感覚的な要素が強いため説明が難しいのですが、ある筋肉をいかにきちんと緩めるか、緩めきることができるかといった時の重要な要素に『焦点』というものがあります。
施術をしていて、やる手技やる手技なんかしっくりくる(効かせられているという感じ)場合と、なんかしっくりこない(効かせられいる感じがしない)場合との差を感じたことがある方も多いと思います。
この、しっくりこないというものの正体が『焦点が合っていない』ということであることが多いのです。
筋肉が緩むとは脳からの神経伝達の働きを変化させるという、「神経反応」なのですが、この焦点という要素はその反応が促進する重要なポイントになるのです。
例えば、前脛骨筋を押圧した瞬間に、相手の脳が『前脛骨筋を押された』という脳の認識があれば(患者さんが解剖学的な知識で前脛骨筋を知っているかどうかは関係なく、『なんかスネ付近の筋肉をやられいてる!』程度の認識で十分です)より早く確実に、前脛骨筋に弛緩の命令が出ることになります。
このように、身体のしくみとして
『緩むなどの変化とは、患者さんの意識が強くいっている部分(脳が認知している部分)でより促進する』
というものがあるということになります。
さらに、意識がいってなかった状態から相手の意識がそこにいった瞬間や、当該箇所の認識がはっきりと起こる瞬間が解るようになってくるので、自分は『焦点が合った』とか勝手に言っていたりするのですが、確実にこの要素は施術に大きな影響を及ぼします。
慣れてくると、その人にとってここから触ると脳の認識が起こりやすいとか、この触り方だと意識がいきづらく逸らされやすいなどが診たり触ったりで判断できるようになってくるのですが、そう難しく考えなくても、多くの人で意識がいきやすく逆に意識がいきづらいなどの場所が共通して存在しています。
下半身の筋肉で分りやすいところだと、身体の前側の大きな筋肉(大腿四頭筋など)は意識がいきやすく、普段目に見えづらい後面の筋肉(大殿筋など)では意識がいきづらくなります。
したがって施術においては、まず患者さんの意識が濃いところをまずは施術していくのが、緩むという神経反応においても患者さんの実感においても都合がいいわけですね。
そこで、いきなりマニアックに足の指などを施術しても、患者さんは大きな筋肉の意識の強さで、指の意識は相対的に少ないわけですので、緩むなどの神経反応もおこらなくなるのです(効果につながらない)。
※焦点が合わない場所で手技をいくらやっても、変化もしづらければ、相手の実感も起こりづらい。
そういった意味で、施術とはただやればいいわけでなくて、どうすれば相手に自分の身体に意識を向かせるか、自分の身体により興味をもってもらえるかが手技以前に重要なことになります。
これらの話しは、まさしく普段私たちがしている普通の『口での会話』と一緒で、相手の反応をみながら察しながら、こちらの意図をスムーズに伝えるためにはこう話そうとか、相手に理解してもらえるようにあれこれ調整をかけていることと同じです。
整体のお師匠は『施術は身体との会話である』と仰っていましたが、まさにその通りだと思いますね(^^)/