降臨-7- | 妄想★village跡地

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「リク魔人」の妄想宝物庫 』のseiさんよりお預かりした、お題です。

長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません…。

魔人さんの書かれた一話の続きを、書いて行きたいと思います~


この回からは『蓮キョ』以外の要素が含まれます。
苦手な方は、ご注意ください

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ひんやりと冷たい空気が、キョーコの体を切り裂いて行く。

夜遅い時間、ひたすら走って。

走って。

走って。

だるま屋を目指す。


「…また怒られちゃうかな…。…もう、何も言われないか…」


潜在能力の限りを尽くして、たどり着いただるま屋。

暖簾も仕舞われて、明かりの落ちたそこに滑り込んだところで力尽きてしまった。


「…つぎのこい、見つけるんだもの…」


人気のない店内にしゃがみ込んで、膝を抱えた。

肌に纏わりつく蓮の気配。

それを振り切って、頬に残っていた涙の痕を手の甲で拭う。


「ぷれぜんと、かいにいかなきゃ…」


崩れる膝をなんとか持ち上げて、自室へつながる階段へ向かう。

よろめきながらたどり着いた其処は、小さな尚の写真と大きな蓮の写真が貼ってある。

ライバルと認めた男と、目標と決めた男。

初心を忘れないようにと、今でも貼ってあるのだ。


「はがさなきゃ…」


尚の写真はともかく、蓮の写真は剥さなければと思うが…。

中々出来ない。

未練でしかないのだけれど…。


膝立ちになり蓮と向き合って、画鋲に手をかけて…。


「っぅ…ぅ…」


引っかかっていただけの指は、するりと床に落ちた。

落ちたのは手だけではなく、涙も絨毯に沁みこんだ。

無理やり恋に落ちて、相手を利用してまで蓮の傍に居たいと思う自分が…。


惨めで、悲しい。


「ごめんなさい…」


静かに謝ったのは、蓮にか相手にか。

キョーコにはそれもわからなかった。







男性に人気のブランドショップで購入した、ネクタイ。

薄い水色に濃い紺色のストライプが入った、清潔感があって爽やかな雰囲気が相手に似合うと思ったのだ。

綺麗にラッピングしてもらったそれと、手作りしたロールケーキを手に誕生会の会場へ向かう。

今をときめくその人の誕生会には、様々な人が訪れていた。

今を時めく歌手。

著名な脚本家。

高名な俳優。

眩しく輝く人が、そこに集っていた。


「京子さん!!」


少し遅れてきた京子を見つけて、主賓である彼はわざわざ駆け寄ってきてくれた。


「遅くなってすみませんでした。お誕生日、おめでとうございます。これ…、」


持って来たプレゼントと、ロールケーキを手渡す。

煌びやかな人々が持って来たそれに比べたら、見劣りするそれ。

けれど彼は喜んで受け取ってくれた。


「嬉しいよ!! 来てくれないかと思って心配しちゃったよ。来てくれて、本当にありがとう!!」


受け取ったプレゼントをその場で開けると、ぱぁっと顔を輝かせた。

剥き出しになったネクタイを自分の喉に宛がい、また弾ける様な笑顔をキョーコにくれた。


「似合うかな?」


キョーコの見立てた通り、良く似合った。

蓮が深い夜の男だとしたら、彼は深い秋の似合う男だ。

淡く綺麗な色は、想像以上に良く似合った。


「とっても、素敵です」


贈ったキョーコまで嬉しくなって、顔が綻んだ。


「じゃぁ、今日はこれにしよう」


そういうと、今していたネクタイを取り、キョーコのプレゼントを首に巻きつけてゆく。

器用に動く指と腕。

淡いピンク色のシャツの上に、重なる『首輪』


(…そっか…。こういう、事なのね…)


蓮の言っていた意味が、キョーコの中で明確に形を取った。

喉元で揺れるネクタイ。

あまりにも目立つ、『所有』の印だ。


気にする男と気にしない男がいる、と蓮は言っていた。

彼は、気にする男だったらしい。


「一緒に乾杯してくれる?」


ネクタイを揺らしながら、キョーコの肩を抱き料理の置いてある方へ連れて行ってくれた。

失礼でない程度に、力強くエスコートされる。

手渡されたグラスには、綺麗な赤い色の液体。


「ほんとはワインで乾杯したところだけど…。未成年だからね。グレープジュースで我慢しよっか」


キョーコのグラスと彼のグラスは、同じ色。

甘くグラスを触れ合せて、祝いの言葉を改めて伝えて。

一気に飲み干す。

深い葡萄の味。


「美味しい…」


思わず零れたその言葉に、向かいにある彼の顔もほころんだ。


「ここのワインも、美味しいんだよ。来年、一緒に飲みたいな」


さり気無いその言葉の裏側にあることに気付かないほど、子供でもなかった。


「…私も…です」


彼はいい人。

優しいし、気遣いも上手だ。


(きっと、上手くいくわ…)


会話も弾んで、頂く料理もおいしくて。

初めて会う人との交流も、楽しくて。

『蓮の傍ら』から初めて飛び出したキョーコは、誰の目をも引き付ける程輝いていた。


「…今度、美味しい日本食食べに行かない?」


「いいですね」


「安いけど、美味しい所知ってるんだ」


「ぜひ、ご一緒させてください」


この時の約束が叶ったとき、週刊誌の紙面を飾り『熱愛報道』に発展するのだけれど。

今はまだ、キョーコの周りは静かだった。




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