降臨-6- | 妄想★village跡地

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「リク魔人」の妄想宝物庫 』のseiさんよりお預かりした、お題です。

長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません…。

魔人さんの書かれた一話の続きを、書いて行きたいと思います~


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キョーコの発した一言によって、すぅっと室内の空気が冷えた。

それと同じくしてキョーコの体も、凍りついた。



「『首輪』をかけたいくらい、仲がいい相手なんだ?」



既製品を贈ると、彼女が言ったときとても嬉しかった。

手作りの品を贈られた自分とは、立つ位置が違うと優越感を擽られたから。

けれど、それも束の間。

キョーコが発した一言で、全てが打ち砕かれた。



「……………」



蓮は冷たく滾る心を指先に乗せて、紙面を見つめたままのキョーコにそれを絡めた。

するすると逃げて回る髪に、指先を絡めつんっと引っ張る。



「そんなに、仲のいい、相手なんだ?」



言葉を区切り、髪を引っ張る。

それでも視線を上げないキョーコに、いら立ちが募る。



「………そう、なれたらいいなって…。思ってる、相手です」



指先ではなく、手のひらを髪に差し込んだ時、絞り出すような声でキョーコが言った。



「な、に…?」



耳には入ってきたが、理解できなかった。

間の抜けた声が、蓮から漏れる。

キョーコはそれをどう取ったのか。

蓮の手から距離を取る様に、頭を引いた。



「そう言う、お話しは頂いてるんです。いい人だし、優しい人だし、好き嫌いしないし、誠実です」



まるで自分に言い聞かせる様な、言葉の羅列。

けれど、頭の煮えている蓮は気づかない。

外された手を、再び伸ばすがキョーコに届くことはなかった。

キョーコの唇から零れると息が、宙を掻く指先を擽る。

吐息も温もりすらも感じられるのに、触れることが出来ない。



「…私に触れていいのは、私を好きになってくれる人だけ。敦賀さんは、違うでしょう?」



そろっと伏せられていた瞳が、紙面から剥がれ蓮に向けられた。

大きな瞳は、複雑な色に潤んでいる。



「そ「『忘れないで、常にともにある』印としてつけたマークは、消えてしまって…。もう意味をなさないでしょう? だから、私は私を好きになってくれる人を、探してるんです」



潤みながらも、真っ直ぐに射抜いてくるキョーコの瞳。

涙の幕の奥に、強く揺らめく炎が見え隠れする。



「どう、して…」



射抜かれた蓮は、瞬きする事すらできない。

呪縛に掛かったように、半端に腕を伸ばした状態でメデューサに睨まれた人間のように、固まってしまっている。



「安心してください。『お付き合い』する前には、ちゃんと紹介します。そうしたら、『査定』してくださるんですよね?」



ふわっとほほ笑んだ彼女の眦に、涙が一筋伝った。

その一言を聞いて、蓮は自分の失態を悟る。

言いわけの言葉を探す間に、キョーコの綴る音は益々悲しいものになってゆく。



「敦賀さんに『宛がって』貰わなくても、ちゃんと…、恋人位探します。探せます。紹介はしますから、安心してください。この人と上手くいくかはわかりませんけど…。私みたいな人間を、『好き』って言ってくれてるんです。凄いですよね」



どんどん重なる、悲しい音を聞いて居られなくて。

蓮はソファから腰を浮かせて、キョーコを抱きしめようとするがまたするりと逃げられる。



「私を好きになってくれない人には、触って欲しくありません!!」



叩きつけらた、言葉は蓮を強く打った。

また半端な体制で固まった蓮に、キョーコは涙の筋が残った顔で笑うと荷物をまとめ始めた・



「今日はありがとうございました。『先輩』を頼ってばっかりじゃだめですよね。こんな『後輩』じゃ、嫌われて当然ですよね。でも、助かりました。アドバイスまで…。参考にさせてもらいますね」



数種類の雑誌を選び取り、鞄にしまうと丁寧にお辞儀をした。



「最上さん!!」



「また、『結果』が出たら、ご報告しますので」



ぺこりと下げられた頭。

鮮やかに身を翻したキョーコに、蓮に出来ることはただ見送ることだけだった。



がちりとなった玄関が、キョーコが去って行ったことを伝えてくる。

その音が合図だったかのように、蓮は浮いていた腰をソファに落とした。



「くっそ・・・・!!」



零れるのはそんな罵倒の言葉。

少し前の自分に投げつけてやりたい、言葉だ。



「こんなことになるなんて…」



想像もしていなかった。


あの時の蓮は、キョーコに引かれてゆく自分を止めるのに必死で…。

少しだけ距離を置きたくて、発した言葉。

それがあんな風に彼女を歪めて、泣かせてしまう事になるなんて思いもしなかった。


頭を抱え込み、苦悩に身を委ねる。



「これじゃ…、不破と一緒じゃないか…」



自分のした事は、軽蔑する不和がしたことと遜色がない。

良い様に振り回して、傷つけた。

そして、あの男と同じように…。



「あの子に囚われてるのに…」



抱えた手で髪をぐしゃぐしゃにかき乱す。

混乱と不安と、後悔。



「誤解を…、解かなきゃ…」



告白をする前に。

傍に居るために。


まず一番先にしなければならないことは、それだった。



言葉を重ねて。

誠実に謝って。



そうすれば、また何時もの『先輩・後輩』には戻れると思っていた。

スタート地点に戻って、『恋人』になってもらうために心を砕けばいいと。



けれど、羽化したキョーコの周りには、蓮の想像以上に華やかになっていて…。

そんな簡単な事すら叶わないと、思い知ることになるのだ。



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次からは、蓮キョ以外の要素が加わります。

苦手な方は、ご注意くださいませね~



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