チェスについて語るときに将棋指しの語ること | Thousand Days

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さうざん-でいず【千日手】
1. 同一局面の繰り返し4回。先後入れ換えてやり直し。
2. 今時珍しく将棋に凝っている大学生の将棋系ブログ。
主に居飛車党過激派向けの序盤作戦を網羅している他、
雑学医学数学物理自転車チェス等とりとめのない話題も…


…誰得感の半端ない当ブログのチェスシリーズ。
今回は序盤の「将棋風」戦型紹介を試みてみます。
(ちなみに題名の元ネタはもちろんR・カーヴァー)

前提としてルール棋譜の読み方だけ必要ですが、
そこさえ把握していればスラスラ読めるはずです。


「チェスは好きだけど将棋は大嫌い」な人がここに辿り着く可能性は極めて低いはずなので、
ここでは将棋用語を過剰に流用してやりたい放題やらせて頂きました。悪しからず。

※以下はあくまで私の主観的なこじつけであり、実際に指した場合の印象とは異なります。
チェスガチ勢が見たら高確率で怒り出すと思うので、どうか秘密にしておいて下さいね。



【≒居飛車の理想形】
1. e4 pass
2. d4


初期配置で「二手指ししていいよ」と言われたら、
大抵の人は26歩~25歩とか56歩~55歩を選ぶんじゃないかと思います。
…チェスでそれに対応する強力な最序盤が、上図。

チェスでは各マス目がどちら側の支配下にあるか、
その中でも特に不安定なマス目はどこか常時チェックしながら試合を進めていきます。
(特に…交通の要衝たる中央4マスの価値は絶大です)

このように両方の位を取られ、将来それが適切に支えられて安定してしまえば、
中央4マスは全て白地になったも同じで黒劣勢。
故に後手は上図を阻止しようと頑張るのです。。


初手2六歩は1. e4
初手7六歩が1. d4に対応すると考えればOK。
…黒番(後手番)では、それぞれに対策が必要です。
(二手目8四歩は1. e4 e51. d4 d5で、急戦策が多くて大変ですが王道です)



【Italian Game ≒相掛かり】
1. e4 e5
2. Nf3 Nc6
3. Bc4


チェスの現行ルールができた頃から長年愛用され、
今でも初心者が最初に教わるオープニングがこれ。

王様の小鬘(コビン)かつ角頭にあたる、初期配置で最大の弱点「f7」を素直に狙う形で…
将棋でいうと旧王道相掛かりのポジションです。

1… e5のせいで黒の防御力が低いこともあり、
双方に様々な攻め筋が生じて非常に面白いです。
歩を犠牲にして掛ける速攻【Gambit】も多数あり、実際少しでも隙を見せると瞬殺されます。


※この後も色々ありますが、先手なら【Giuoco Pianissimo ≒相掛かり腰掛け銀】がお薦め。
まずは 3… Nf6 4. d3 Bc5 6. c3 と大人しく進め、次にb筋のナイトをg筋に運び…あとは全力で攻めます!



【Ruy Lopez ≒角換わり腰掛け銀】
1. e4 e5
2. Nf3 Nc6
3. Bb5 a6
4. Ba4 Nf6
5. O-O Be7
6. Re1 b5
7. Bb3


前述のイタリア布局よりも一歩深く角を進め、桂馬の動きを封じにかかるのがルイロペス
…由来はスペインのお坊さんの名前で、こちらも上から下まで今なお指されまくっている王道定跡です。

白の角は大抵ポコポコ追われる羽目になりますが、
辿り着いた先も好所なので特に差し支えないです。

本線は以下 7… d6 8. c3 O-O と続き、白は盤面全体を用いての総攻撃を狙えます。
(私の全然知らない)深い定跡の一本を選んで進み、
桂馬を細かく移動させて手を作りにいく感じです。


※ちなみに 7… O-O 8. c3 d5 の決戦【Ruy Lopez Marshall Attack】が教授のお気に入り。
後手番で積極的に攻めていける戦法群の中でも最強の一角を占める…らしいです。



【Sicilian Defense ≒横歩取り(先後逆)】
1. e4 c5
2. Nf3 d6
3. d4


そして、1. e4系統のもうひとつの中心定跡がこちら。
盤面左側は別にいらない。でも右側は私に頂戴
と主張する黒に対して3. d4と殴りかかり、3… cxd4 4. Nxc4 Nf6 5. Nc3 と一歩交換し、

中央の歩はあげる、代わりに(素早く二枚桂を繰り出して)あンたの玉をもらう!
と、白の人が月下の棋士風に言い放つ定跡です。。


変化は膨大でとても書ききれそうにありませんが、
ここまで進めば横歩取り同様、非定形の殴りあいに雪崩れ込む可能性が高いみたいですね。



【Bb5 Sicilian ≒一手損角換わり】
1. e4 c5
2. Nf3 d6
3. Bb5+ Bd7
4. Bxd7+ Qxd7
5. O-O Nc6


…故に先手にも回避手段が色々用意されています。
中でも将棋で言うところの手損角換わりにあたるのがこの順。(双方の着手数的な意味で)

2. Nc3, 3. g3 からじっくり自陣を整備する【Closed Sicilian ≒横歩取らず】や、
2. c3, 3. d4 とシンプルに中央を獲りにいく【Sicilian Alapin ≒嘘矢倉】もよく見かけます。

後手はこれらの手段にも対応できるよう、ちょろっとずつ調べておく必要はありますが…
序盤さえ無事に乗りきれれば先番の利も薄れ、互角の勝負に持ち込みやすいでしょう。


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1. e4使いは斬り合い好きの居飛車党な感じですね。
対して1. d4の使い手は、どちらかと言えば厚み重視の棋風なのかもしれません。



【Queen's Gambit ≒相矢倉】
1. d4 d5
2. c4


普通「ギャンビット」は速攻作戦につく名ですが…
この戦法は例外的にじっくりねっとり押し合いへし合いを志向しています。
(第一、後手はこの歩を取りづらいですし)

興味ないので知りませんがセオリーに最も忠実な戦型のひとつで定跡も多くあります。
力を溜めて一気に炸裂させたり、私が全く感覚を掴めそうにない辺りも矢倉的です(笑)

ちなみに現状日本国内でチェスが一番強いと思われるヨシハル・ハブーとかいう人が、
この戦型でGM相手に悪魔的な寄せを決めて定跡をひっくり返した(笑)名局があります。
(どこかで聞いたことのあるような名前ですね!)


※常に1. d4, 2. Nf3, 3. e3, 4. Bd3, 5. b3, 6. O-O, 7. Bb2, 8. Nbd2 と構えて9. Ne5を狙う
【Colle-Zukertort System ≒右四間飛車】もあり、
すぐに使える白番用戦法の中では最強クラスです。



【King's Indian Defense ≒ゴキゲン中飛車】
1. d4 Nf6
2. c4 g6
3. Nc3 Bg7
4. e4 d6
5. Nf3 O-O


「矢倉とか指してもすぐプチャッと潰されそう…」
と思えてしまう人(※もちろん私も含む)のために、
チェスにも振り飛車みたいな戦法群があります。

逆に考えるんだ。(中央なんて)あげちゃっていいさ、と考えるんだ
…という思想でこれをハイパーモダンといいます。
(でもやられっ放しはアカンので後ほど反撥します)

中でも特に将棋っぽくてわかりやすい?のが、上図のキングズインディアン防御
黒陣左側に美濃っぽい囲い(フィアンケット)を素早く作り、e筋かc筋で殴り返す準備を整えます。。


※他にも位を張られる前に3… d5とジャブを入れる【Grünfeld Defense ≒升田式早石田】や、
2… e6からの3… Bb4でいきなり角を捌いてしまう
【Nimzo-Indian / Bogo-Indian Defense ≒KK4】といった戦型もあったりします。



【King's Indian, Classical ≒ゴキ中対超速】
6. Be2 e5
7. O-O Nc6
8. d5 Ne7
9. Ne1 Nd7
10. Nd3 f5


対角線上に配置したこの黒角は守備の要であり、
また敵陣を睨んで将来の反撃への礎ともなります。
将棋指し的には最も落ち着く居場所ですよね(笑)

e5を早めに突いた場合、黒の主な狙いは玉頭戦で…
f筋のナイトをどかせて飛車先を突き出します。
対する白はそれをフワフワかわしつつ、位を取った盤面右側で攻め合うのがよくある展開。

黒ビショップ=角がうまく捌ければ、黒満足です。
(ちなみに一見アレな形ですが個人的には7… Na6の方が何かスマートな感じがして好きです)


※キングズインディアンは先手でも無理やり使える【King's Indian Attack ≒先手中飛車】ので、
私みたいに白番の勉強を面倒臭く感じたらとりあえずコレ一本でも生きて行けます。


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【Pirc Defense ≒ノーマル四間飛車】
1. e4 d6
2. d4 Nf6
3. Nc3 g6
4. f4 Bg7
5. Nf3 O-O (Austrian Attack)


このピルツ防御のように、初手1. e4に対しても振り飛車ハイパーモダンな作戦を選べます。

(ちなみに 1. d4 Nf6 2. Nc3 のオープニングから次に3. e4を狙われても2… d5で防げます。
白のc筋のナイトが微妙に悪形となるため、これなら黒を持って何の不満もありません)

黒の構えは前述のキングズインディアンと同じですが…
白がc筋の歩突きを省けている点が異なり、その分f筋を高く構えやすかったりします。


※これに慣れてきたら、急いで入城せず2… Nf6も保留して相手の出方を見る超高等戦術
【Robatsch Defense ≒藤井システム】もお薦め!



【Sicilian Dragon ≒空中戦法捻り飛車】
1. e4 c5
2. Nf3 d6
3. d4 cxd4
4. Nxd4 Nf6
5. Nc3 g6
6. Be3 Bg7
7. f3 O-O
8. Qd2 (Yugoslav Attack)


さらにこの美濃囲いフィアンケットの陣形、実はなんと横歩取りシシリアンでも組めます!

その場合、黒の角には「ドラゴンビショップ」という格好良すぎる渾名がつき…
戦法名も「ドラゴンバリエーション」となります。
(d筋の歩が切れている分、睨みがよく効いてます)

この囲いの急所は角交換を絡めた玉頭攻めで、
それを食らうと突然脆くなる辺りも美濃っぽい(笑)
…故に白側としては、上図の構えからh筋g筋を伸ばしていくのが最も鋭い対策です。

対する黒も(主に開いたc筋から)飛車や女王様を発射して盤面右側を厳しく狙えるため、
激しい攻め合いとなることが多いみたいです。。


※角行設置を他の何より優先する2… g6も有力で、
こちらは【Hyper-Accelerated Dragon】と呼ばれます。格好良すぎて最早意味不明ですね(笑)


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将棋指しはどんな戦法を選んだらいいですか?
という私の問いに対して、ツカサ教授が挙げたのが

・ルイロペス-マーシャルアタック
・キングズインディアン
・シシリアン-ドラゴン
・フレンチ(※書き忘れ)
【French Defense ≒雁木】

だったので、これらを軸に紹介しました。
ただマーシャルは教授の学生時代に流行った手で、
今は終わっちゃってるかもね」とも仰っていましたが。。

チェス特有のエンドゲームで戦うよりもメイトや大技の出やすい攻め合いに持ち込み、
読みで勝負する方が将棋の力を活用しやすい…と私も思います。


オープニングについてより詳しく調べたければ、
このページで気になる変化の先を追ってみたり、
チェスプレイヤのブログを読むのが良いでしょう。

本来私は将棋の語り部(自称)であってチェスのそれではないので、この辺で一旦止めます。



p.s.
白勝ち:黒勝ち:引き分け≒4:3:3程度です。
(※級位者同士なら限りなく5:5:0に近いです)

将棋よりも先後の差が大きいとよく言われますが…
引き分けを「黒の人よく頑張った!」と考えれば、
この値は決して悪くないんじゃないかと思います。


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