地権者が100万円で買ったグリーンサンドは、双方に営利活動として合理的額なのだろうか? 黒木睦子 | がんばらない、でも諦めない

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主にエネルギー、廃棄物問題について書いてます。
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先日書いた「100万円の費用でグリーンサンドを使ってどれだけ土地を造成できるか計算してみた」の続きです。

違う角度から試算してみます。

グーグルマップで造成地の概略寸法を出してみます。

日向造成地航空写真

上のマップの一番下にスケールを表示してます。造成地の奥行きは100mはありそうです。谷間なので、下の図のような形で試算してみます。

造成地概略図
この土地の造成に使ったグリーンサンドの体積を計算します。
右面を下にしてみると、底面が三角形で奥行きが高さの三角錐になります。
三角形の面積に奥行きを掛けて3で割ると体積になります。
底面積は (30m×15m)÷2=225m2
体積は 225m2×100m÷3=7,500m3
これは一カ所での試算です。今回は3ヶ所あるので3倍になります。

1.地権者が買ったグリーンサンドの単価は?
100万円で購入したと言うことですので、単価は
1,000,000円÷7,500m3 = 133円/m3

2.宮崎県土整備部技術企画課のグリーンサンド(フェロニッケル水砕スラグ)単価との比較
宮崎県土整備部技術企画課のホームページに、宮崎県県土整備部が発注する土木工事の積算に用いる材料単価のうち、宮崎県県土整備部が独自の調査に基づき定めた材料単価があります。
土地の造成が行われたのは平成24年ですが、過去に遡って確認できるのは平成26年4月です。この時の単価は55ページに2,100円/m3と書かれています。

私が試算した地権者の購入単価は133円/m3です。宮崎県の材料単価2,100円に比べて安すぎます。私は衛星写真で概略計算するので、グレーンサンド単価が安くなりすぎないように、グリーンサンド使用量が少なくなるように試算しました。

super-kさんがブログでも今回の工事に使われたグリーンサンド単価を試算されてます。「日向市の埋立に使われたグリーンサンドの価格と再生砂の基準」グリーンサンド単価を33円/m3と試算されてます。

宮崎県の工事には税金が使われます。super-kさんも指摘されていますが、宮崎県の材料単価2,100円/m3に問題はないのでしょうか。もし高すぎるなら大問題になると思います。

4.廃棄物に該当するかどうかの検証
廃棄物に該当するかしないかは「環廃産第1303299号行政処分の指針について」で判断されます。この文書には以下のようにあります。

判断基準
 ア、物の性状
 イ、排出の状況
 ウ、通常の取り扱い形態
 エ、取引価値の有無
 オ、占有者の意思
上記アからオまでの各種判断要素の基準により総合的に判断されたいこと。

2015年4月10日、木星通信さんから新たな情報が入りました。
「グリーンサンドは地権者がメーカーから買い、その運賃、施工費をメーカーが運搬造成業者に支払った。逆有償ではない。これはメーカー、運搬造成業者、地権者に確認を取った」ということです。

私は自家発電や焼却炉プラントの建設や修理工事を計画して工事仕様書を作成、見積もりを取って工事監督をしてました。経験年数は20年位です。発注は社内の発注専門部署が適正価格か査定して発注します。担当工事の件数は数えたことはありませんが、小さい工事も入れると数千件になるでしょう。資材費を工事に含めると、資材費でボッタクられることがあるので、資材は自社で手配して施工業者に支給、施工工事だけ施工業者に発注し施工費を支払うことがあります。今回の場合、運賃施工費をメーカーが支払ったということです。私には、このような工事を担当した経験はありません。

運賃と施工費はメーカーの物、グリーンサンドは地権者の物ということなら、造成した土地は誰の物になるのでしょうか。一つの土地に混ざった状態なので明確に線引きするのは難しそうです。地権者とメーカーの共同所有なのでしょうか。そうなら、土地登記簿はどうなってるでしょうか。何時変更されたでしょうか。土地登記簿は比較的簡単に確認できます。メーカーは土地固定資産税を納めているでしょうか。運賃と施工費はメーカーから地権者にプレゼントしたと考えていいのでしょうか?

土地評価額からグリーンサンド評価額を差し引いて、運賃と施工費を試算してみます。
国税庁のホームページに財産評価基準があります。宮崎県宅地造成費の金額表を見ると、土盛費3,700円/m3とあります。
山土の単価はいくらなのでしょうか。九州農政局平成24年度九州農政局工事資材価格表(土木資材)237ページ右側表の下から4番目に1,300円/m3とあります。
運賃、施工費が少なめになるように、単価が高いグリーンサンド(フェロニッケル水砕スラグ)価格1m3あたり2,100円を使います。

3,700円/m3 - 2,100円/m3 = 1,600円/m3
これにグリーンサンド使用量を掛けて
1,600円/m3 × 7,500m3 = 12,000,000円

施工費はざっと1200万円になります。

エ、取引価格の有無の文章を引用します
占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。実際の判断に当たっては、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと、当該譲渡価格が競合する製品や運送費の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であること、当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること等の確認が必要であること。

赤字で強調しましたが、この文言のは「等」という文字が入っています。運送費に限らないという意味ですよね。さきほど試算した運賃施工費1200万円は、どう考えたらいいのでしょうか。プレゼントなら逆有償にならないのでしょうか?

他の項目も考えて行きます。

ア、物の性状
Kさんの一つの検査で有害物質が検出されて、他の検査で有害物質が出ないことが争点になってますが、総合的な判断ですので、廃棄物に該当するかどうかの決め手にはなりません。例えば、ゴキブリ等の殺虫剤は有害物質ですが、ドラッグストア等で販売されており商品です。一方、食事には普通有害物質はありませんが、作りすぎ食べきれなかった残飯はゴミになります。無害な物でもゴミになる場合があります。

イ、排出の状況 及び ウ、通常の取り扱い形態
土質安定処理材としてのフェロニッケルスラグ微粉末の適用に関する研究」という論文があります。この論文は2014年3月25日付けで公開になっており、Kさんが問題にしている土地の造成後に発表されたもので、審査付き博士論文のようです。リンク先の一番上のファイルです。この論文の4ページに以下の記述があります。

「例えばFNSは土木用材料等に再生利用されているが,それらはJIS A 5011-2 の粒度範囲のものに限られており,JIS規格の最小区分である5-0.3mmの粒度範囲より微粉末のFNSは,一部でブラスト材として再生利用されるものの,多くの場合,使い道がなくストックされているのが現状である」
35ページには「規格化されずストックされているFNSなどの非鉄金属スラグの微粉末は,現在,利用価値が少ない材料であることからほとんど流通されておらず価格が設定されていない.すなわちこれらの材料は,輸送コストを計上する必要はあるが無料での取引が可能な材料である」

この論文はFNS微粉末を有効に使うための方法を考えた論文です。この論文を否定するなら、論文を書かれた方や審査した方が間違っていたという話になり、大問題になると思います。

下の衛星写真上側に積まれた物は何でしょう。膨大な量があるようです。論文にあるようにストックされているものではないでしょうか?

日向製錬所航空写真

オ、占有者の意思
ゴミが積まれたゴミ屋敷がテレビ等で報道されることがあります。常識的に考えるとゴミなのですが、行政はなかなか片付けません。ゴミ屋敷の人が「これは自分に必要な物と主張し、自分の土地に積んでいる」からです。今回の土地造成工事に使ったグリーンサンドはどうなのでしょう?地権者が購入してますので、メーカーの所有ではありません。

今回の取引は、私には訳がわかりません。なぜ、このようなややこしい取引をしたのでしょう。みなさん、ご自分で考えて頂けたらと思います。

最後に、運搬造成業者・メーカー・Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ工区地権者は、今回の土地造成に使用したグリーンサンドがどうなのか、設計図面・品質管理記録・フェロニッケルスラグ発生量・グリーンサンド生産量と販売実績・土地造成材としてのグリーンサンド取引市場と取引価格相場・占有者の意思について、第三者の資料(業界団体の資料は内部資料みたいなものなので役に立たないと思います)を使って、裁判所でKさんと裁判官が納得できるように説明して頂きたいと思います。


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この色の部分は2015年4月11日12:00加筆