第38回俳優祭・夜の部 その②@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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→その①から続き。

「月光姫恋暫」かぐやひめ こいのしばらく

 

 最後は俳優祭ならではの趣向を凝らした傑作芝居。筋書の口上を見たら、以前の白雪姫、シンデレラと合わせて三姫とし、今回はかぐや姫の登場だと。単に「かぐや姫」のパロディーかと思ったら、そこには「トゥーランドット」がベースにあって、「暫」もチラリ。かなりきちんとした物語になっていました。ギャグの部分を作り直して、本公演でやってもいいかもと思ってしまったほど。

 

 (以下、いわゆるネタバレしてます)幕が上がると、遠くに地球が浮かんで見える月宮殿。仁左さんがキングで、玉さんがクイーン(2人の娘がかぐや姫という設定)。この2人の並びだけで、はや眼福。玉さんは美の極致の姿ですが、仁左さんは黒々としたあごひげを蓄えていて、美貌が半分かくれてしまっていました。で、このシーンきり出ないのでした。かぐや姫に仕える3人の局(亀蔵、猿弥、弘太郎)がインパクトありすぎ。女だけど(「暫」に出てくる)腹出しの衣装で、しかも首がない。アゴからすぐ胸になっていて、こ、こわい。

 

 舞台が地球に移り、海老さんと菊之助の媼&翁夫婦。手をつないだりしてキャッキャしている風景にキュンとなりました。菊之助おジジが「子を授かる夢を見た」と言うと、海老さんおババが「えっ、この歳で!?」と困ったような嬉しいような(笑)。菊ちゃんが「そうじゃない」と訂正し、さっさと退場。あたふた追いかける海老さん。菊ちゃんのおジジすがたがほんっとにかわいい。海老さんのおババは、顔だけいじわるばあさん風。

 そこに、がぶ(獅童)とめい(松也)が出てきて、客席大喜びです。月からやって来たた猿之助のかぐや姫は、いかにもわがままそうで男勝り、外股気味に歩く姿は女じゃなかった。こういう作りは猿之助うまい。で、強引に海老菊老夫婦の養子になっちゃうの(自分で決めちゃう)。

 求婚者としてやってきた4人の王子(左團次、鴈治郎、市蔵、中車)は、いちおう王族の血を引くイケメンという設定なので、いきなり大爆笑。姫が課す3つの質問(○○区の××町にあるクリーニング店の名前は?とか、昨年の紅白の大トリの曲は?とか)に答えられない。鴈治郎は、仕事を息子に取られてと愚痴るし、市蔵の化粧がやばくなってる。

 左團次も(1たす1は?とか聞かれて)おバカな答え。3つ目の質問では、強烈な下ネタ回答で、果たしてNHK放送ではどうなるのでしょうか。で、4人とも首をはねられ、死に切れない左團次は頭にパンツをかぶって……。何かやらないと気が済まないのね。

 

 かぐや姫が海老菊の首まではねようとすると、そこに「しぃばぁらぁくぅ~!」と現れる勘九郎、かっこいー。このあと七之助の自害なども含め、シリアスな流れで泣かせます。ここ、良かったです。

 さて染さん、前半はおとなしかったけど、後半、悪党の正体を現してから弾けました。自分で糸抜いてぶっ返り、猿之助の妖術に操られて花道から戻される。それ3回やった。2回目は普通に歩いたりスケートしたり(だったかな?)。3回目は客席から「がんばれー」の掛け声。竹藪の中(隠し穴?)に消えるはずが、違うところにぶつかって跳ね返る。正しい隠し穴が自ら開いて場所を教えてあげて、2度目で成功とか。染さん、こういうコメディーうまいですねー。

 そして出ました、菊五郎の帝。烏帽子には宝塚ばりのド紫の羽飾り(やっぱりね)。床山さん、楽しかっただろうな。途中、自分の番なのにセリフを忘れたみたいで、梅玉とか、周りで微妙なリアクションがあって面白かったです。

 残念なのは、月に帰るかぐや姫が花道を去っていったこと。猿之助なんだからここは宙乗りで昇っていってほしかったです。

 今どきのギャグとして、恋ダンス六方、みぞみぞ、君の名はー!? チューチュートレイン……などがあったらしい。その辺の事情に詳しくなくて、後でお友達に教えてもらいました。

 

 最後に出演者が勢ぞろい(居ない人については、後でわかった)した時、藤十郎の隣に並ぶ仁左玉。着替えた着物はお揃いに見えました。このツーショット、貴重すぎます。本公演でこの並びを見られる時がくるのでしょうか。

 すべてが終わりロビーに出ると、巳之助、児太郎、尾上右近が並んで土下座していました。なにごと?と思ったら「筋書きが売れないと私たち帰れませんっ!」「買ってください、1000円出してくださいっ!」と、体張って売りさばいていました。巳之助、ますます好きになった。素の児太郎は爽やか系の青年だった。他所では米吉たちもやってたみたい。最後に若手花形のはじけっぷりを見られ、思いがけないプレゼントになりました。

 そして、ここまで素晴らしいものを作ってくださった、亀三郎はじめスタッフの方々に、本当に感謝します。ありがとうございました!