後編です。前編はこちら



● MPをなくしたメリット


 MPをなくしたメリットとして考えられそうなのは、大きくわけて二つです。



 まず、FF13の戦闘システムでは、

 「そもそも、MPまで管理している余裕がない」という点に注目しておきましょう。。
 FF13の戦闘のテンポはかなりはやく、
 個々のキャラクターの行動を細かく制御する余裕はプレイヤーにはありません。
 この上、MPの管理までプレイヤーに要求するのは、少々難易度が高すぎるでしょう。
 これは、実際にプレイした人ならおわかりいただけるかと思います。


 この場合、MPを排除した代わりに得たのは、
 「オプティマの変更に集中すればいい」、というわかりやすさですね。


 戦闘後の回復などの作業も不要になって、
 全体的なゲームのテンポもよくなることが期待できそうです。

 MPをなくしたことによって、
 ゲームの要素は整理され、スマートな設計になっている、ということもできるでしょう。



 そして、もうひとつ。

 こちらは、厳密には「メリット」かどうかは難しいところです。

 そもそも「MPの管理」というゲーム性が、

 昨今のゲームデザインの流行から外れかけている、という点です。


 最初にあげたとおり、ゲームの歴史を紐解けば、
 もともと、RPGのゲーム性の中心は、
 「MPをいかに管理しつつ、ダンジョンを攻略するか」
 というところに集約されていました。


 「やば、MPもうないよ。どうしよう? 戻ろうか?」というゲームですね。


 しかし、この部分……

 「ある程度の期間回復できないものを上手に管理していく」というゲーム性は、
 実は、RPGがストーリーと演出に傾倒するにつれ、
 どんどん失われてきた要素でもあります。


 「長期リソースの管理」というゲーム性は、はたしてゲームに必要なのか?

 これは、ゲームのプレイサイクルが短くなりつづる現在、

 デザイナーに対して問いかけられている大きな問題のひとつです。



● 長期リソースの管理に関する流行


 たとえば、ほかのジャンルのゲームを見てみましょう。

 FPSでは、ライフゲージの自動回復はもはや当たり前になっています。


 これの最初はハーフライフだったでしょうか、Haloだったでしょうか?

 Haloはシールドゲージだったかな? 

 

 本来、ライフゲージのあるゲームでは、

 「なるべくダメージを受けないようにたたかう」というのが常識でした。

 しかし、FPSの場合、「ダメージの蓄積」という概念が、

 レベルデザインの障害になることも多く、  

 また、適切な回復ポイントの設置の難しさもあり、 

 実は、必ずしもゲームに必要な要素ではなかったわけです。


 「ほかに面白い部分、ウリになる部分」があるなら、
 そもそもこの要素……「長期リソースの管理」というシステムは必須ではない。
 それを見抜いた、大胆で見事なゲームデザインだったと思います。



 本来なら、RPGは、「長期的なリソース管理」との相性のいいゲームジャンルのひとつです。

 しかし、最近では、ゲーム自体の区切りも、どんどん短くなり、
 短期スパンで終了するゲームが歓迎されるようになっています。


 PS2時代以降にヒットしたタイトルを以前と比べてみても、

 昔のRPGや、シミュレーション色の強いゲームはなりをひそめるようになりました。

 (一部で大きく動いたゲームもあるんですが)


 FF13のMP排除は、この潮流・傾向をみての、
 「長期リソースの管理をカットし、一戦一戦にしっかり集中して楽しませる」
 
というデザイン意図だったのではないか、と私は考えています。
 


 これが是か非か……は、難しいところです。

 長いスパンでリソースを管理する、というゲーム性は、
 腰をすえて長く成長を見守るタイプのゲームには、非常によくマッチします。


 たとえば、ターン制SLGやキャラの成長や育成に重きをおいたゲームでは、
 必須といってもいい要素でしょう。

 その代わり、ゲームそのものの「区切り」も長めにせざるをえません。

 
 短いスパンで楽しませる、という方向に特化するなら、
 「回復のために街に戻る」とか「なるべく消耗が少ないようにたたかう」などの
 要素は、むしろ足かせという側面が強くなります。


 上にあげたFPSのように、排除するのが正しい、ということになるでしょう。


 このあたりの選択は、どちらがいい、という正解はありません。
 そのゲームの方向性とあわせて考えるべきポイントです。



● FFの場合


 個人的には、FFというシリーズは、こういう戦闘システム部分に
 次々メスを入れてきたシリーズだ、という認識をもっています。


 そういう意味で、FF13の戦闘は、
 実に「FFらしい」戦闘だった、という感想です。

 結果として、新しい要素がいろいろ難点を抱えてしまった、という部分については、
 以前感想メモにまとめたとおりですが……。


 それにしても、12といい、13といい、戦闘をよくもまあ
 ここまでとんがった設計にできるなあ、と。

 ムービーやイベントで十分勝負できるんだから、
 システムはもっとみんなにわかりやすく、入りやすいシステムにしてしまえ、という
 やり方もぜんぜんありだとおもうんですけどね。
 そういう方向にいかないのは、チャレンジングですばらしいなあ、と思います。


 ワタシ自身は、FF12のような、
 細かく設定し、計算するような戦闘がすきなんですけどね(笑)