"The Long Goodbye" - Raymond Chandler | Down to the river......

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写真・音楽等の趣味や、日々の雑感、または個人的な備忘録……

【注意】結構長いので、時間がある時に読んで下さい<(_ _)>。


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歳のせいか、最近酒に弱くなりました。
一昨日の晩家で酒を飲んだのですが、いつの間にか眠っていて気が付いたら深夜過ぎ……。

急いで「ペタ返し」をして、台風が来るというのでお昼前まで「ちょい寝」(^^;。
無事午前中に「選挙の投票」を済ませたところ、雨が降って来ました。
雨を予想して車で行ったので、先日から気になっていた本を再度見に、最寄りの書店へ直行——。


Down to the river......-The Long Goodbye村上春樹」さんによる新訳「レイモンド・チャンドラー」著の『原題:The Long Goodbye(長いお別れ)』(1953年)の単行本を購入しました。

この本は、僕にとって「心の書」とでも言えるもので、特別な作品です(^^ゞ。

80年代前半僕も村上春樹さんと同じく、高校生の頃「清水俊二」さんによる旧訳版を読んで虜になりました(^O^)。

ちなみに、字幕翻訳家・通訳として有名な「戸田奈津子」女史は、清水さんの弟子にあたります。
どの作品か忘れましたが、清水俊二さん翻訳によるチャンドラー作品(文庫)の「あとがき」に、清水さんとの思い出を寄稿しています。


元々「字幕翻訳家」であったためか、清水俊二さんによる「旧訳版」(文庫)はドラマチックな(?)意訳で、現在でも名訳として知られています。新訳版が高くてお金が惜しい人にはお薦めです(^^;。

ファンの間の意見では、清水訳の方がより「センチメンタル」な意訳で、村上訳が出た現在でも評価が高いようです。
より映画のセリフ(字幕)に近い——と表現したらご理解しやすいかと思います('-^*)/。
とにかく「決めセリフ」のキレは、清水訳の方に軍配が挙がると思います。

「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ」(清水俊二訳)

「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」(村上春樹訳)


この有名な一文の原文が「To say goodbye is to die a little.」なので、村上訳の方が原文に忠実、というか正しいです(^▽^;)。

「名セリフ」といえば、チャンドラーの最後の長編となった『プレイバック』に出てくる次のものが、一般的には広く有名で、聞いたことがある人も多いでしょう。

「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」

原文は「If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.」。
名訳で知られる清水俊二訳では「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」なんですよね(^^ゞ。

実は広く知られる上記の訳は、日本のハードボイルド小説の先駆けとして活躍した「生島治郎」氏の、「タフじゃなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない」の訳が元になっています。

こちらの場合、清水訳の方が原文に忠実であり、どちらが良いかは読者の好みによる——という翻訳することのある種の難しさを象徴しています。


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翻訳といえば、今回の村上訳で個人的に気になっていたところがあります。

「ギムレットにはまだ早すぎるね」(I suppose it's a bit too early for a gimlet.)

この本の中では、このセリフも大変有名なんですが、「ギムレット」の作り方に関し、登場人物のテリー・レノックスがこう説明します。

ほんとのギムレットはジンとローズのライム・ジュースを半分ずつ、ほかには何も入れないんだ。マルティニなんかとてもかなわない。(清水俊二訳)

この「ローズの」という意味が最初分かりませんでした。

まあ、取り合えずジンとライム・ジュース(明治屋の「マイ・ライム」か何か)を近所の酒屋で買って来て、上記のレシピで作ってみた訳です。

甘すぎる……っていうか合成品の薬っぽい味がしてマズイ(笑)。

ライム・ジュースという名前でも、「シロップ」そのものですからね(^^;。

この「ローズの」というのが鍵だと思い、原文をあたると「Rose's」となっています。
直訳すると「バラの」となるが、「R」が大文字なので「Rose」は固有名詞だと推測できます。
でも結局そこまで。分からないまま「何か特別な」ライム・ジュースだと思って来ました。

しばらくすると、モノの本に、ギムレットは「フレッシュ」なライムを絞ったジュースで作るのが数段美味い、という記述を発見。
時は80年代。近くのスーパーなんかにライムなんて置いてありません……。

長くなるので話を端折りますが(笑)、それから10年以上経った頃です(^^;。

前職がバーテンダーだった知人から、ハワイ旅行のお土産を頂きました。


Down to the river......-Rose's Lime Juiceそれがこれ。「Rose's Lime Juice」——。

たぶん一緒にバーに行った時にでも、上記のレシピを話した(呟いた w)のでしょう。
良く覚えていたなぁ~、と思いましたが、たぶんギムレットを注文する客の多くが、僕のようにこの本の「ウンチク」を話すのでしょうね(笑)。

ある意味バーテンダーにとって「厄介な」カクテルなのかもしれません(^^;。
「やれやれ、またローズの話かよっ!」ってね(笑)。


早速この「ローズ」のライム・ジュースで作ってみました。
美味いです。ただ1対1の割合ではまだ甘すぎると思いますのでご注意下さい(笑)。

「シロップ」というより「ジュース」に近い味わいです。
なんでも元々は「保存」用に砂糖を入れるようになったのだそうです。
このローズのライム・ジュースも、開封して時間が経つと劣化(酸化?)して、色が濁って来ます(>_<)。

この「Rose's Lime Juice」は日本では店頭での入手が困難みたいなので、どこかのバーで置いてあるのを見つけたら、一度試してみて下さい。

ちなみに、「プリマス」のジンを使うのが(発案時の)「本来」のレシピみたいです(^^;。

で、肝心の村上訳の方は、「Rose's」を「ローズ社」と訳してあります。
流石外国生活の経験があるお酒が好きな村上さん——というか(^^;、長年の個人的な胸のつかえが下りました(笑)。


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いや~、予想以上に長くなってしまいましたが(^^;、この村上新訳版についてもう1つ。

巻末に村上春樹さんによる「詳細な解説」が載っています。
少々難しい内容ですが、ファンにはとても参考になるので、解説目当てに購入する価値はあります。
また、村上さんの小説しか読んだことのない人にとっては、彼の別の一面に驚くかもしれません……。

その中で目を引いたのは、この『The Long Goodbye』と『グレート・ギャッツビー (The Great Gatsby)』との類似点の指摘(比較)です。

『グレート・ギャッツビー』に関しては「以前のエントリー」でも述べました。
自分でも驚いたのですが、次のように書いています。

当時良く読んでいた、アメリカのハードボイルド小説と同じ様な語り口(テイスト)に惹き込まれ、原作本を読んだと記憶しています。
映画と同じ語り口、いやそれ以上の出来で感動しました。

当時の『グレート・ギャッツビー』に対する感動が蘇って来たのと同時に、「めぐり逢い」や「出会い」の不思議さを感じました。

つまり、『The Long Goodbye』を読んで感動した後に『グレート・ギャッツビー』に出会わなければ、それほど印象に残らなかったと思うからです。


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長くなった——そして疲れた w——ので次回に続くA=´、`=)ゞ。

ここまで読んでくれた皆さん、ありがとうございます<(_ _)>。