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このエントリは長文テキストの後編になります。
前編・中篇は、以下のリンクからごらんください。
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前編、中編の話は、小中学生の頃合なら普通に存在する
「ゲームの話が出来るコミュニティ」
これが、年齢の進行につれ、だんだん失われていく、という話でした。
本来なら、ここで、「じゃあ、こちらで話をどうぞ」と
メーカーなどが主導し、コミュニティを提供するのが、「望ましい形」です。
これによって「ゲーム離れ」を避けることができ、
継続的なユーザーの確保が可能になるのでしょう。
「ユーザーの、ネットワークコミュニティへの誘導」です。
一部の、コアなゲームや、MMOなどに代表される
ネットワークを母体にしたゲームは、
これを自然とそなえていました。
ですが、大多数のゲームは、この要件に気づかず、
まったく対応できなかったのです。
……前おきが、非常に長くなりました。
要するに「ひぐらしのなく頃に」がやったことは、「これ」なのです。
「ひぐらしのなく頃に」の特徴について、改めて解説しておきます。
いわゆるノベルゲームであるこのゲームは、以下のような特徴をもっていました。
●選択肢がユーザーに提示されない
●第1話~第8話にわかれていて、半年おきのペースで1つづつリリースされた
●推理モノでありながら、各作品の「謎」に対して、
解答が提示されなかった
作中の舞台では、ある「事件」が発生します。
作中では、主人公をはじめ多くの人間が、
「なぜ、その事件がおきたのか?」
「事件を防ぐ方法はなかったのか?」
「犯人は誰で、何を目的にしているのか?」
を調べようとします。推理モノの基本形といっていいでしょう。
ですが、「ひぐらしのなく頃に」では、これに対する解答が提示されないのです(*3)。
「名探偵が登場しないで終わる」というのが、わかりやすい説明でしょうか。
そして、事件への推理は、ユーザーにゆだねられます。
と、同時に、この作品では、
その「謎」について話し合う場を公式に用意したのです。
そして、ゲームの「あとがき」に当たる部分で、
この掲示板にきて、自説を交換しあい、真相を明かすように促したのです。
「推理ゲーム」と題しながら、
実際には「名探偵」の推理をボタンを押して読んでいくだけのゲームが多い中、
このゲームは、本当の意味で「推理」をゲームにしてしまったのです。
推理モノでいうなら、「名探偵による謎あかし」の舞台を、ゲーム内ではなく、
ネットワーク上でユーザー同士が行うようにしてみせたわけです。
出題編にあたる1~4話の内容は、非常に分量も多く、
一人では全体の把握が困難なものでした。
結果として、公式掲示板は、
たくさんのユーザー層が討論と意見交換を行う場となりました。
つまり、この作品は、最初にあげた、
「ユーザーの、ネットワークコミュニティへの誘導」を成し遂げているのです。
活発に意見を交換する場があれば、人はゲームへの興味を失わないのです。
結果として、「ひぐらし」は回を重ねるごとに、
コミュニティの拡大とユーザーの増大を達成しました。
「ひぐらし」の成功は、作品の質だけによるものではありません。
「コミュニティを形成し、そこにユーザーを誘導する」というシステムによって、
半ばは成し遂げられたものなのです。
……世間のゲームメーカーに、「ネットワーク」というものが与えられたとき、
ランキング機能だとか、チャット機能だとかが次々と登場しました。
が、「コミュニティを形成する」ことを意識したメーカーがどれだけあったでしょうか。
「ひぐらしのなく頃に」は、ゲームの内容だけみれば、
従来のアドベンチャー、ノベルゲームと同様のものです。
ですが、上の話を見れば、これが「ネットワーク」がなければ始まらない
一種の「ネットゲーム」であるといえることがわかると思います。
「ひぐらしのなく頃に」について、
「ゲームデザイン」という観点から評価すると、このようになります。
● 「コミュニティの形成」が商業上、きわめて有効であること
● ネットワークを使い、従来のゲームにコミュニティ要素を付け加えたこと
● それを使って大ヒットをなしとげたこと
これがどれだけ革命的で効果的だったかは、結果が証明しているといえます。
「ひぐらし」は、内容や文章はもとより、
ゲームデザイン面でも非常に優れた作品である、ということができると思います。
このあたりが、私が「Fate」をやらず、「ひぐらし」をやる理由だったりします。
……以上、長い文章におつきあいいただき、ありがとうございました。
参考:
「ひぐらしのなく頃に」 → 体験版として、上記「第一話」が無料で遊べます。体験版はこちら
(*3)正確には、前4話が出題編、後4話が解答編であり、解答編では、
主題編への解答が提示される。
……が、最終8話までは、続けて新たな謎が提示されるので、この表現ってことで。