「ホンマでっか!?TV」 ブロークンウィンドウズ理論 broken windows theory | テレビ番組 時事ネタなど書いていきます。はい。

「ホンマでっか!?TV」 ブロークンウィンドウズ理論 broken windows theory

心理学の植木先生から「ブロークンウィンドウ理論」のお話が出ましたので、
そんなお話を。

学校では特に顕著なんですねえ。
尾木先生が仰っていましたけれど、
校舎などの何かしらが破損したまま放置していると、
学校が荒れる傾向が強いんだそうです。

ブロークンウィンドウ(ズ)理論、割れ窓理論なんていいますけれど、
これは環境犯罪学の言葉。
これが有名になったのは、
ルドルフ・ジュリアーニニューヨーク市元市長からだと思います。



彼で有名なのは、2001年の9.11テロ後の優れた危機管理でしょうけれど、
こちらはそれよりもずっと前のお話になります。

1993年、彼が市長選で掲げていた公約の一つは、
ニューヨークを

家族連れにも安心な街にする

ことでした。
当選後、それは実施されることになります。
マフィアのような大きな組織のトップへの取り締まり強化のようなものに加えて、
このブロークンウィンドウ理論を用いての対策に顕れました。


「危険な街」、そう呼ばれていたのがニューヨークでした。
1970年以後、犯罪が急増し、
1990年の1年間、ニューヨーク市警管内での殺人事件は2200件以上、
ここ数年の日本全国での年間の殺人事件の認知件数が1100件内外ですので、
これがいかに多いかがご理解いただけると思います。

昔の米映画、ドラマではこういった風景もおなじみだったように思います。

ブロークンウィンドウ理論

ブロークンウィンドウ理論

もちろん、車両の外側も。

ブロークンウィンドウ理論

駅のホームも。

ブロークンウィンドウ理論

こういった地下鉄では凶悪犯罪が多発していました。
身の危険を感じながら乗らねばならない地下鉄では、
その利用者も過去最低となります。
1984年、刑事司法学者のジョージ・ケリング教授は
地下鉄における犯罪対策として、まずアドバイスしたのは、

落書きを消す

でした。
1500万ドルを投じ始めた地下鉄の治安回復プロジェクトで
まず行ったのが落書きを消す事だったのです。

地下鉄職員たちは猛反発します。
なぜ、落書きなんだ、犯罪の取り締まり強化が先だろうという訳です。
しかし、当時の局長はこれを断行、
6000もの車両の落書き消しが始まりました。

この途方もない作業を終えたのは1989年、
5年もかかっています。
その頃、少しずつ凶悪犯罪が減少していたんです。

全ての落書きを消し終えると、
次にケリング教授が提出した方策は、

軽犯罪の取り締まりを強化する

でした。
凶悪犯罪ではありません。
落書き、車内での喫煙、無賃乗車などなど。
これらの比較的軽微な犯罪を取り締まることで、
さらに凶悪犯罪はその数を減らしていきます。

こういった地道な努力、それも落書き消しと、
軽犯罪の取り締まり強化という凶悪犯罪そのものではない
対策で地下鉄の治安は回復していくこととなります。

この成果に、市長選で当選、就任したジュリアー二は
ニューヨーク市全体にこれを適用することを決意します。
市街でも落書きを消し、軽犯罪を取り締まる、
それを強化することで、
就任から5年間、犯罪の認知件数は殺人が67%、
強盗が54%、婦女暴行が27.4%減少させることに成功しています。

ニューヨークの街の治安も回復していきました。


ケリング教授が地下鉄の治安回復の方策として、
落書き消しから始めた根拠は、
1969年に心理学者フィリップ・ジンバルドー教授が考案した

ブロークン・ウィンドウ理論

にあります。
フィリップ・ジンバルドー教授は1971年の「スタンフォード監獄実験」で
有名な心理学者で、
この件についてはまた述べることもあろうかと思いますが、
それはそれで非常に面白い実験ですので、
興味のある方は調べてみて下さい。
このあたりの映画でも描かれています。



昨今の松本元大臣にも当てはまろうかと思いますよ。


話を元に戻しまして、ブロークンウィンドウ理論。


1969年、ジンバルドー教授はこのような実験を行いました。
まず住宅街に乗用車を放置します。
そして、ナンバープレートを取り外します。
次にボンネットを開けたままにします。
ここまでには何も起こりませんでしたが、
フロントガラスを壊してみると、
クルマの多くの部品が盗まれ始め、
全てのガラスは割られ、ついには完全に破壊されるまでに至りました。
このような実験の結果から教授は

人間は匿名性が保証され、自己への責任が分散されている状況下では
自己規制意識が低下し、没個性化が生じる。
その結果、情緒的・衝動的・非合理的行動が現われ、
また周囲の人の行動に感染しやすくなる。


という結論に至ります。
そして、ジンバルドー教授のこの実験を踏まえ、
ケリング教授が考案したのが

1.建物の窓が壊れている場合、
そこに誰も注意を払っていないと人は考えるようになる

2.ゴミの投棄、落書きなどの軽犯罪が起きるようになる

3.住民のモラル低下、地域活動への協力が失われていき、
さらに環境の悪化を招く

4.凶悪犯罪を含めた犯罪が多発する


という理論、ブロークンウィンドウ理論となります。


これを逆に考えることが、
治安回復の手立てとなります。

軽微な犯罪も見逃さないような姿勢をアピールし、
それが犯罪を犯そうとしているような人を遠ざけ、
凶悪犯罪が減少するということに。

日本の例では、ディズニーランド及びシーでは、
施設、設備の細かな傷を放置せず、
塗装し直すなどして補修を惜しまずにすることにより、
出来る限り破損箇所を客に見せないようにし、
結果、従業員と客のマナー向上に成功しています。

また、2001年、札幌中央署はすすきの環境浄化総合対策として、
駐車違反を徹底的に取り締まる事で、
路上駐車が対策前に比べて3分の1以下に減少、
さらに軽微な犯罪の取り締まり、
ボランティアの協力を得てパトロールの強化により、
犯罪発生件数が15%減少させることに成功したそうです。

平成14年度版警察白書にはこのように書かれているとか。

犯罪に強い社会を構築するためには、これまで取締りの対象外であった秩序違反行為を規制することにより犯罪の増勢に歯止めを掛けることも重要な対策の一つであると認められる


久しぶりに「ブロークンウィンドウ理論」を聞き、
思い出しましたので、記事にしてみました。
最初に聞いたのはこのブログで度々出てきている
「特命リサーチ200X」ですね。
調べてみますと、2003年の放送でした。

ケリング教授によりますと、
地域住民による地域の美化、
そしてモラルの維持への努力も欠かせないとか。


なお、ニューヨークの治安回復が
この理論の実践によるものではないという反論もあり、
ご興味がございましたら、以下を参考になさってみて下さい。




この本は、最近も大相撲の千秋楽の勝敗の確率で話題になりました。

・8勝6敗の力士に対する勝率
           79.6%
・9勝5敗の力士に対する勝率
           73.4%


大相撲 八百長… 警察は復元メールを文科省に届けてしまいましたか…
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-10789531177.html

で少し触れています。