降臨-8- | 妄想★village跡地

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「リク魔人」の妄想宝物庫 』のseiさんよりお預かりした、お題です。

長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません…。

魔人さんの書かれた一話の続きを、書いて行きたいと思います~


この回からは『蓮キョ』以外の要素が含まれます。
苦手な方は、ご注意ください

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「ここがこうなって…、そうそう!!」


「京子さん、教え方も上手ね!!」


「ここはどうするの?」


ドラマの撮影にも使われる、レンタルキッチン。

そこを借りて、ホームパーティの準備に勤しんでいた。

新しく知り合った人と、モー子と千織。

料理を持ち寄るではなく、キョーコに教えてもらいながらの手作り。

ワイワイと賑やかに料理作りに勤しむ。


(こんなに楽しいの、久しぶりかも…)


学生時代あまり友人に恵まれなかったキョーコ。

同世代の女性に囲まれて、賑々しく過ごす時間は新鮮だった。

どんどん出来上がってゆくパーティ料理。

キョーコも腕を振るい、集まった人も腕を振るって。

見る見る間に大きなテーブルの上は、料理で埋め尽くされた。


「じゃぁ、乾杯!!」


高所にあるこの部屋からは、綺麗な夜景が見えた。

闇の帳が降りて、人工的な星がきらめき始めた時ホームパーティは始まった。


「あんたホント器用ね」


「京子さんのお料理、美味しい」


仲の良いモー子と千織が、キョーコの傍に来てその腕をほめた。


「えへへ…」


手放しの褒められて、キョーコの顔がほわっと赤くなる。

暫し会話もなく、舌鼓を打ち振る舞われた飲み物を味わう。


「っていうか…、あんた敦賀さんとどうなってるの?」


「!?」


周りの他愛もない会話。

それらに付き合い、にこやかに会話を続けていた時。

モー子が爆弾を放り込んだ。

タイミング悪く、口に食べ物を放り込んだばかりだったキョーコは、驚きのあまりそれを吐き出してしまう所だった。


「ぐふっ!! ごほ!!」


咽るキョーコの背中をさすりながら、千織は奏江を責めた。


「もう少しタイミング選ばないと。京子さん、びっくりしてるじゃない」


「不意打ちの方が、素直な反応見れるでしょ」


「そうかもしれないけど…」


苦しむキョーコから視線を外さず、二人は咳が収まるのを待った。


「で、どうなの? いい加減うっとおしいの」


「ごふ…っ…。ごめん、なさい…」


何とか呼吸を落ち着けて、奏江に謝る。


「謝罪はいらないわ。なんで、連絡を取らないの? 心配してたわよ?」


グラスの中に満ちている液体を、ゆらゆらと揺らす奏江。


「…………まだ、取れないの…」


蓮に『報告』出来る様な、結果を出せていない。

蓮への未練も、深く根付いている。

それらが昇華できるまで、キョーコは蓮に顔を合わせることが出来ない。


「なんで?」


「それは…」


言い逃れを許さない奏江の視線に飲まれ、キョーコは洗いざらい話してしまった。

蓮に言われたこと。

キョーコの決意。

蓮への未練を断ち切らねばならないこと。


ぽつぽつと言葉を紡ぐキョーコ。

その言葉が進むにつれて、奏江の顔も千織の顔も深く険しい表情になってゆく。


「…ばっかばかしい…」


「何ていうか…。痴話げんかここに極まりって感じですね」


全てを話し終わった時、二人が落とした言葉はこれだった。

深く刻まれた眉間の皺が、『馬鹿馬鹿しい』と物語っている。


「そんなこと!!」


「もし、あんたの仮説通り『疎ましく思ってる』んなら、会うたびにあんたの所在を聞いて来たりしないでしょ?」


「ですよね。私も局で会うたび、必ず京子さんの事聞かれますよ。元気なのか? って」


「迷惑だったら、逃げ回ってるあんたを追いかけたりしないわ。気にもかけないでしょうね。でも、敦賀さんは違う」


「京子さんの事、必死に追いかけてますよね」


その様子を思い出したのか、奏江も千織も何とも言えない表情になった。

忙しい撮影の隙間を縫って、逃げ回っているキョーコの気配を感じ取るため、二人を探し回るその姿がキョーコにも想像することが出来た。


(…もう…)


何とも言えなくて、伸びかけの髪で顔を隠す様に俯く。

それに追い打ちをかけるのは、付き合いの長い奏江。


「仮によ。『恋人』が出来たとして。あんたちゃんとお付き合いできるの?」


質問の前提に、『蓮が好き』という事があったが事実なので、そこは反論しないでおく。


「…出来ると思うわ…。女優だもの」


「それって、相手に失礼じゃない?」


「そうですよ。それに、お芝居ならすぐ終わるけど、現実はずっと続くんですよ?」


親友の忠告に、キョーコは唇の内側を噛んだ。

強くきゅっと噛み締めて。

毅然と顔を上げる。


「頑張るもの」


「…その前提が間違ってるのよ。あんたって子は…」


「まぁまぁ。上手くいくかもしれませんよ? 一生自分を騙すことが出来れば出すけど」


呆れる奏江と、どこか楽しそうな千織。

その二人に挟まれながら、キョーコは少し離れたところにいる彼に視線を送った。


(大丈夫だもの…)


言い聞かせてること自体が、すでに間違っているのだが…。

キョーコは気づくことなく、彼を見つめ続ける。

その視線に気づいたのか、彼もこちらへ視線を向けた。

送られてきた笑顔。

少し強張った笑顔を、キョーコも返す。


(明後日には…、お食事かぁ…)


ほんの少し。

ほんのちょっとだけ、憂鬱なのは気のせいだ。


(うん、気の所為なんだから)


キョーコは再び、唇の内側を噛み締めた。



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