自閉症の理解 ~原因・診断・治療に関する最新情報~ | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

G.B.メジボブ、L.W.アダムズ、L.G.クリンガー:著 学苑社 定価:2,200円 + 税 (1999年5月)


    私のお薦め度:★★★★☆


副題「原因・診断・治療に関する最新情報」からもわかるように、現在(99年 5月 刊)解っている範囲での、自閉症についての説明が分かりやすい言葉で、つとめて客観的に説明されています。
告知を受けたばかりのお母さんばかりでなく、今まで何冊も専門書を読まれてきた方にも、“今”医学界で何が解って、何がまだ解っていないのか?
そしてこれからの展望や、親として“これから”どう考えていけばいいのかという、道しるべになるような本だと思います。


本の内容は初めにざっとこれまでの自閉症研究の変遷を述べた後、現在の診断基準や医学的研究、遺伝的知見・出産時の障害・神経学的知見・脳波所見・神経学的知見などについて説明されています。


その後、現在の治療・教育の説明やその治療法に対する論争などについて述べられています。


筆者は、みなさんすでにご存知のようにTEACCHプログラムの第一人者のゲーリー・メジボブ博士ですが、他の意見についても努めて客観的に紹介しています。
自閉症児の子育てに大変なお母さんにとっては、この最後の章(5章「治療・教育」と6章「治療法をめぐる論争」)だけ読んでも、十分その価値はあると思います。


ノーマライゼーションやインクルージョンの効果や問題点、罰を加えることの是非、自閉症という診断名をつけることに対する賛否両論や、FCについての報告・・・など、本当に私たちが “今” 知りたいことが列挙されています。


       (「育てる会会報 15号 」1999.7)


--------------------------------------------------


自閉症の理解―原因・診断・治療に関する最新情報/G.B. メジボブ
¥2,310
Amazon.co.jp


自閉症とインクルージョン教育の実践―学校現場のTEACCHプログラム/G.メジボフ
¥2,940
Amazon.co.jp


TEACCHとは何か―自閉症スペクトラム障害の人へのトータル・アプローチ/ゲーリー・B. メジボフ
¥2,520
Amazon.co.jp

---------------------------------------------


目次


第1章 歴史的背景


  1 Kannerの論文


  2 精神分析

      精神分析への反論


  3 初期の生物学的研究

      てんかん
      脳波研究
      眼振
      胎児期・周産期の障害
      酸素過多
      先天性風疹
      奇形


  4 遺伝


  5 予想される神経学的障害部位

      神経化学
      半球優位性
      悩幹網様体
      初期の行動療法


 

第2章 自閉症候群の定義


  1 現在の診断基準

      対人的相互反応
      言語・非言語的コミュニケーション
      限局した行動と興味
      症状の抽出
      早期診断に役立つ症状
      合併する症状


  2 診断用具

      小児自閉症評定尺度
      自閉症観察診断スケジュール
      前言語自閉症観察診断スケジュール
      自閉症両親の面接
      自閉症診断面接


  3 自閉症の定義に関する歴史

      広汎性発達障害としての自閉症


  4 疫学的データ

      発生率
      自閉症は増えているか?
      同朋発生率
      性差
      知的な遅れ
      社会階層


  5 鑑別診断

      自閉症とその他の広汎性発達障害
      自閉症と精神発達遅滞
      自閉症と学習障害
      自閉症と注意欠陥障害
      自閉症と脅迫性障害
      自閉症と言語発達遅滞
      自閉症と精神分裂病


  6 要約


 

第3章 原因に関する最新の医学的研究


  1 遺伝的知見

      自閉症は社会性や認知の障害を引き起こす遺伝性疾患の重度なものであろうか?
      自閉症は複数の先天異常が組合わさってできたものか?
      要約


  2 胎児期・出産時の障害


  3 神経学的知見

      小脳
      大脳辺縁系
      大脳皮質
      悩の大きさ
      要約


  4 脳波所見

      大脳活動パターン
      半球優位性
      悩部位による活動レベルの違い
      てんかん発作
      ランドー・クレフナー症候群
      まとめ


  5 神経化学的知見

      セロトニン
      悩オピオイド
      要約


  6 結論


 

第4章 言語と認知


  1 言語能力

      言語の意味論的側面
      語用論的側面


  2 情動の表出と理解


  3 記憶


  4 注意


  5 心の理論


  6 実行機能


  7 要約


 

第5章 治療・教育


  1 力動精神医学


  2 医学的治療

      抗てんかん薬
      神経弛緩剤
      興奮剤
      トリサイクリック抗鬱剤
      ベータブロッカー
      リチウム
      フェンフルラミン
      ナルトレクソン
      メガビタミン療法
      要約


  3 教育・行動面での介入

      オペラント法
      認知行動的アプローチ
      社会的学習アプローチ


  4 要約


 

第6章 治療法をめぐる論争


  1 早期介入


  2 ノーマリゼーション


  3 インクルージョン


  4 援護就労

      ジョブコーチ
      エンクレイブ
      小規模事業所
      移動作業班


  5 罰


  6 診断名をつけること


  7 FC


  8 要約


 (いまは「広汎性発達障害」という表記が一般的なので、原訳の「広範性」を「広汎性」に変えて記述させていただいています。)