どもといっしょに生きる


  座談会 ― どうして、あんなにショックだったんだろう?


      抱きしめて、抱きしめて、抱きしめて ・・・・・・・・・・・・・・ 森山 淳子
      「ハッタツチタイ」って、なぁに? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 秋永 涼子
      泣いてないで、僕と遊んで ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 原田 千雪
      自分を肯定できるって素晴らしい ・・・・・・・・・・・・・・・・ 小河 美奈子


3章 こういう人生もステキだなって


      私にとっても、家族にとっても ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 田中 仁美
      自分を変えてみたかった ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 谷口 典子
      子どもを膝に、旅行へ、コンサートへ ・・・・・・・・・・・・・・ 西頭 京子
      ミーハー宣子、復活! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 井本 宣子
      夜の蝶から、「おかあさん」に変身した私 ・・・・・・・・・・・ 山口 泰江
      「お集まり」も「お預かり」も、楽しいが一番 ・・・・・・・・・・ 友永 妙子
      「お泊まり」は、もう止められない! ・・・・・・・・・・・・・・・ 中原 理恵子


4章 地域の中へ、未来を夢見て


      「交流」のお友達がやってきた! ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 東 容子
      地域の中で居心地よく暮らせたら ・・・・・・・・・・・・・・・・ 中山 かをり
      「いい関係」の中からつくる、自分流の暮らし ・・・・・・・ 森山 めぐみ


  あとがき

 


「ニコちゃん通信」 増刊号


  「ニコちゃん通信」のできるまで


  ★ ニコちゃん通信の会の係を紹介しま~す

      たのしかった、どんたく ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ちょう なりさ
      ニコちゃん・どんたく隊 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 牧野 敦美


  ★ おしゃべり SQUARE / 愛すべき男たち ・・・・・・・ ナビ・井本 宣子
      一家に一人は欲しい「まりちゃん」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中原 理恵子
      半ケツジャンプでニコニコプール ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 深井 寛司
      ニコちゃん通信被害者の会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 深堀 亜麻子
      啓ぴょんに、ご用心 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 安楽 由美
      ニコッと、ほほを ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 立石 春美
      深夜の、こども病院直行レース ・・・・・・・・・・・・・・・・・・  井本 隆男