「ミルグラム実験」が示す人間の残酷性 ~体罰を容認する意識~ | テレビ番組 時事ネタなど書いていきます。はい。

「ミルグラム実験」が示す人間の残酷性 ~体罰を容認する意識~

「その実験」は二人一組で行われました。
20歳から50歳の男性を対象として募集され、
1時間の約束でそのための報酬も出されるものでした。
一人は教師役に、もう一人は生徒役にくじ引きで選ばれます。
二人はこの実験が

記憶学習についての実験

だとして、生徒役は隣室に移動、
教師役は

今、生徒役の彼は電気椅子に座らされている

と聞かされ、そして、電気ショックが
記憶にどういう影響を与えるかを調べるための質問を
これから行うと説明されました。

各質問、各問題に正解すれば何もありません。
ただ、誤答または思い出せないなどで無回答の場合は、
電流が流されます。
その電流のスイッチを押す役割を任されているのが、
教師役の人でした。

その電圧は一定ではありません、
間違えるたびに電圧が高くなることになっています。

つまり、電気ショックが学習能力にいい影響を与えるのか、
そして、その程度を強くしていけば、
さらによくなるのかというものです。


この実験、1963年に発表されたものです。
発表者は米イェール大学の心理学者、スタンリー・ミルグラム。
実は上記の説明は、
あくまでも教師役の被験者が認識している実験の内容で、
生徒役の人は偽の被験者、サクラでした。
くじ引きも仕掛けにより、
教師役になる人はなるべくして教師役になっています。

隣室で電気椅子に座らされている(はずの)生徒役は故意に誤答し、
教師役がスイッチを押すと、
事前に"録音されていた演技"の苦痛の声や
抗議の叫び声がインターフォン越しに聞こえてきます。
誤答ごとに電圧は上がっていきます。
苦痛の声もより苦しげに叫び、
そして、この実験の停止を訴えるようになります。
教師役のいる部屋にはもう一人男性がいて、
それは白衣を着た「権威のある博士らしき男」なのです。

教師役の彼はインターフォンから聞こえる叫びや懇願に、
スイッチを入れることをためらうようになります。
その時、「権威のある博士らしき男」が
この実験の継続を無表情で命じるという訳です。
教師役が協力を拒む度に命令は繰り返されます。
最初は「続行して下さい」と、それでも続けないようであれば、
「この実験は、あなたに続行していただかなくては」と、
しかし、まだ言うことを聞かなければ
「あなたに続行していただく事が絶対に必要なのです」と強調。
まだ駄目なら「迷うことはありません、あなたは続けるべきです」と、
言うことに決められていました。
この4度の通告がなされてもなお、
教師役が実験の中止の意志を示し続けていた場合、
この実験は終了となります。

この実験の真の目的は

権威者の指示に従う人間の心理状況

を知ることでした。
"博士"が実験の継続を命じた時、
そこで教師役は電気ショックを続けるのか、
あるいは、もうこの実験に加わらないことを選ぶのか、
それを見ていたのです。

事前の研究者たちが考えた最大の電圧は450V。
ここに至るまでに苦痛、うめき声、絶叫などが繰り返され、
そして、壁を叩いての抗議、
そして330Vでは無反応になります。
この状況で、電圧450Vの電流を流す人は、
全体の何%かというのが注目されていました。

イェール大学で心理学専攻の四年生14人に質問し、
その平均は1.2%で、またミルグラムらの同僚に内密に質問したところ、
やはり、強い電圧では
ほとんどの教師役が拒否するだろうと予測していました。

実際の結果はどうだったでしょうか?

最大の450Vの電流のスイッチを入れた教師役は

62.5%

でした。
半数以上の人が実験の継続を拒否しませんでした。

教師役と一緒に部屋にいた「白衣の男」はもちろん、
教師役の男性の弱みを握っている訳ではなく、
この実験を中止したとしても、
報酬がなくなるわけでもなければ、
彼自身が苦痛を味わうこともありません。

この実験結果は、人間は権威がある人の命令があれば、
(生徒役の無反応から)他者の命に危険があると認識していても、
その命令に従うという、
残酷さを持っているということを示しています。

ミルグラム実験

あるいは

アイヒマン実験

とも呼ばれるこの実験は議論の的となり、
必ずしも評価は肯定的ではないようですが、
人間がこのような性質を持っているかもしれないという事については、
認識しておいたほうがいいかもれません。

大阪市立桜宮高校バスケット部における顧問からの暴行などにより、
自殺に至ったキャプテンの事件では、
ここの校長と、
キャプテンがどういう目に遭っているかを知っていた他の教員は、
この実験における「教師役」に相当するのかもしれません。
苦痛を知りつつ、彼がその苦痛を受け続けることを選んでいました。
それは、その顧問に「権威」があったからでしょうか?



明晩はこちらで触れたまま放置している

「ホンマでっか!?TV」 ブロークンウィンドウズ理論 broken windows theory
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-10945805317.html

1971年の同種の実験についてお書きする予定です。



スタンフォード監獄実験 ~「看守」として振る舞っている人は現実にいるのではないか?~
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11452770805.html