あしたは きっと 晴れ | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

「 あしたはきっと晴れ マオと家族の物語 」

あらみ なおこ:著 桂書房 定価:1200円 + 税 (1999年12月)


「あしたはきっと晴れ II 思春期編 」

あらみ なおこ:著 桂書房 定価:1200円 + 税 (2003年 7月)


        私のお薦め度:★★★☆☆


マオちゃんと家族の生活を、障害を告げられた日から小学部の卒業を前にした日までを綴ったマンガとエッセイです。


「軽度から中度の知恵遅れですね。自閉的傾向も強い様です。」
この瞬間、頭の中で谷底深く落ちていく自分の姿が浮かんだ。
「知恵遅れ」「自閉症」 この二つの言葉がまるで重い罰でも与えられたかの様に私の上にズッシリとのしかかり、気が付くといつも涙が出ていた。
そんなある日、いつもの様にイタズラをしているマオを見て、気が付いた。
「泣いてたって何も変わらない!」 現実を受け止め一歩前に踏み出した。


“ 泣いてるひまなんて ないじゃないのお~~!” こおらっ まて~~ ドドドッ~~


マンガは全編 明るいです!
もちろん。涙や怒りや寂しさや・・でもそれを上回る一家の愛情と、マオちゃんの生き生きとした姿があふれています。
マンガは北日本新聞の夕刊に連載されたものです。


今年発売された「うちの子 かわいいっ 親ばか日記」や「イケイケ、パニッカー」などのマンガが、どちらかというと仲間への共感のメッセージが強く感じられたのに対し、新聞というマスコミへの連載のため、一般の方に障害への理解・・・というより、障害児の子育ての本当の姿とその楽しさを紹介するような本になっています。そして充分に伝えていただいてると思います。


マオと外出する時、人に迷惑をかけるんじゃないか、ということがいつも頭にある。
実際、何度も迷惑をかけ、怒鳴られたこともある。だからといって、家に閉じ込もっているわけにはいかない。
他の子と同じく、マオだって生活を楽しむ権利があるのだから。怒鳴られた時、傷ついたり、辛い思いをするのは私でマオはいつもケロッとしている。親はこんな思いを何度も経験して、それでも子供の喜ぶ顔が見たくて外へ連れ出すのだ。傷ついては、立ち直り、少しずつ親は、強くなっていく。
外出後に「もう絶対どこも連れて行かないー」っていう捨てゼリフが「楽しかったね」に変わる日を夢見て。


障害児の親がみんなと同じ様に子育てを楽しむ為にも、この子たちのことを少しでも多くの人たちに知ってもらいたいのです。


ことばで説明するより、マンガですから見てもらうほうが早いですね。
視覚優位は自閉症の子どもたちに限らず、みんなに共通する真理です・・「百聞は一見に如かず」です (^。^)

本書にも登場して、あとがきなどにエッセイも書いておられるマオちゃんのおじいちゃん、高田政公さんが作られているHPに、「あしたはきっと晴れ」の一部を載せられています。

http://www.est.hi-ho.ne.jp/masakimi-takata/index.htm


いかがでしょうか、ぜひ全編を読んでみたくなられた・・と思います。


・・・ただ、同じ自閉症児の親として、読んでいて少しだけ気になったことがあります。

本の中に身体や知的に障害のある子の通園施設「あじさい学園」や、知的障害を持つ子のための「手をつなぐ育成会」の話は登場するのですが、自閉症児の親の会や自閉症協会についてはほとんどでてきません。
お母さんのなおこさんも「自閉症のこと」で書かれているように、一口に知的障害といっても、自閉症児と自閉傾向をもたないお子さんとでは、その療育は違っていますね。


おせっかいかもしれませんが、もう少し自閉症という特性に配慮した接し方に慣れていれば、ちょっぴりでもマオちゃんもお母さんも暮らしやすくなるのでは・・と思ってしまいました。
「予定表を作る」や「視覚でとらえる」のマンガでお母さんも “今までのマオがウソのよう” と体験したように、目でわかるようにスケジュールを視覚化して示してあげるだけで落ちついて暮らせるのに・・その取り組みは単発で終わっているように思ってしまいました。


「絵や文字で伝える方法は、マオに合っているかもしれないなー」
そこまでわかっているのに・・・あと一歩踏み出すためには、やはり自閉症児をもつ仲間の会に入っていたら、仲間での話し合いがそのきっかけになったような気がします。きっと私みたいにおせっかいなお父さんもいらっしゃると思いますし ・・(^_^;)


もちろん、障害児をもつ親同士、広く連帯していくためには、自閉症の会だけにこだわっていてもいけないとも思います。
あらみさんやマオちゃんの活動も、地域で知的障害全体の理解を広げるためにはとても役だった取り組みだと感じました。


そんな意味も含めて、今子育てに大変なお母さんには療育にもすぐに役に立つ「光とともに・・・」を、そこを通りぬけて思春期を迎えようとする(特に女の子を持つ)お母さんには、この「あしたは きっと 晴れ」をお薦めしたいと思います。第2巻のあとがきより・・・


今回描いた思春期の女の子には避けて通れない生理についての話は、特に思い入れがあった。
ここまで、描いていいのかな? と思いながらありのままに描いていまったのは、女の子を持つお母さんが特に心配していることだと思ったからだ。当時は、生理になるたびマオも私も1週間が地獄のようだった。
今は 「慣れるしかない」と言った先生の言葉がよくわかる。


大変な時もいつかは、過ぎていく。
過ぎてみて、初めてマオの進歩を感じるのだ。先が見えずに不安になることは、これからだって数えきれないくらいあるだろう。今、直面している問題で頭がいっぱいで、この先マオの進歩など考える余裕もなく顔を上げて前を見ることさえできないこともある。
だけど 「あしたは きっと晴れ」 そう信じて今日もマオと歩き続けたい。


               (2003.9)

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追記:日本自閉症協会富山県支部発行の冊子 『 ぼくのこと、わたしのこと 』 の挿絵のマンガはあらみさんが書かれていました。自閉症協会でも活動されているのですね。失礼しました m(__)m・・


               (2004.10)


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あしたはきっと晴れ/あらみ なおこ


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あしたはきっと晴れ (2)/あらみ なおこ

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あしたはきっと晴れ(3)/あらみ なおこ


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目次


『 あしたはきっと晴れ マオと家族の物語 』


  口絵    家族のアルバムより
         パパとマオ   絵・荒見 真央

  推薦のことば   ・・・   郵政大臣 野田 聖子
  出版によせて   ・・・   高岡市手をつなぐ育成会 池田 富蔵
  ちょっぴりスリリングな本当の話 ・・・ 
                  高岡市きずな学園 保育士 山本 美津子


  まえがき      ・・・   あらみ なおこ


パートⅠ 泣いてなんかいられない


  泣いてなんかいられない
  気持ちを伝えるのって難しい
  勇気を出して
  着れないってば
  不思議なこだわり
  マオの声援
  あじさい学園との出会い
  追いかけっこは疲れる
  マオがくれた感動
  わかってほしいのに・・・
  こんなパジャマいらない!
  やっぱりお兄ちゃん その1
  夜が怖い・・・
  マオは歌が好き
  歩けるってことは・・・
  生きてる理由?
  やったー!
  兄の気持ち
  金魚危うし!
  「叱っちゃイヤ」
  夜の大脱走
  前髪がないっ!
  訓練通いも命がけ
  マオとの買い物
  可愛いからこそ
  しゃべるな~!
  マオは世話好き
  マオのたくらみ
  雪だるま
  温泉旅行
  おひな様受難


  ケンちゃんがくれた勇気  大野淳子


  怖くないってば~
  兄弟がいて考えること
  「春が来たよ」
  園外散歩
  感覚訓練
  やっぱりお兄ちゃん その2
  新入学児童レース
  こだわり
  大きな試練
  角度を変えてみれば
  返事しろよ!
  こっちがハズカシー
  まだまだ大人にならないで
  就学相談
  半日入学の日
  のびのび合宿
  母子通園の日
  プールで消えた
  迷子になったら・・・
  夜明けの海
  ケンちゃんの友だち
  歯医者さんのマオ
  笑うな!
  いも掘り
  もう一つの「家」
  やっとわかったこと
  「まあだだよ」
  就学児検診
  七五三の記念撮影
  演舞大会にて
  白い代車
  「チーちゃん、サトちゃん」攻撃
  母親やめたい
  お兄ちゃんの気持ち
  クリスマス・イブ
  猫のミー
  大人になる前に・・・
  自閉症のこと
  母 キレル!
  恐怖の点滴
  「おじいちゃんと寝るの!」
  スキーに行く
  もうすぐ小学生
  お別れ会
  つられ泣き?
  とうとう卒園式


 『 あしたはきっと晴れ 』 誕生秘話  ・・・・  高田 政公



パートII 学校生活


  入学式
  登校
  洗濯機に砂糖?!
  落ち着くまでは
  服のエリ
  荒療治は肩透かし
  成長させてくれた
  池には水着で
  地域の中に
  おじいちゃんの入院
  人形ごっこでわかること
  思い出の旅行
  マオの記憶力
  美容師マオ
  初めての夏休み
  毎日プールに入りたい
  夫婦ゲンカ
  「一人でやりたい」
  マオまたいなくなる
  おじいちゃんの死
  おじいちゃんは心の中に


  我が子へ ― 父より    荒見 雄一郎


  ぼくの妹            荒見 雄治


  北日本新聞掲載日一覧


  あとがき            あらみ なおこ


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『 あしたはきっと晴れ II 思春期編 』


  まえがき


   1 造形教室のいいところ
   2 眠れない夜
   3 夏休み明けの朝は
   4 校外学習のお楽しみ
   5 まだ、行かないのっ!
   6 マイペースな お手伝い
   7 マオ、役作りにハマる
   8 ちょっとメイワクな遊び
   9 奥深いマオの落書き
  10 生活に必要なことを身につける
  11 養護、訓練の授業
  12 これも マオだっ!
  13 うちに来るとみんな鍛えられる
  14 平和な夜
  15 小さな進歩
  16 水泳教室
  17 障害児の親だって子育てを楽しみたい
  18 スゴイ発表
  19 あ~カン違い
  20 マオの努力
  21 寄宿舎のおフロは、魅力的
  22 マオの作ったしかけ
  23 情緒不安定は突然に
  24 壁が崩壊
  25 反抗期に突入
  26 赤ちゃんの本が好き
  27 トイレがコワイ
  28 反抗期のマオへの関わり方
  29 はれものに さわるように・・・・・・・
  30 初めての生理
  31 体験入舎2日目
  32 どうしよう・・・・・・・・・・
  33 先生の指導で
  34 マオのイメチェン
  35 食事会
  36 「おじさんカルタ」できるかも
  37 カラ回り
  38 暴れた理由(わけ)
  39 初めての苦い経験
  40 予定表を作る
  41 多難なお菓子作り
  42 犬嫌い?
  43 地域交流
  44 お父さんの体は、ねらわれている
  45 紙コップの経験
  46 年相応に
  47 バレンタインデーのプレゼントは
  48 コロコロ変わる片思い
  49 合気道やりたい?
  50 はりつめた心
  51 みんなゴメンね~
  52 慣れるまでに時間がかかる
  53 ピリピリ・・・は、うちだけ・・・
  54 胸のふくらみ
  55 マオはジコチュー
  56 春先っていつも・・・・・・・・
  57 夫婦~?
  58 母、ヘルパーの仕事に就く
  59 マオ 逃げる
  60 交流ハウス・ふらっと
  61 バス通学の朝
  62 言語訓練
  63 ところ構わず
  64 喜んでる場合か!
  65 眉間のシワは消えない!
  66 マオの可能性
  67 「メイは、大ごえで泣き出しました」
  68 ズックは泣きむし
  69 「たたいたらダメ!」
  70 一難去って、また一難
  71 知らないってスゴイかも
  72 自分だけの感覚
  73 海(うみ)ちゃん
  74 鬼は~外、マオも外?
  75 「じんせい」
  76 マオの臭覚
  77 「ふらっと」 スタッフへの手紙
  78 この子たちのおかげで?
  79 初潮から半年
  80 ユウキくんの場合
  81 「お兄ちゃんの黒とグレーの服」
  82 外食はスリリング
  83 おじいちゃんキレる
  84 視覚でとらえる
  85 親子で寝込む
  86 コレって オシャレ
  87 「人をたたかないでよ」
  88 コミュニケーションの取り方
  89 動物園はコワかった
  90 家庭訪問
  91 うちの七夕飾りは
  92 散歩なんか!
  93 先生好きっ
  94 イルカがアザラシに
  95 安定剤の服用
  96 散歩のかわりに
  97 もうすぐ中学生



  フレー、フレー、マオちゃん    教諭 中浦 雅子


  孫 ― マオへの思い       高田 政公


  あとがき