障害児もいる家族物語 | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

玉井 真理子:著 学陽書房 定価:1600円 + 税


    私のお薦め度:★★★★☆


障害児の親は、一度やったらオモシロくてやめられない。


そんな文からこの本ははじまります。
著者は大学4年で卒論(ちなみに卒論のテーマは自閉症について・・)書いている最中にダウン症児、拓野(たくや)くんの母となった、玉井真理子さんです。確か今は信州大学医学部助教授で、専門分野は、臨床心理学と生命倫理学が接する領域だと思います。


ともあれ、当時21歳で障害児の母となった玉井さん、母校に戻って修士課程の学生中に次男潤野(じゅんや)くん、博士課程の試験中に三男、和野(かずや)くんの臨月を迎え、そして博士課程の研究室にいる時に四男、悠野くんの誕生と・・・
本人曰く「実に無計画に子どもを産んだものだと思う」 たしかに・・・・(^_^;)


この本は、そんな玉井さんチの家族物語です。フキダシで “障害児もいる”とはいっていますが、そこに楽しくもソーゼツに繰り広げられる物語は、ある意味、家族としてのフツーの暮らしです。
ただし、第2章「ズブズブの日常」と題されているように、かなり私たちの想像の上をいくものではありますが・・第2章の主役は、むしろ三男の和野くん、笑ってしまうエピソードがいっぱいです。


障害児の母親っていったって、思いっきり明るい人もいればチョット暗めの人もいる。
障害児の母親になったために明るかった人がショックを引きずってしまって暗い性格になったり、暗かった人が幾多の艱難辛苦を乗り越えた結果明るくなったりすることももちろんあるだろうが、もともと明るい人は明るいし、暗めの人はもともと暗めだったということだってあるし、私はその方が多いのではないかと思っている。ショックの急性期を乗り切れば、たいていの人はいわゆる「地」でいくのではないかと思うのである。


明るくたって、多少暗めだっていいじゃないか。障害児の親だからといって、苦しみを乗り越えたすがすがしい明るさをみんながもっていなくったっていいじゃないか。文字どおり十人十色、もちろん「右」から「左」までいろいろあらぁなって世界だと思う。


そうもともと思いっきり明るい臨床心理士の玉井博士は分析しています (^。^)
でも、明るい本だからこそ、読んだ私たちも元気になれるんですね。


著者が仙台時代に、お母さんたちといっしょに出した「今どき しょうがい児の母親物語」(ぽれぽれくらぶ:著)も楽しい本でしたが、こちらも肩の力が抜けて元気になれる本ですね。お薦めします。

余談ですが


私が障害児の親となったとき、まっ、何とかなるんじゃないかとすぐに思うことができたのは、フツーの明るさで障害児との暮らしを楽しんでいる何人ものフツーのお母さんたちを知っていたからかも知れない。


障害児が生まれたときのショックが、「障害児は不幸である」という根拠の希薄な思い込みと、それまでのフツーの生活が脅かされることに対する恐怖を背景として成り立っているのだとしたら、私にはそのどちらもなかった。
自閉症をきっかけにして障害児といわれる子どもたちにとほうもない魅力を感じるようになった私は、自分が惚れた相手が「不幸」だとは思わなかったし、彼らが「不幸」に見えたから惚れたわけでもなかった。


障害児の母親をやりながらフツーに明るく暮らせるのだというあたりまえの事実は、何人ものフツーに明るいお母さんたちが、フツーに明るいその姿で教えてくれた。


「育てる会」のフツーに明るいお母さんたちの姿も、どこかで将来障害を告知される方のショックを和らげることに役だっているのかもしれませんね。


                      (2003.2)


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障害児もいる家族物語/玉井 真理子


遺伝医療とこころのケア―臨床心理士として (NHKブックス)/玉井 真理子

¥966

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目次


プロローグ 大変でしょう


第1章 誕生


   21歳の母
   男の子でよかった
   「五体満足」
   またしても男の子


第2章 ズブズブの日常


   命がけの遊び
   タマゴ騒動
   たよりになる子・ならない子
   深夜の夫婦げんか
   わが家風いろはがるた
   母親批判
   息子たちのひな人形
   登校拒否
   ベトナムより父帰る
   親愛なる主治医殿
   ゆうや語
   少年の主張


第3章 拓野のこと


   きみちゃんの爪
   美少年
   フツーの暮らし
   親の会
   野を拓く通信
   とおるくん
   最後の運動会
   卒園
   入学
   あたりまえの拓野
   絵画展
   手紙
   転校
   転機
   悲しい「ウンチ・オシッコ」
   もうひとりの拓野くん
   潤野と拓野


第4章 夫のこと


   けなげな妻
   父母の会
   転職
   七人の侍


第5章 親として


   私にとっての羊水検査
   「障害」って何?
   親孝行
   百四十四の瞳の前で
   苦労知らず


第6章 障害児といわれる子どもがいて、仕事をしている私がいる


   あたりまえのこと
   じゃまもの、やっかいもの
   働く母の会
   障害児の母が働くということ
   障害児の母たるもの


あとがき